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「情報共有のあり方」を考えたいなら

仕事上、いろいろな相談を受けることがあります。そのなかのひとつが、「情報共有のあり方」に関するものです。組織としての情報共有が進んでいないから、何とかしたいという話です。

今回は、そんな「情報共有のあり方」について、(権限がある側の視点から)ポイントを簡単に整理してみます。

1.大前提となる責任体制

私の場合、仕事柄、情報システム的な観点から「情報共有のあり方」について、相談されることがあります。つまり情報システムの仕組みのなかで、どのような情報を共有すべきであるかとか、アクセス制限をかける場合は、どのようなルールで、どのような保存場所で管理すべきかというようなことです。

もちろん、そういう技術的な問題を検討するのはよいと思います。情報システム的な観点からサポートできることは、少なくありません

しかし実際には、そうしたサポートをする手前の問題を解決する必要がある組織も、数多くあるように見受けられます。どうしてそうなってしまうかというと、そうした組織では、責任体制がはっきりしていないからです。

つまり各業務、各案件、各プロセスにおいて責任体制がはっきりしていないため、誰が責任者なのか分からないのです。誰が責任者か分からなければ、誰が情報を必要としているのか誰と情報共有すべきなのかがはっきりしないのは自明の理です。

責任者というのは、文字通り責任をとる人です。その責任者には、適切な判断を下すための情報が必要になることは言うまでもありません。

しかし、その責任の所在が曖昧になってしまうと、その情報が誰に共有されるべきかが分からなくなるのです。

2.責任者と担当者

続いて考えるべきは、責任者と担当者の違いに対する理解です。ここでは、責任者を組織長担当者をその組織に属する部下であると考えます。

その場合、責任者と担当者の関係は、責任者から、一部の責任を預けられているのが担当者ということになります。したがって、担当者自身にも、自由な裁量で進められる業務はあります。

しかし、担当者が、何でも好き勝手できるわけではありません

責任者が、担当者からの相談を受けなければいけない情報を共有されなければならない)のは、担当者が委ねられた責任範囲を超えた場合です。それは例えば、その組織全体のポリシーに関わることだったり、他部署との調整が必要なケースなどです。それらが絡む仕事については、担当者は責任者に相談しなければならず、その情報は責任者に共有され、責任者の判断を仰ぐ必要があります。

ところが、そういうことを理解していない責任者が多いのです。それを理解できていないため、ただ「情報共有が必要」と言うだけになります。

責任範囲を理解していない組織長(責任者)に対して、担当者の立場から考えた場合の対処法は、以下の記事にまとめた通りです。

組織長・責任者自身が、自分たちの責任範囲を見失うと「1」と同様、責任者と担当者との間に明確な境界線が引けなくなってしまいます。当然、責任者と担当者との間でも、何が共有すべき情報なのかについて、誰も分からないということになります。

結果、情報共有だけでなく、実際の業務上の責任という意味でも、数多くの問題が引き起こされることになるわけです。

3.問題の解決方法(担当者の教育)

問題の解決のためには、上記を踏まえて、まずは組織長(責任者)自らが、自分の責任範囲を明確に理解すべきであることはいうまでもありません。

そのうえで、問題を解決するためには、担当者にその責任範囲を理解させる必要があります。それが適切な情報共有に繋がるからです。

では、それをどうすればいいのか?というのが問題です。

「お前ら、俺にきちんと情報共有しろよ

当然、こんなことを言っているだけでは解決しません

そもそも、情報にはいろんな類のものがあるのです。日常的に業務を進めていれば、多種多様で大量の情報に溢れかえってしまいます。そんななか、「きちんと情報共有しろ」というだけで、適切な情報共有がされるなんてことがあるはずがありません

ポイントは、情報共有がされていなかったことによって、業務上、支障が出た場合、それをきちんと担当者に伝え、教えていくことです。

そういうときにこそ「組織長」、「責任者」としての権限や立場をもって、きちんと話をすることが重要です。

例えば、担当者が勝手に「組織全体のポリシーに関わること」について取引先と約束をしてしまったとか、他部署との調整が必要な事項であるにもかかわらず、組織長(責任者)に確認をとらず、勝手に他部署へ仕事を依頼してしまったであるとか、そういうことについて、都度、きちんと情報を共有しないことが問題であることを教え諭していくことが重要です。

共有されなかった「その情報」については、実際のケースで起きているわけですから、極めて具体的に説明することができます。漠然と「情報共有しろ!」なんて言う必要はありません

「あの仕事、私にその情報を共有していなかったけど、何か問題が発生した場合、あなたは責任とれるの?
「私にその情報を共有しないで進めたら、あとで上から異論が出た時全部やり直しになる可能性あるけど、大丈夫?その場合の時間ロスについては、自分で責任とれる?
「その仕事、業務上、あの部署との調整状況が分からないと、私は判断できないんだけど、あなたが勝手に調整してるの?なんで?聞いていないよ?あの部署からクレーム来たら、誰が謝るの?

情報共有がなされないことで、具体的な問題がありそうなものがある場合、常日頃から、こうした呼びかけをしていくことを通じて、どんな情報について共有をしていかないといけないのか、自ずと部署内に認識を浸透させていくことができるようになるでしょう。

情報共有のあり方」などというのは、ある種の組織文化にも近いものであって、それは一朝一夕でなるものではありません。ましてや、システムだけで片付くものではないというところがポイントです。

4.組織長(責任者)の注意点

上記1~3ができれば、「情報共有のあり方」という問題については、自ずとそのポリシーは確立されるでしょう。システムとしての仕組み作りも、比較的簡単に進めることができるようになります。

ただ問題は、1~3がすごく簡単なようで、意外と難しいとされていることです。

例えば、「2」に挙げたような「責任者と担当者」の関係性について、それを十分に分かっている担当者が、上長である組織長・責任者に判断を仰いだり、ヘルプを求めているにもかかわらず、それにまともに応えられない組織長・責任者が多いのです。

本来ならば、「組織のポリシー」の見直しや必要な「部署間調整」、あるいは「他組織長との交渉」など、組織長として適切な解決策を講じなければなりません。それにもかかわらず、毎回、担当者レベルでもできそうな「その場しのぎの対応」や、担当者からの報告をまともに取り合わず、担当者に責任を押し付けるというようなことが、結構、起こっているように見受けられます。

残念なことに、そうなってしまう原因は、キーマンである組織長・責任者自身が、自分の責任範囲を理解していないことにあります。これは大問題です。

こうなってしまうと、担当者側からすると「まともに責任も取らない組織長(責任者)に、わざわざ情報共有する必要ある?」ということになりかねません。

したがって、組織長・責任者の立場にある人は、担当者が持っている情報を「自分に共有せよ」などと、一方的に求めるよりも前に、まずは担当者から上がってくる情報に対して、どれだけ敏感に反応できているか、きちんと見つめ直してみることも大切です。これが抜けていたら、それこそ何も進みません。

ということで、組織内の「情報共有のあり方」を検討したいということであれば、そんなことにも注意を払いつつ、1~3を徹底することが重要だと思うであります。

以上、今回は、私の仕事上の備忘録的な記事になりました。

なお先日、こんな記事も書きました。

いろいろとズレてしまっている人も多いように感じていますが、このあたりの記事でピンときて、あらためて何かに気づかれる方がいらしたら、嬉しい限りです。


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