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メンフィス - アメリカ音楽 生誕の地

音楽の歴史を語る上で、その存在を欠かす事が出来ない街がある。
それがメンフィス、テネシー州最西部に位置する同州の最大都市である。

この街の音楽史を紐解こうとすると果てしないボリュームの記事になりそうなのでここでは控えるが、ブルース・ソウル・ロックンロール発祥の地と言えばその凄さが分かるだろう。
今聴いている音楽の礎がこの地で築かれたと言っても過言ではないのだ。
"キング・オブ・ロックンロール"ことエルヴィス・プレスリーをはじめ、B.B.キング、オーティス・レディングなど、数多くの偉大なミュージシャン達がこの街で発信してきた数多くの名曲は、何十年も経った今も色褪せず我々の心を掴んでは離さない。

アメリカには"音楽の街"と称される場所がいくつかあるが、これ程音楽の歴史が深い街は中々見当たらない。
もしあなたが音楽を好きだと思うのなら、次の旅先の候補地にメンフィスを入れて欲しい。先に記事を書いたクラークスデールや、カントリーミュージックの故郷である同州のナッシュビル、少し足を伸ばしてジャズの街ニューオリンズに寄るのも良いアイデアだ。アメリカ音楽のルーツに触れるその旅は、きっと人生の財産となる思い出になるだろう。
勿論メンフィスは大都市という事もあり、音楽以外にも沢山の見どころのある街だがこの記事では音楽的な魅力を書いていこう。(音楽以外はまた別記事で)

先にこの街の音楽史を細かく書くのは控えると述べたが、その理由は情報量が多すぎるという事以外に、実際に訪れて体感して欲しいという想いもあるからだ。
メンフィスを訪れたら、まずは博物館や歴史的建造物を巡ってこの街で生まれた音楽の足跡を辿って欲しい。

その中でも最初に訪れて欲しいのはMemphis Rock 'n' Soul Museumだ。ここではメンフィスにおける音楽の誕生と発展について知る事が出来る。

あのスミソニアン協会が監修した博物館というだけあって、その内容の濃さと展示物の豊富さは素晴らしいの一言だ。
日本語のオーディオガイドもあるので私のような英語が苦手な人でも十分に理解が出来る。
またオーディオガイドで、館内の展示に関連する音楽を自由に聴くことが出来るのも嬉しい。

そしてソウルミュージック好きに必ず訪れて欲しいのがStax Museum of American Soul Musicだ。

オーティス・レディングやアイザック・ヘイズ、ブッカーT & the M.G.'sなど数多くの偉大なミュージシャンを輩出したスタックスレコードの博物館である。ソウルミュージックの歴史やスタックスレコードの物語、偉大なミュージシャンのグッズが展示されているのだが、ここが本当に楽しい。
伝説的ミュージャン達のギターやオルガン、リリックノートなどが展示されたコーナーはソウル好きにとって正に天国のような空間だった。
因みにこの博物館の横には音楽学校が併設されており、未来のスターを育てている。どこまでも夢のある場所だ。

2015年にオープンしたMemphis Music Hall of Fameも魅力的な展示が揃う博物館である。メンフィス観光の中心であるビールストリート(Beale Street)からすぐというアクセスの良さも有難い。

またメンフィスで一番人気の観光地が故エルヴィス・プレスリーの邸宅であるグレースランドだ。個人の邸宅としては、あのホワイトハウスの次に訪れる人が多いらしい。

ここではプレスリーの歩んだ人生を、彼が過ごした空間に身を置いて肌で感じ知る事が出来る。何と贅沢な経験だろうか。(ここも日本語のオーディオガイド有り)
広大な敷地に飾られたプレスリーの偉業を讃える数々の展示物には圧倒されると同時に、改めてプレスリーという人物の凄さに気付かされて感動したのを覚えている。派手で工夫の凝らされたこの素晴らしい空間は、プレスリーに興味が無い人すら楽ませる事だろう。
因みに邸宅を見て回るにはツアーに参加しないといけないが、非常に混雑する施設なので申し込む際にはVIPチケットを推奨する。待ち時間の省略が出来る上、VIP専用ラウンジも使用出来るし、2機あるプレスリーのプライベートジェット内も見て回る事が出来る。
通常ツアーより多少高く付くが、何にも代え難い経験が出来るのだから安いと感じるはずだ。

プレスリー繋がりでいくと、プレスリーが初めてレコーディングを行ったサンスタジオも見逃せない。

プレスリー伝説のスタート地点であると同時に、U2やリンゴ・スター、ボニー・レイットといった超大物達もここでレコーディングを行った。ミュージシャンにとって聖地のようなスタジオなのだろう。
わざわざ日本からレコーディングしに来るミュージシャンもいるらしいが、一体誰なんだろうか。その人の音楽を是非聴いてみたいものだ。

以上、メンフィス音楽の歴史を感じれる場所をつらつらと書いてみたが、実際行くと一つ一つのボリュームが凄まじい事に気付くだろう。全部を1日で回るのは到底不可能なので2、3日かけてじっくり巡るのがベターだ。

博物館や観光地を夢中で巡っているといつの間にか日が暮れていた。さて、メンフィスの真のお楽しみはここからだ。音楽の歴史を学んだ後は実際に生の演奏を体験してみよう。
訪れるべきはメンフィス観光の中心であるビールストリートだ。

ここでは世界的に有名なB.B. King's Blues Clubや個人的イチオシのRum Boogie Cafe's Blues Hall Juke JointBeale Street Tap Roomなど、大小様々なライブバーが存在する。

公演の内容にもよるだろうが、場所によっては飲み物さえ買えばタダで生演奏が聴けるし、ミュージックチャージ(演奏料)があるところでも精々10〜20ドルだ。実際生演奏を聴けばわかるが、どのミュージシャンも尋常じゃない程に上手い。
日本で見るビルボードやブルーノートでのライブに勝るとも劣らないレベルの凄まじいパフォーマンスだ。100ドルでも決して高いとは感じない。
そんな素晴らしい演奏に酔いしれて、ついついチップを弾み過ぎてしまう。気付けば酒も進み財布の中は空っぽに。けれど胸の中は満足感で一杯になっているはず。
ビールストリートでは夜遅くまで各所で音楽が奏でられている。適当に歩いてみて、気になる音がする店に入ってみる。そこで一杯と一曲を楽しんで次の店へ、そんな緩い過ごし方もお勧めだ。

勿論ビールストリート以外にも生演奏を楽しめる場所は随所に存在し、少し郊外になるがC C Blues ClubWild Bills Memphisなどが評判が良い。(実際行った訳ではないので詳細は不明)
運が良ければ路上や公園でのパフォーマンスも楽しめるので、とにかくそこら中をブラブラしてみると良い。きっと良い音楽に出会える筈だ。

因みにだがメンフィスはアメリカにおける危険な都市ランキングの常連だ。全く気にせず夜間も人気の無い道を出歩いていたが、特に危険な目にあう事も、怪しい雰囲気を感じる事も無かった。
評判ほどの治安の悪さは感じなかったが、気を付けるのに越した事は無い。
音楽好きには是非とも訪れて欲しい都市ではあるが、その際は事件に巻き込まれないように十分注意して頂きたい。

(旅行記というよりコラムみたいだな…)

最後まで読んで頂きありがとうございます。