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トリチウムは汚染水?

福島原発の処理水の問題。希釈して海洋放出するという報道が出ました。問題は、トリチウムという放射性物資が放出されたら、海が汚染されてしまうというものです。これには中国や韓国が抗議の声を上げています。

中国メディアの新民晩報は、東京電力福島第一原発の汚染処理水問題について「全世界が怒っているのに、日本はそれでも核汚染水を太平洋に排出しようとしている」とする記事を掲載した。
韓国の英字紙コリア・タイムズが「海洋の生態環境を破壊する災害」と批判し、韓国政府も「処理方法は日本単独で決めるべきではなく、国際社会による十分な科学的検証を経なければならない」との認識を示したことを伝えている。

ところで、これは本当でしょうか。

経産省のウェブサイトには、福島原発とトリチウムに関する委員会の資料があります。まず最初に触れなければならないのは、中国メディアの「核汚染水」という言葉です。これは事実ではありません。上記、委員会の資料にもある通り、トリチウム自体は世界各国の原子力発電所で放出されているものであり、海洋放出はむしろ常識でもあるのです。

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そもそも、トリチウムとは自然界(大気中の水蒸気、雨水、海水、水道水)のなかにも存在するもので、希釈された低濃度の状態であれば健康影響の心配はないとされています。したがって、ここで議論すべきはトリチウムがどうかではなく、トリチウムの濃度がどうかということだけが問題になるのです。

報道によれば、「放出にあたってはトリチウムの濃度を国の基準の40分の1まで薄める」としており、「WHOが示す飲料水の基準のおよそ7分の1」だと言います。アメリカも「世界的な原子力安全基準に合致した手法を採用」と評価しています。日本の野党から「薄めることに何の意味があるのか」との批判もありますが、そのまんまです。薄めることにこそ意味があるわけです。

だからこそ、海洋の生態系への影響などは問題ではなく、「風評被害」が問題になるということなのです。しかし、日本のマスコミはこうしたことを報道しません。NHKでは、「“トリチウム含む水 海洋放出で風評被害”市民グループ訴え」という報道をしています。こんな報道をしているから、正確な情報が伝わらないし、さらに不安と風評が広まるばかりなのです。報道機関が果たすべきは、正しい科学的知見や情報です。それこそが風評被害を防ぐ方策でもあります(2021年4月13日、NHKはこのあたりの話を報道していました。もっともっとやるべきです)。

さらに悪質と思えるのは、立憲民主党・枝野氏の批判です。枝野氏は、海洋汚染や生態系への影響については触れません。トリチウム自体、問題ないことを知っているのではないでしょうか。だから「風評被害」や「漁業への被害」に絞って問題視するのだと思えてなりません。トリチウムの実態を知ってて煽っているとしたら最悪です。

マスコミも政治家も、あらゆるものを使えるネタとして使ってきます。私たちは、それらに振り回されないように注意しなければいけません。テレビで取り上げる問題に対して、いちいち「けしからん!」などと怒る前に、いろいろ調べてみるといいと思います。

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