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現地の授業で見つけたちょっとうれしかったこと

 前回の内容は,かなり苦悩の告白という感じで読み手も疲れてしまったかもしれないので,今回はうれしかったことをテーマに話したいと思います!
ただ,別の意味で頭が痛くなる内容かもしれないので,システムやらモデリングやらの横文字にイラっとした方は最後の見出しだけでも見てお楽しみください(笑)

憂鬱に感じていた授業の中で

 修士課程も大詰めを迎え,日本の論文の執筆が着々と進む中,インドネシアではなかなか思うように研究が進みません。正直,修士2年の終わりに授業なんて基本的にないんですが,ダブルディグリー+留学遅延で僕は5個の授業に追われています泣。そんなこんなで今日からも新しいクラス,「システム分析とモデリング」の授業が開始されました~。やること盛りだくさんな中にこれが追加されてだいぶあっぷあっぷ,先生も海外に住んでいるとのことで時差の関係で授業も19:00から…。「もうすでに研究の中に取り込んでる内容だから学ぶことないよ,憂鬱だな」と感じていたのですが,まさかの機会となりました。

何の授業なんだよを説明します

 システム分析とモデリングと聞いてよくわからないと思います。僕も,この授業を受けて改めて学びました(まあ,この段階で収穫なんですが)。
 さて,システムというのはみんなよく使う言葉ですが,それって厳密に何なん?と聞かれると,「ウッ!」となる。システムとは次の3つを含むものだそうです。
①複数の要素で成立している
②複数の要素が相互に関係している
③複数の要素が相互に関係することである目的を果たそうとしている
 簡単な例でいくと,我々人間もシステムですね。人間は,様々な役割を持つ臓器が(①の条件),互いに関係して食べ物を消化したり,体温を調節したりして(②の条件),人体を生かすように作用している(③の条件)。これシステムかどうかクイズを作るのは面白いかもしれませんね。
なので,この授業の到達点は,構築されたシステムを適切に把握すること。ただ,そう簡単ではない。
 よくよく考えてみてください,じゃあ人体の臓器,例えば脳はその中に,膨大な神経細胞と毛細血管が(条件①),その相互関係で神経伝達を行うことで(条件②),各臓器へ信号をつたえる(条件③)。そして,その神経細胞の中では…と,システムはシステムで構築され,さらにそのシステムもシステムで構築され,際限ないミクロな世界へと続いてしまいます。でも,自分の健康診断の時に,臓器を構築する分子まで考慮するのはやりすぎですよね。それに対して,あまりにも大きな視点,マクロな視点でシステムを捉えると,不十分。「全人類は80億人もいるから人間はみんな元気だ!」というわけのわからない把握も生まれてしまうかもしれません。
 そのため,この授業のゴールはシステムを適切なスケールで把握し,それに対して分析を行う視点を養うこと。そんな感じだと思ってください。

システムと日常生活(現象とロジック)?

 さて,システムとは何かわかったとしても,いまいち煮え切らない。もっとしっくりくる物事はないか。そのため,システムが普段私たちの目にどのように映るのかを考えてみましょう。
 もう今の時代テレビ離れが進んでいますが,テレビを例にしてみましょう。テレビは,中の装置が色々連動してディスプレイに番組を表示するという目的を果たしています。ただ,私たちがテレビを見る時,そんなこと気にしませんよね。つまり,テレビをみる私たちにとって重要なのはシステムの目的がちゃんと果たされるかであって,システムそれ自体ではありません。
 このシステムの目的が果たされることにより生まれるものを「現象」と呼びましょう。映し出された番組ももちろん,株の価格チャートだって,よくよく見てみると,私たちの世界は「現象」にあふれていますね。
 しかし,ある日,テレビが壊れた。なんとも困った。この「現象」を目の当たりにした時,初めて私達は現象の裏側にあることを気にかけます。あるシステムが目的を果たすまでの過程で,どのような要素が存在しどのような相互関係があったのか。それを明らかにするために組み立てられるもの,それが「ロジック」と呼べるものです。
 「"なぜ",テレビが壊れてしまったのか」,このなぜに適切に応えるものが「ロジック」です。それはもしかしたら湿度のせいかもしれませんし,温度のせいかもしれません。はたまた,中の部品に不具合が存在していたのかもしれませんね。テレビが壊れてしまったときの「なぜ」くらいならば,簡単なロジックで答えられるかもしれません。しかし,もっと大きな「なぜ」,例えば,「なぜ梅雨なのに雨が降らなくなったのか」,このロジックはそう単純ではありません。あまりにも複雑すぎるロジックを組み立てる必要がある,その時に使われるのがモデリングなのです。

結局モデリングってなに?

 実は私達,小学校から高校にかけてずっとモデリングを学んできてます!疑問には思いませんでしたか?何でいつも算数の中に出てくる人たちは,「一定の速さ」で歩くのか。現実にはそんなことあり得ませんよね。つまり,現実に限りなく近いであろう仮定を作り出すこと,それがモデリングと呼べます。例えば,「小学生の身長 (y)は体重 (x)に比例する」という想定は,最も簡単なモデリングの一つです。それは「y=ax」(aは比例定数)と表すことができますが,100%当てはまるかといわれたらそうではない。今まで私たちが学んできた「なんちゃら関数」はある意味で全てモデリングのためのものだともいえるでしょう。ただ,現実はモデル通りにはいかない。だから,あくまでもモデルなのです。
 では,なぜモデリングによってロジックを組み立てられるのか?それを理解するためにこんな例を取ってみましょう。
 例)ある高校で,1年生が受ける最初の定期テストの数学の平均点は毎年変化する。なぜでしょう?
 ここでの平均点は「現象」です。ではなぜその「現象」が起きたのかの「ロジック」を組み立てていきましょう。先も述べたように,この現象を生み出したシステムを把握するには適切なスケールが重要です。もちろん生徒個人個人(朝ごはん何食べたか)とかも大事ですが,今回は,生徒全体の動態に焦点を当てます。
 生徒全体に焦点を当てた時,過去十年の「高校入試の平均点(x1)」,「入試の結果のばらつき(x2)」,「塾・予備校に行っている学生の割合(x3)」,「朝ご飯を食べている生徒の割合(x4)」くらいを平均点の現象を生み出すシステムの要素としてとってみましょう。ここで平均点を「y」と置くと
y = a*x1 + b*x2 + c*x3
みたいな形で表せる「関数」を作ることができました。あれ,x4はと思うかもしれませんが,yに影響しなかった,ようするに不要になった要素のため排除されました。つまり,「なぜ,平均点が変動するのか」の説明として,「高校入試の平均点や入試の得点のばらつきが毎年異なっており,予備校に行っている学生が毎年違うから」という「ロジック」による説明ができるのです。そして,そのモデルにより組み立てられたロジックが適切なら,これから生じるであろう同様の現象にも適応可能なはず,「予測」ができるのです。このモデルを使えば,来年の新入生の最初の定期テストの点数を予測できます。面白いですね。

これだけ語っておいて嬉しかったことって?

 何でこんなに熱く語ってしまったのか,それは自分のコンプレックスが自分の将来への強みになっていると,この授業で気づかされたからです。
 自分の中でのコンプレックスとして,「考えすぎること」と「理屈っぽいところ」がありました。よく人と喋っていると,「なんでそんなに考えすぎてるの?もっと気楽に生きなよ」といわれますし,「お前,本当に理屈っぽいよな,全部に説明加えなくていいから」ともいわれます。そのたびに,「やっちゃった」と思ってげんなりすることが多いのです。
 ただ,この授業を受けてみて,「システム分析とモデリング」はあまりにも自分の気質に合っている。どんなことも深く考えて,それがなぜ起きるのかを考えて「しまう」自分の特性は,この研究テーマに対してポジティブだと強く感じました。そして,意図せず自分の専門性をそこに置いている自分の嗅覚を信じるきっかけにもなった。
 博士課程に進んだ場合は,僕はこの専門を幹に枝を広げていきます。しかし,「この幹で良いのか,僕自身がその幹を安定させる土壌になるのか」というのはいつもどこか迷っていました。そんな中だるいなと思いながら受けた授業が授業内容以上の学びを僕に与えてくれたように感じます。
 そして何よりも,原点に立ち返って学ぶというのは大事ですね。自分が驕っているところほど原点に立ち返った時,目からウロコの気づきがある。そんな思いに満ちた授業をこの記事で復習することで,最後の課題提出ということにしたいと思います。

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