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【出産しました】娘と離れて過ごした、苦しかった夜のこと。

娘が産まれたとき、私はもう専業主婦になっていて、保育園に通わせたこともベビーシッターさんを頼んだこともなかったから、産まれた瞬間から今日まで、娘と四六時中、一緒に過ごしてきた。

そのせいか、たまに夫に面倒を見てもらって病院や美容院に行っても、『せっかくだから気分転換しよう!』なんて気持ちとは裏腹に、娘が恋しくなって、待ち時間には娘の動画や写真を何度も見返す始末。

この1年半、私の日常も人生も、この小さな娘にすっかり埋め尽くされたのだ。



だから、とても快適でこのままずっと入院していてもいいと思うほどだった入院生活中、唯一つらかったのは、娘(第一子)とずっと一緒にいられないことだった。


このご時世で、産院の個室に家族は宿泊できないし、面会時間も最長1時間と決まっていた。
宣言下では子どもとの面会が禁止されていたことを思えば、解除された今、面会できるだけでもありがたいのだけど、産まれてからずっと一緒にいたことを思うと、娘は大丈夫なのか、会うことで逆につらくなるんじゃないか?と、面会するべきかどうか、入院当日まで答えを出せないままだった。

娘だけじゃない。
むしろ私の方が、こんなにも娘に会えないのは耐えられないような気がして、不安だった。
(母とのLINEのやり取りを見返したら、出産2時間後には、もう母に「〇〇(娘)の写真送って」と要求してた。)


今回は、そんな娘と離れて過ごした5日間について書こうと思う。



出産翌日

母から14時頃面会に行くねとLINEが届いたとき、ずるいけど、私はわざと娘を連れてくるか尋ねなかった。それを聞いてしまえば、きっと、私自身が判断しなくちゃいけなくなるから。
娘がつらくなるかもしれないから連れてこないで、と言う自信はなかったし、『もしかしたら大丈夫かもしれないし』という気持ちもあった。なにより私自身が会いたかった。


母が娘を連れて病室を訪れたとき、娘は私の姿を見つけると満面の笑みで腕の中に飛び込んできた。そして、そのすぐ後で産まれたての息子の存在に気付くと、興味の対象はそちらに移り、手を握ったり、頭を撫でたり。
帰るときは、母に手を引かれながら、反対の手を可愛く振り、笑って帰って行った。


入院中、母とは頻繁に娘の様子をLINEでやり取りしていた。
この日は泣かずに帰り、夜ご飯もよく食べたけれど、夜中の3時に突然大泣きして、両親が二人掛かりであやしても泣き止まなかったよう。
私の部屋に行きたがったので連れて行き、私がいないことを確かめさせた後も、ずっと私の部屋で大泣きしていたらしい。
それを聞いて、『娘にとっては会わない方がいいのかもしれない。私の姿が見えなければ案外平気かもしれない。』と、また迷い始めて。

けれど、ずっとしょんぼりしているらしい娘に、あと3日も会わないでいるよりは、毎日少しでも会った方がいいんじゃないかという気持ち、それから、母に息子のガーゼなど必要なものを毎日届けてもらっていたので、その間、父と娘を二人きりにするのは心配(父は娘が泣いたら対処できない。)という理由で、迷った末、「娘を連れてこないで」とは、やっぱり言わないことにした。


出産2日目

病室まで会いにきてくれた娘は弟のことを触っていたのだが、前日ほどには興味を抱いていない様子で、私のそばから離れようとはしなかった。抱っこすると嬉しそうに抱きついてくる。

15時から退院に関する予定が入っていたので、同じエレベーターで私は二階の新生児室へ息子を預けに、母と娘は帰るため一階の正面玄関に向かった。
二階に着いたとき、娘と繋いでいた手を離してエレベーターから降りる私を見て、娘は床にしゃがみこんで泣きだした。
母が抱きかかえエレベーターを閉めたが、新生児室に預けている間も一階に着いた娘の泣き声が聞こえてきて、私まで泣きそうになる。


娘は、夜中、隣で寝る母に何度かくっついたりしながらも、朝まで寝たみたい。


私はというと、この日、なかなか寝付けなかった。
入院中は毎日2時間程度しか眠れなかったのだけれど、この日は特にダメだった。
苦しくて、たまらなかったのだ。


この産院は、娘を出産したのと同じ産院だった。
しかも、偶然、娘のときとまったく同じ病室。
家具の配置も、窓からの景色も、授乳クッションも何もかも娘のときと同じで、ベッドで眠る息子の顔と、産まれたての娘の顔が重なって見えた。
娘を産み、このベッドで添い寝した日からずっとこれまで一緒に過ごしてきた日々を思い返した。


娘もこんなに小さいところからスタートして、寝返りとかハイハイとか少しずつできることが増えてきたこととか、そういう成長に伴って自我や興味が出てきて、こちらの思い通りにいかないときや疲れているときに怒ってしまったこと、そのときの娘の悲しそうな顔を思い出して。
今日のお昼の嬉しそうだった顔、バイバイのときの泣き顔、我慢させてること。

考えたら、産後メンタルにせいもあるかもしれないけど、もうね、涙が止まらなくなってしまって。

もしかしたら、多くのお母さんが、似たような気持ちを抱いているのかな。

苦しくて、恋しくて、娘に会いたくて眠れなかった夜。
退院の日がわかっている私でさえこんなに会いたくて苦しいのなら、いつ戻ってくるかも、なんで今一緒にいられないかもわからない娘は、どれだけ会いたくて不安で仕方ないんだろう?

そう考えたら、たまらなくなって、息子を起こさないように声を出さずに泣きました。



出産3日目

相変わらず、病室では私にべったりの娘。
里帰りしてから覚えた単語や数字を、嬉しそうに披露してくれる。「すごいね!」と褒めると、とっても嬉しそうに笑う。
そんな娘に少しでも独り占めさせてあげたくて、とにかくこの時間が、娘にとって楽しい時間になってくれることを願って、あえて自分からは息子の話をしないようにしていた。

帰り時間が近づいて、靴を履かせようとすると、前日の経験でお別れだということがわかったのか、娘は私にしがみついて大きな口を開けてわんわん泣きだした。
可愛い目から次々に涙が溢れだすあの光景は、今思い返しても、苦しくてたまらない。

帰りはエレベーターまで送っていった。
一緒に乗り込まない私に大泣きする娘。
エレベーター横の窓から駐車場を見ていると、母に抱っこされたまま病院から出て、チャイルドシートに乗せられる娘が見えた。
泣き声が、窓を通してここまで聞こえてくる。

父が、窓際で見下ろしている私に気づいて、私の姿が一番よく見える場所で車を停めて娘側の窓を開けると、泣き顔の娘と目が合った。
笑って手を振ると、ますます大きな口を開けて泣き始めたので、すぐに車は行ってしまった。


病室に戻った瞬間、私はまた泣いた。
助産師さんが薬を持って訪ねてくるかもしれなかったけど、我慢できなかったのだ。


産院を出た後、娘は車の中で10分以上大泣きし(後日、父も母も「あんな泣き方をする姿は見たことがないと言っていた。ぼろぼろと大粒の涙を流して泣いていたらしい。)、泣き疲れて眠った様子。
起きてからは、母にくっついて回り、少しずつ元気を取り戻して夜ご飯はよく食べ、SnowManの歌に合わせて踊って喜んでいたらしい。



出産4日目

この日は退院日だったので、娘と一緒に帰ることができる。セレモニードレスに身を包んだ息子の隣に腰掛け、娘を膝に抱っこして三人で写真を撮る。
娘は私の真似をして、「ピース」と言いながら「だるまさん」シリーズの絵本で覚えたピースを披露してくれた。まだ上手にできなくて、人差し指しか立っていないけれど、それもまた可愛かったな。

産院の玄関先で、迎えに来てくれていた夫と久しぶりに再会し、母に写真を撮ってもらった。四人揃ったはじめての家族写真は、娘も息子もカメラの方を向いていない。

実家に着き、夫が買ってきてくれたケーキ(なんとHARBSのホールケーキだった。めちゃくちゃ大きくて、大人5人で食べきるのはかなり大変だった。笑)をおやつに食べている間も、娘は私と夫にべったりで、息子に対して嫉妬している様子だった。
私が授乳を始めれば泣き出すし、息子のいる空間から引き離そうと、すぐに外に連れ出そうとする。何度か、母や夫が近所の公園に遊びに連れ出してくれたけれど、娘はとにかく1秒たりとも息子のいる部屋には戻りたくない!という感じで。


もう外が薄暗くなってきたころ、外に行きたいとせがむ娘の手を引いて、二人きりで近所を散歩した。出産する前日まで、毎日一緒に散歩していた、娘のお気に入りのコース。
下から私を見上げる娘の笑顔が、嬉しそうで、嬉しそうで。
心底幸せそうな顔で笑ってくれるから、私はそんな純粋な娘の笑顔を見て、また少し、胸が苦しくなる。


子どもはいつも見返りを求めずに、こうして素直に気持ちを伝えてくれる。楽しいときも、嬉しいときも、怒ったときも、悲しいときも、隠さずに気持ちを教えてくれる。

それでも、きっと、この子の気持ちを、私はきっと完璧には把握できていないと思う。
この数日間、目に見える以上のたくさんの不安や寂しさを、感じていたんじゃないのかな?
こんなに小さな体で、どれほどの心細さに耐えながら、私がいない理由を、突然の弟の誕生を、どんな風に考えていたのだろう。





息子が産まれ、私は二人の子の母になった。
ほんの少しだけ、娘の目を気にしながら息子の世話をする日々。

退院して数日の現在では、娘は息子の存在を受け入れて、可愛がってくれる。息子が泣けば、素早く駆けつけてトントンあやしてくれるしっかり者のお姉ちゃん。


まだまだ小さな息子のちょっとした仕草が可愛いように、娘が見せるいろいろな表情や仕草が可愛くて、愛しくてたまらない。とても大切な存在だ。

出産入院中、娘に会いたくて、娘のことが心配でたまらなかった夜。
あんなに心が締め付けられる苦しい夜は、娘を産んではじめてだったと思う。

でもそんな経験をしたからこそ、一緒にいられる幸せをより感じ取れるようになった。
娘のことは、入院前よりもっと愛しくなった。
笑顔も泣き顔も、わがままも、拗ねる姿だって、ぜんぶ、見逃したくない。


この二人の子の母になれて、私は、とても幸せだなぁと思う。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。