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研修実施から効果測定、今後のアクションプランの策定まで

とある社内研修にて

研修実施~アンケート結果分析~次回以降のアクションプラン提案までを行ったため、そのプロセスを記します。
基本ひとりごとだと思って見ていただければ幸いです。

アンケート設計について

・社員番号をお答えください。
・研修の満足度についてお答えください(1~5の5段階で評価)
・本研修の内容は理解できましたか(1~4の4段階で評価、中間評価を排除)
・今後本研修の発展編を実施する場合、興味がありますか(1~4の4段階で評価、中間評価を排除)
・現職において、必要だと思う力を以下よりチェックください。
→経済産業省提唱「社会人基礎力」より12項目をYes/Noで評価(主体性、働きかけ力、実行力、課題発見力、計画力、創造力、発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性 、ストレスコントロール力)
・現在、自身が身についていると思う力を以下よりチェックください。(上記設問同様、社会人基礎力12項目を評価)
・その他、ご意見等ございましたらご記載ください。

分析結果について

データを基に「年次」「所属」「役職有無」による差異について分析。使用手法は、Excelでの「回帰分析」。得られた知見を以下にまとめる。

▼回答者基本情報(表1)

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※所属については、分析者によるラベリングを実施。

▼満足度、理解度、興味度について(表2)

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これらは、いずれも「年次」「所属」「役職有無」による差異は見られなかった(どの属性で切り取っても平均値付近の数値)。よって、参加者に対してはどの属性であっても一定のサービスを提供できたといえる。

▼社会人基礎力についての認識(Yes=1,No=0で数値化)
↓グラフ1

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まずは、全体の結果に関して述べる。
グラフ1を見ると、ほとんどの項目で「必要だと思う」>「身に付いている」という結果。そしてその中でも特に差が大きい項目は、「課題発見力」と「発信力」の2つ。よって、今後の研修でもこの2つのギャップをフォーカスし成長を提供する研修であれば、ニーズは高いと思われる。

次に、「必要だと思う力」について役職あり(マネージャー以上)と役職なしでの意識の差について見る。
↓表3-1

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これを見ると、差が大きかった項目は「計画力」「発信力」「ストレスコントロール力」の3つ。ここで、「年次」「所属」を入れて回帰分析を行うと、「役職」による効果ではなく、むしろ「所属」による意識の差が大きいことが分かった。詳細は表3-2を参照
↓表3-2

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★「*=10%水準で有意、**=5%水準で有意、***=1%水準で有意」を表す。

つまり、当社において「必要だと思う力」の要件は、各事業部によって異なる可能性が高いということが言える。特に、「計画力」はバックヤード部門で必要性が低く、「ストレスコントロール力」は基準値であるその他事業部でより求められていることが分かる。
※こちらは、採用要件を考えるときに有用であると考えられる。

最後に、「身に付いていると思う力」について役職あり(マネージャー以上)と役職なしでの意識の差について見る。
↓表4-1

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差が大きかった項目は、「課題発見力」「計画力」「状況把握力」の3つ。
そこで、「年次」「所属」を入れて回帰分析を行うと、以下のことが分かった。
Ⅰ 「課題発見力」「情況把握力」は役職の有無によってはっきりと差が認められる。
Ⅱ 「計画力」は、役職ではなく年次の高さや所属(バックヤード部門ダミー)による影響が大きい。

表4-2

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★「*=10%水準で有意、**=5%水準で有意、***=1%水準で有意」を表す。

Ⅰについては、他の項目を変数として考慮した上で「役職あり」と「役職なし」の間での能力の差が見えたことが分かる。そのため、今後「マネージャーを目指す非管理職社員」に向けた研修を打つ際に、「課題発見力」「情況把握力(チーム内、他部署との連携)」に関する題材を打つことで、キャリアアップ時の能力ギャップを埋める一助になるかもしれない。
※こちらは、研修を考える際に活用できる知見。

またⅡについてだが、「計画力」は「必要だとされる力」の回答でバックヤード部門ダミーがマイナスに働く効果が見られた。よって、バックヤード部門は、「計画力」がすでに身に付いていると感じるため、必要性を感じていないということが読み取れる。

最後に

本分析は、以下の点において今後検討すべき余地が残されている。
・アンケート回答者71名に限定した結果であること
・回答者属性に偏りがあり、所属社員の属性とは乖離があること
・社会人基礎力についての評価があくまで自己評価であること
・社会人基礎力を評価する際、「Yes=1,No=0」の二項対立の設問となっていること(本来は、1~10評価のような多段階的にスコアできる設問が分析上好ましい。ただ、研修後のアンケートという都合で、今回は極力簡易化したものを提供)

より詳細かつ精度の高い分析を実施する上では、設問項目や回答者属性についての工夫が必要となるが、研修実施~回答者の分析~次回以降のプラン見直しという一気通貫モデルの構築において、一定の効果があった。今後の研究において、より深い知見を提供できるよう今後も尽力する。