見出し画像

2020年 My Favorite 国産Hip Hop Songs 15選

久々のnote更新です。
毎年恒例、特に好きだった国産Hip Hop音源15曲について書いていきます。

・ハイボール - RICCHO 
  Prod by 符和 

沖縄のHip Hopを牽引する2MC、RITTOとCHOUJIによるラップデュオRICCHO。島根松江のDJである符和とタッグを組みリリースされた7inchシングルがこの曲''ハイボール''。唄われるのは友情といつかの再会を願う乾杯。味のあるラップがドラマチックなサックスの音色と相まってこれ以上無いほどにエモーショナル。どこかブルースを感じさせるこの二人の声は酒の話がよく似合う。
2020年8月29日リリース
Prod by 符和

・TOKYO MONOGATARI - SUIKEN 
  Prod by DJ WATARAI & cherry chill will.

言わずと知れたNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMC、SUIKENの約10年ぶりとなるシングル。プロデュースはお馴染みDJ WATARAIに加えHIP HOPフォトグラファーのcherry chill will.が参加、更にエグゼクティブプロデューサーにDJ HAZIMEと正に鉄壁の布陣で作られた今作。
疾走感のあるトラックに乗るSUIKENのキレのあるラップ、そして歳を重ねて深みが増したリリック。特にラストヴァースの畳み掛けは素晴らしいの一言。 『NITROヘッズ全員に幸あれ』と歌われて胸が熱くならないファンはいないだろう。長いトンネルを抜けてSUIKENの第二幕はこれから始まる、そう思わせてくれる楽曲。
2020年2月28日リリース
Prod by DJ WATARAI & cherry chill will.

・EVEN feat.WONK - 切刃
  Prod by Kl-1

本年WONKが発足したSmall Things Project。概要を説明すると、コロナ禍で活動が制限されているアーティストの創作活動援助の為、WONKの楽曲である''Small things''のデータを無償提供するというもの。
このプロジェクトにはHip Hopのアーティストも多数参加していたがその中でも一際輝いていたのが今作''EVEN''。''Small things''と同様に「些細なことが世界を輝かせてくれる」という意味も込めつつ、自らの小ささや弱さを受け入れた上で前に進むことを歌った楽曲である。非常にパーソナルでありながらとても普遍的なそのメッセージにきっと救われる人もいるはず。
また切刃の別名義であるKl-1によるサンプリングトラックも絶妙で、切刃のプロデューサーとしての手腕も光る一作。
2020年4月17日リリース
Prod by Kl-1

・82S - 1982S
  Prod by MASS-HOLE

MASS-HOLE、ISSUGI、Mr.PUG、仙人掌、YAHIKO、YUKSTA-ILLという1982年生まれMC'sにより結成されたユニット1982Sのシングル曲。
メンツからして間違いないことが約束された楽曲だが、聴いてみると予想を更に超えて素晴らしい。全員が主役になり得る確固たる実力を持っていながら、誰も潰し合うことなくお互いを高め合った末に完成された最高のマイクリレー。ノーフックながら一刻たりとも格好良くない瞬間が無い。ドスンと深くまで響くMASS-HOLEのトラックの渋さは言わずもがな。DJ SHOEのスクラッチが更に黒々しく楽曲を彩っている。
2020年3月6日リリース
Prod by MASS-HOLE

・Cross The Line feat.Chamois - Tomy Wealth
  Prod by Tomy Wealth

ドラマー/ビートメーカー/コンポーザーであるTomy WealthのEP「Incarnation」収録、Hip Hop バンドGENIUS P.J’sのMC Chamoisを客演に招いた本楽曲。躍動感が漲るハードなドラムに負けじと放たれるChamoisの言葉のラッシュ。決して軽い言葉を並び立てるのではなく、その一つ一つに深みを感じさせるのは凄い。音と言葉が作り出す世界観に酔いしれる一曲。
2020年12月23日リリース
Prod by Tomy Wealth

・The Moment - Ryohu
  Prod by Keiichi Tomita

KANDYTOWNの一員でソロでの活躍も目覚ましいRyohuのメジャー1stシングル。プロデュースは冨田ラボこと冨田恵一。
バチっと音に言葉をハメていくRyohuのフローは聴いていてとても心地が良く、言葉一つ一つがしっかりと耳元に残る。神々しいクワイアと、「今を生きる」というポジティブなエネルギーに満ちたリリックが相まって一種の賛美歌のようにも聴こえる。後半に向け壮大に美しく盛り上がっていく展開はこの陰鬱な時代に生きる人にカタルシスを与えてくれる。
2020年10月7日リリース
Prod by Keiichi Tomita

・MAD BLACK feat.NAGAN SERVER - SATTU CREW
  Prod by SATTU CREW

B-boy jazzを掲げる大阪のHip Hopバンド、SATTU CREWが客演にラッパーNAGAN SERVERを招いたシングル曲。一発録りでレコーディングされた生々しい音はまるで生きているかのようにうねり、曲名が表す通りどこまでも黒々しく響く。後半に向け走り出す濃厚なグルーヴに乗るVER$E JACK RIBEROとNAGAN SERVERの火花を散らすようなラップの応酬は聴いていて快感を覚えるほど。とにかく渋い、その一言に限る。
2020年3月21日リリース
Prod by SATTU CREW

・東京 - ACE COOL
  Prod by TOKYOTRILL

広島出身で東京を拠点に活動するACE COOLの自伝的1st album『GUNJO』収録。自伝的というコンセプトを象徴するような本楽曲はACE COOLが上京してから今に至るまでのストーリーを描いている。
仲間と切磋琢磨して少しずつ理想に近づいていく喜び、そこに芽生えた感謝の気持ち、というプロットはシンプルながら感動的。徐々に力強くなるギターのサウンドは東京で生きていく意思と覚悟を感じさせる。リリックの映像が短編映画のように浮かんでくるのは言葉を聴かせる素晴らしいスキルがあってこそ。
2020年4月17日リリース
Prod by TOKYOTRILL

・KIX/Limo - Moment Joon
  Prod by NOAH

大阪を拠点に活動する韓国人ラッパーMoment Joonの1st album『Passport & Garcon』 に収録。人生を削り作られたかのような痛みと生々しさを感じさせる作品の幕開けを飾る本楽曲。哀愁を纏って囁くように歌う''KIX''と、怒りに満ちた声でラップする''Limo''という二曲を合わせた一曲。
''KIX''ではその名が表す通りKIX(関西国際空港)の入管での実体験が歌われる。日本語を話し、税金を払い、日本で生きているにも関わらず''外''の人間として扱われる悲しみ。それは移民という立場からしか歌えない言葉。日本人の持つ永住権への憧れる心情が静かに語られる。
そこから一転して音と声のトーンが変わる''Limo''。Fuck 入管という語り口から分かるようにそこにあるのは怒り。それは入管だけでなく差別や世知辛い世間に対する感情。悲しみが怒りに変わる瞬間をこの一曲で描いているのだ。そして曲の後半ではその怒りがHIP HOPという力に変わる。
一曲でこれほどまでに感情や想いを込めるのは圧巻。ケンドリックをオマージュした一説の通り、Moment Joonがこの国で勝ち上がるのは時間の問題だろう。そう思わせる力がある一曲。
2020年3月13日リリース
Prod by NOAH

・New Ellegrand feat.ロキノーマルパーソン - ばんり
  Prod by ISAZ & RA.KC

名古屋のMC、ばんりの2nd album''Feed the Plump''収録。同レーベルJET CITY PEOPLE所属のロキノーマルパーソンを客演に招いた楽曲。
ISAZ & RA.KCが手掛けたビートはクラシカルなブーンバップ否応なしにこちらの首を振らせてくれる。そこに乗るばんりとロキノーマルパーソンのラップは音だけ聴くと最高、そして中身を聴くと最低。勿論良い意味で。
全編を通してアブノーマルな性の香りに満ちているが特にラストヴァースが滅茶苦茶酷い。曲を聴いてこんなに笑ったのは久々だった。でもただの面白い曲じゃない、そこにキチンとイケてるHip Hopを感じさせるのは凄い。
2020年6月24日リリース
Prod by ISAZ & RA.KC

・Bitter Dose - ISSUGI, JJJ & 5lack
  Prod by C.O.S.A. 

JJJ、ISSUGI、5lack、C.O.S.A.の4名による共作シングル。C.O.S.A.はプロデューサーとしての参加。
寄せては返す波のようなグルーヴを感じさせるビート。その波を乗りこなすJJJとISSUGIによる安定感は流石。卒なくこなしながらも所々にしっかりとパンチラインを残す辺りが何ともニクい。「Lifeのスペルの中 クソが無きゃlieになる」なんてリリックはISSUGIだからこそ説得力があるというものだ。
そして5lackのHook職人ぷりも素晴らしい。苦い過去や間違いといった辛いテーマを歌いながらも、特有のユルさのお陰で重さを感じさせないノリの良いナンバーに仕上がっている。
2020年6月12日リリース
Prod by C.O.S.A.

・Operation : Doomsday Love - PUNPEE
  Prod by PUNPEE

大ヒットを記録した『MODERN TIMES』から2年半を経て発表されたEP『The Sofakingdom』収録曲。
隕石衝突が目前に迫った地球を舞台にしたポストアポカリプスのストーリーテリング。絶望の淵でも変わらない愛の歌はコロナ禍という未曾有のカタストロフィの最中だからこそより一層強く響く。キャッチーでロマンチックな曲中で照れ隠しのように様変わりするトラックやリリックも一筋縄じゃいかないPUNPEEらしくて面白い。
2020年7月1日リリース
Prod by PUNPEE

・invention - 9for & Oddy lozy
  Prod by Oddy lozy

MCバトルで名を馳せフリーキーな声と卓越したスキルを持つラッパー9forとプロデューサーのOddy lozyによる合作album『LAB in GARGE』収録。
それまで9forの事はノリ全振りのフロー巧者という認識だったが、この曲でそのイメージが一気に覆った。こんなラップも出来るのかと。
哀調を帯びた壮大なビートの上で語られる亡き友人への想い。それは決してお涙頂戴ではなく、これから道を歩んでいく自分への覚悟のようにも聴こえる。かなり癖のある早口フローなのにこの聴き取りやすさは凄い。ノリの良い曲も聴いていて面白いが今後はこの路線の曲をもっと聴いてみたい。
2020年10月31日リリース
Prod by Oddy lozy

・HIPHOP - JANS
  Prod by SHOTO & grooveman Spot

仙台を拠点に活動するENCOUNT MC'sの一員、JANSがサプライズリリースした1st EP『PLAY BACK』収録。grooveman Spot、MITSU THE BEATS、MAHBIEという豪華プロデューサー陣が参加する今作の中でも、特に惹かれたのがgrooveman SpotとNU:ESSENCE所属のビートメーカーSHOTOの共作トラックの今作。
堂々たるその語り口から感じるのは東北シーンで培った確かな実力。ここで綴られる生き様としてのHip Hop。決して背伸びはしない、それでも格好良いと思わせるリアルな渋みが堪らない。
2020年7月23日リリース
Prod by SHOTO & grooveman Spot

・見える景色もあったろうに feat.菅原信介 - Moment.
  Prod by sotalow

こちらも仙台のラッパー、Moment.の2nd album『weandu』収録。
アルバムのラストを締めくくるのが本楽曲。sotalowが描き出す繊細で情緒的なビートと、Moment.の深みのある声と言葉が合わさり聴く者の脳裏に鮮やかな情景を映し出す。
Hookを担当するのはGagleとの共演も記憶に新しい同郷のシンガーソングライター菅原信介。その特徴はソウルフルで包み込むような暖かい歌声。その声で放たれる背中を押すような言葉はじんわりと胸に沁み入るようだ。仙台のHip Hopの代名詞といえばGAGLEだが、Moment.の楽曲は彼らが産んだ数々のクラシックに決して引けを取らない。本当に素晴らしい名曲。
2020年12月9日リリース
Prod by sotalow


今年は例年以上に日本のHIP HOPシーンが盛り上がった一年ですが、その中でも自分が特に好きになったのがこの15曲。
どの曲も自信を持って勧められる名曲たちです。プレイリストに纏めたので良ければどうぞ。

アルバムについても気が向けば書きます。
では、良いお年を。

最後まで読んで頂きありがとうございます。