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短編小説集

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3秒で書いて3秒で読めると評判の脳を無にして書いた「無脳シリーズ」をまとめたよ!
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2021年1月の記事一覧

なつかしドラマ「無脳シリーズ」第五話〜ペイブメントは、夜更の通り雨。〜

なつかしドラマ「無脳シリーズ」第五話〜ペイブメントは、夜更の通り雨。〜

「ユウサク、おはよう!」おれを下の名前で呼ぶ女子は、ミズミだけだ。おれがたまに陸上部の朝練に行くと、下駄箱で出会う。ミズミはいつも、そのときは、吹奏楽部の大きなカバンを持っている。「うん。」
チラ、とミズミを横目に見て、決して「おはよう」とは返さない。それは恥ずかしいからじゃない。そのままおれは校庭に駆け出す。

「ユウサク、今日はコンビニ寄って帰ろうぜ。」「あー、いいよ。」
もう冬だ

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しとしとドラマ「無脳シリーズ」第4話〜ほうれん草とちりめんじゃこをあえたもの。〜

しとしとドラマ「無脳シリーズ」第4話〜ほうれん草とちりめんじゃこをあえたもの。〜

りこはお風呂でおしっこをする。お湯を止め、湯船に浸かった瞬間、今までこれっぽっちも無かった尿意が、一気にりこの頭を支配する。脳みその鎖を解いてやると、ジュワッと、黄色い粒子が扇状に広がり、「これがアンモニアか」と、気づいた時には、溶けてなくなる。「アンモニアは水に溶けやすい。」
りこは大人しい女の子だ。メイクはナチュラルに仕上げるし、服は白色がよく似合う。大学まで貞操を守っていたが、最初に付き

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泥酔ドラマ「無脳シリーズ」第3話 〜ハッシュタグ・なんばーわん!〜

マリは、20代のはじめの頃、奥日光に旅行に行った。一緒に行った男性の顔は、もう覚えていない。いや、覚えている、けど、名前は確か、アオイ、いや、イチト。彼は確か、フォルクスワーゲンの赤、チェスターコートの紺、風邪をひいた時は鍋焼きうどん、ほうれん草の緑、でも、色々混ざっている。掴みどころがない。誰も彼も、掴みどころがない。マリは急に不安になる。
咄嗟にブロンを10錠ほど飲むと、少し落ち着いた。で

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