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銀河鉄道に乗って

 短編集『銀河鉄道の夜』が可愛かったから、宮沢賢治を読んでみよう、と手に取った。賢治に触れるのはNHK「にほんごであそぼ」以来か、それとも『雨ニモマケズ』を暗記した時以来か。

 昇進して、仕事の引き継ぎと、夕方に集中するグローバルのミーティングに追われて、デートどころかヨガすら行けない毎日に挟まれた週末に、本は旅に連れていってくれる。それも宮沢賢治は、どこかの国や時代ではなくて、今ここにある生と死の世界の間の旅を教えてくれる。

 「宮沢賢治の世界とは、死に裏打ちされた生である」とは、うつくしく言い当てたものだ。

 死はすぐそこにある。そして、わたしたちは、後悔にまみれて、美しい死の世界に裏打ちされた毎日を生きている。ここまで書いて、死の世界が美しいのは想像しかできないからだと思う。イマジネーションの中の死の旅は、生そのものを、うつくしいと感じさせてくれる。目の前に広がる世界や現実を、ただ哀しいと眺めるのではなくて、うつくしく生きようと、そんな気にはさせてくれないか。

 世界はこれほどに憂尽くしくも、美しい。

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