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旅は短し歩けよジジイ 京都旅行 2023年3月 前編 旅立ちの前に

このエッセイは53歳の白髪のジジイが、結婚以来初の一人旅で憧れの京都に行き、一泊二日の短い旅路を、へろへろになるまで歩き抜いた旅の記録である。
旅をすると思考があっちこっちに飛び回る。過去や未来や夢や現実や、普段の生活ではあまり考えないことを思ったりする。
思考も旅をするのだ。
旅の魅力はそういうところにもある。
キレイな景色を眺め、美味しいものを食べるのは、もちろん旅の醍醐味。だけど、旅をしながらどんなことを思い、考えるのか、それもまた、旅の醍醐味だ。
文章も旅のごとく、行き当たりばったり、脱線だらけとなる。
方向音痴で間抜けなジジイの一人旅、少しでも旅の参考になれば幸いである。
願わくは、ジジイに声援を。

はじめに簡単に旅のまとめ

一日目(36,536歩) 
東京駅7:33発ヒカリ→京都駅10:12着
①伏見稲荷大社(山頂まで続く赤鳥居。ととのった)
②ランチ(七条駅で九条ネギうどん)
③三十三間堂(圧巻荘厳の千手観音立像)
④清水寺(人混みにゲンナリ)
⑤八坂神社(疲れてきた)
⑥祇園・四条大橋・レストラン菊水(ビール、ビール)
⑦先斗町・四条木屋町(うわー、素敵だ)
⑧錦市場(ほぼ終わってた)
⑨ラーメン断念(新福菜館、第一旭、並べないわ)
京都駅前ホテル20:30チェックイン

二日目(40,257歩)
7:00チェックアウト
①嵐山(朝8時散策スタート)
②渡月橋(橋だ)
③天龍寺(和室、庭園、雲龍図。朝の静けさが、なんて素晴らしい)
④竹林の道(人込みが…先にここを歩けば良かったかな)
⑤金閣寺(金閣寺は金閣寺という感想)
⑥鴨川デルタ(こういうとこが好きなのです)
⑦下鴨神社(夏には古本市が開催される)
⑧百万遍交差点〜京都大学〜喫茶進々堂(きてしまった)
⑨銀閣寺(銀閣寺は銀閣寺という感想)
⑩東寺(五重塔、時間に追われつつ、来てよかった)
京都駅でお土産(ああ、もう、時間がない)
17:10京都発こだま→東京駅20:48着(こだまだよ!)

旅立ち前、旅のきっかけ

このエッセイのタイトル、訪問した場所、文章から、分かる人にはお分かりでしょう。
私が大好きな本。
「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦著
 主人公は「黒髪の乙女」。

「旅は短し歩けよジジイ」いそG著
 主人公は「白髪のジジイ」。

パクリというか、オマージュというか、言葉遊びというか、なんか、すいません。

さて、私が大好きな本。
「夜は短し歩けよ乙女」
本と言っても、はじめは活字ではなく、Audibleで聴いた。5年前くらいだったと思う。
以来たくさんの作品をAudibleで聴いているが、ナレーターの安國愛菜さんの朗読が素晴らしく、今でも不動のナンバーワンだ。夜眠れないとき、癒されたいとき、何度か聴いているうちに、この作品自体をどんどん好きになっていった。聞けば聞くほど、読めば読むほど好きになる。
ちなみに森見さんの「ペンギン・ハイウェイ」「有頂天家族」「四畳半タイムマシンブルース」もAudibleにあり、どれも大好きな作品だ。
とは言え、まだ読んでいない森見作品もたくさんあるので、生粋のファンにはまったく及ばない。
所謂俄だ。
森見さん流に、わざと難しい漢字を使ってみた。
いわゆるにわかだ。

千葉県育ち、東京勤務の私は、京都に疎い。
高校2年生のとき、修学旅行で一度行ったきりだ。
ひたすらに青くて痛かった、痛くて痛くて痛かった36年前。
嵐山、紅葉の保津川下りは、覚えている。
金閣寺は改修中で行かなかった。
清水寺、銀閣寺は行ったかどうかさえ覚えていない。

当然「夜は短し」にでてくる町々には行ったことはないし、地名もルビがなきゃ読めないし、想像もつかない。
四条木屋町とは?
先斗町とは?
二足歩行ロボットのように曲がった路地とは?
バー月面歩行とは?
古本市が開催される下鴨神社、糺ノ森とは?
京都大学?
喫茶進々堂?
四条とか五条とか、七条とか九条とか。
響きが好きなのだ。
とてもとても好きなのだ。
そうなのだ。そうなのだ。

だから京都にはずっと行きたいと思っていた。
修学旅行以来、改めての名所観光と、俄ファンによる俄聖地巡礼と。

とは言え、
「そうだ、京都行こう」
というフットワークはなく。
時間も、懐事情も、心の余裕もなく。

夫婦仲はいい。
家族仲も、まあ、悪くはない。
私だけ蚊帳の外というのはよくあるけれど、よくあるというかそれが日常だけれど、それでも、まあ、悪くはない。
二人の息子が小さい頃から、毎年たくさん旅行に行った。けれど京都には行っていない。子供を連れて家族で行くところではない気がしたし、お高い気もした。
長男は大学2年、次男は高校2年となり、さすがに家族旅行というのはほぼなくなったけど、「ビール飲み放題格安バスツアー」なんて見つけると、奥様と二人で行ったりしている。

元々は一人が好きで、一人旅も好きだったけど、結婚してからは、旅は家族や奥様と行くのが当たり前となっていて、一人旅は一度もなかった。

だけど、京都には一人で行きたい。一人旅がしたい。
外国人観光客が誰もいない、小説の舞台となった場所を訪ねてみたい。

「京都に行きたい」
「行けばいいじゃん」
「一人旅がしたい」
「すればいいじゃん」

あれ?
夫婦仲いいのかしらん?
すんなりお許しがでた。
やったーーー。

さて…

「50+フリープラン」を御存じであろうか。
世の中には50歳以上になると、割引になるサービスがある。
自分が割引される年齢だなんて、軽くショックだ。
キングダム2公開のとき、夫婦で映画を見ると1000円/人になるってのがあって、奥様と二人で行ってみた。すぐに出せるように準備をしていた運転免許証を提示するまでもなく、年齢確認さえされず、あっさり、顔パスだった。軽くショックだ。まあ、そうだよな、自分でも老け込んだと思ってはいるさ。

で、旅だ。
JR東海ツアーズに「50+フリープラン」というのがある。
フィフティプラスと読む。
これも50歳以上だと安くなるというやつだ。

「京都に行きたい」
「行けばいいじゃん」
「一人旅がしたい」
「すればいいじゃん」

その会話を聞いていた次男坊が、ささっとiphoneで検索して、しれっとメールをしてくれたのがこのプラン。

【全国旅行支援】50+フリープラン 京都シングル

東京−京都新幹線往復にJRグループのまあまあいいホテル一泊で、
基本代金 22,800円
安い!
そこから、全国旅行支援割引が、-4,560円
安い!!
更にワクチン接種証明で、京都応援クーポン券 -2,000円
実質計16,240円
安い!!!!

新幹線をのぞみにしたり、時間帯によっては追加料金が発生するが、私はヒカリとこだまでよいので、追加料金なしとした。

こんなに安く行けるなんて思わなかった。

旅好きな次男坊は、いかに安く快適にUFJにいくかなど検討に検討を重ね、父親の私がびっくりするような、サウナのある高級ホテルを、びっくりするくらいリーズナブルな価格で探しだし、同級生の男連中と、実際に旅をしたりしている。

さすがだ、次男坊。
ありがとう、次男坊。

俺、本当に、行くわ!

予約をしたのは1月初旬。
ろくにとったことのない有給を一日使って、金曜の朝出発、土曜の夜帰宅。
仕事が落ち着いていそうな3月初旬を予約する。
WBCが始まる前だし。
たまには有給を有意義に使ってみようではないか。

嬉々として、「るるぶ京都編」の最新号を買う。
蛍光ピンクのタイトルに、金閣寺や清水寺の写真。
「今どき旅行の本なんて買う人いるんだ。スマホあるのに」
次男坊がしれっと言う。
「いるわ!!」
電子版ダウンロードや電子クーポンだってついてるし。
…使わないけど。

3月3日、ひな祭りの金曜日、無事有給をとった。
近所のスーパーに行くのとまったく変わらない格好で旅にでる。
黒のColemanのリュックサックには、下着と靴下と折畳み傘、それに本が二冊。
「森見登美彦の京都ぐるぐる案内」
「るるぶ京都編」。

「今どき旅行の本なんて買う人いるんだ。スマホあるのに」

いるわ。
買うだけでなく、持っていくわ。
バスと地下鉄の路線図や、地図の部分は切り離して、別冊に出来るし。

だけど、確かに…
荷物の中で「るるぶ」が一番重かった…

(中編に続く)
中編はこちら


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