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読書備忘録『聖なる怠け者の冒険』

転がらない石には苔がつく。
やはらかくなろう

小和田くん

森見登美彦の作品を読んだのは今回で2作目。
きっかけは四畳半神話大系のアニメの影響で原作を読んだのが高校生のころだったか。
その後社会人になってからブックオフの100円コーナーで本を買い漁るブームが起こり積ん読になっていた一冊が本作。

本作は休日は家で眠っていたい怠け者の主人公と、それとは対象的に行動リストを書いてまで休日を充実させたい職場の先輩、京都の街で正義の味方として活動しているぽんぽこ仮面、そのぽんぽこ仮面を追う人たちが絡み合って小冒険を巻き起こす物語になっている。

この小冒険は京都の実在する街の中でなんとも不思議な1日の体験を描いたストーリーになっていて、非常にテンポ感がよくて楽しく読むことができた。
この小説は朝日新聞に連載されていたらしく、連載時は毎回楽しんで読むことができるように書いたと筆者が語っていることからこのテンポの良さを感じられるらしい。

迷うべきときに迷えるのも才能

浦本探偵

小和田くんの魅力

主人公である小和田くんは他のどの主人公とも負けを取らないほど怠け者で、こんな何もしたくない主人公でストーリーは展開していくのかと思ったが、あれよあれよと周りに流され本人の意志に反して行動を取ることとなる。
小和田くんは何もしたくない寝ていたいとはいいつつ意外に行動的な一面も見られ、きっと面白いことに巻き込まれたり周りから愛される才能があるんだと思う。

小和田くんに魅力があるから恩田先輩や後藤所長も外へ連れ出そうと誘い出してくれる。
そうじゃなきゃそんな面倒なおせっかいしようと思わないわけだし。
恩田先輩なんかは彼女とのデートにも小和田くんを誘って3人で一緒に行動をしている。そこまでしてくれるほど小和田くんには魅力がある。

ぽんぽこ仮面の正体

気になった点としてはぽんぽこ仮面の正体が割と序盤でこの人なんじゃね?と簡単に分かってしまうこと。
ミステリー小説とかで犯人を最後まで読まないと特定できたことがない自分でもかなり序盤から分かったので、これはこういう見せ方なんだと思った。

京都に行きたくなる

京都の宵山や祇園祭、実際の地名や通り名などがでてきて舞台としては現実的なんだけど、ストーリーに少しファンタジー要素が加わっているため、なんとも不思議な感覚を体感することができる。
京都には修学旅行で神社仏閣などの観光地にしかいったことがないため商店街のお祭りや蕎麦屋などお酒を飲んだりフラフラ歩いてみたりしたくなった。


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