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信州リンゴとフィンランド

私たち夫婦は、長野市で生まれ育ちました。
私たちがフィンランドという国を、ごく自然に身近な土地として感じる理由に、故郷である長野市とフィンランドの風土や文化の共通点が多すぎることがあると思うんです。

まず、長野の県木は「白樺」です。県鳥は「雷鳥」です。名産品は「リンゴ」です。庭にはブルーベリーが普通に実を付けます。秋にはキノコ狩りで山に入ります。サウナのような湯治文化は古来から身近だし、工芸や民藝も昔から盛んだし、実家は豪雪地帯だし、湖が近いし、冬のソリ滑りが得意だし。もっと言うと、長野市の人たちは、どこかシャイで人との距離を取ることが好きです。あ!熊もたくさん出ます。
まだまだ共通点はたくさんあるのですが、上げたら切りがないので、このあたりで切り上げましょう。

ちなみにこの景色。どこだと思いますか?
実は故郷の風景です。フィンランドの景色と、どこか似ていますよね。

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そういえば、以前連載していたコラムでも、こんなお話を書いたことがありました。

故郷の長野市と同様に、フィンランドでも秋にはリンゴがドッサリ採れますよね。村のあちこちに自然と実を付けて、ご近所で分け合ったりして。フィンランドの給食やおやつに、リンゴはマストアイテムです。

そして、何より素敵だなあと思うことは「オメナピーラッカ」のおおらかな存在です。特別なレシピもなく、各家庭の自由なレシピでおおらかに焼く「リンゴのケーキ」。たくさん焼いて、ご近所に配ったり、会社でコーヒー休憩のお供にしたり。わざわざ買う必要のない、誰かがおうちで焼くケーキ。それが、オメナピーラッカです。気取らず、素朴で、身近な存在。

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実はマコさんの母親の実家は、リンゴ農家です。長野市の中でも標高の高い飯綱町で、長年美味しいリンゴを作っています。長野市のリンゴの出荷期は、秋から冬のみ。長野市では1年中八百屋さんにリンゴが並んでいるわけではありません。ところがどっこい、東京は1年中どこにでもリンゴが売られているので、その光景に戸惑うことしばしば。

つまり、長野市の人たちのリンゴへの意識は「旬」なのです。長野市の名産品である米や蕎麦には、「新米」や「新蕎麦」がありますが、リンゴには「新リンゴ」は存在しませんよね。通年食べられるものではないのがその所以。それだけ、上質で新鮮なリンゴを年に一度出荷していることになります。2019年の豪雨被害の時はその大切な収穫期と重なり、本当に大変な状況となりましたが、引き続き美味しいリンゴを作っていらっしゃる生産者の皆さんには、本当に頭が下がります。

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istutでは、その長野市の新鮮リンゴを使って、毎年秋から春先までの季節限定で「オメナピーラッカ」を作っています。もちろん、おおらかなケーキなので、三角だったり四角だったりカップケーキ型だったりと、姿形もとてもおおらかです。

ただ、おおらかすぎて、旬と質を大切にする信州リンゴたちから叱られないよう、一度シナモンとレモンでリンゴをコンポートしてからケーキにするという手間をかけて焼き上げています。また、バターを使わず植物性のオイルで軽い仕上がりにしています。丁寧だけどおおらか。シャイ同士の信州リンゴさんとフィンランドさんが、距離を縮めて静かにハグをしている感じ。それが、istutの「オメナピーラッカ」なのかもしれません。

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