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インターン生を含め本音で語り合う場づくりを目指したヤモリの合宿について聞いてみた

企業がオフサイトを実施するための施設であるIsland and office。そこに訪れるメンバーはおもに企業の経営者や社員、VCのメンバーですが、ときにはインターン生や内定者など学生が訪れることもあります。今回はインターン生の合宿参加を率先して行っている株式会社ヤモリがIsland and officeで行った合宿の内容や狙いを、代表取締役の藤澤 正太郎さんに聞きました。

藤澤 正太郎(株式会社ヤモリ 代表取締役)
2011年に三菱商事株式会社に入社。インフラ事業の海外投資案件とアセットマネジメントに従事。南米チリに4年間駐在。その後、NY本社の不動産テックユニコーンであるKnotel IncのJapan GMを務める。東京大学のスタートアップ支援プログラムFoundXと東大IPC 1st Roundに採択。

サマリー

  • 参加団体:株式会社ヤモリ 代表、共同創業者、メンバー、インターン 計6名

  • 実施目的:中長期的なビジョンの共有、インターン生による発表

  • 実施日程:1泊2日

経営陣とメンバー、インターン生が集う合宿

株式会社ヤモリは「不動産の民主化」を掲げ、不動産賃貸業の学習から購入、管理、売却まで不動産オーナーを支援するクラウドサービスの開発を行う会社です。現在メンバーは10名、今回の合宿に参加したメンバーはインターン生を含む6名です。

昨年もインターン生4名を連れて合宿を開催しました。ヤモリでは、インターン生と社員を意識的に区別していません。私たちの事業をおもしろいと思い、能力を発揮してくれるインターン生たちに対し、一緒に過ごす時間や学びといったものを提供したいという想いから、合宿などの場にも積極的に参加してもらうようにしています。

インターン生は会社にさまざまな良い影響を与えてくれます。彼らがフレッシュかつ率直な意見を伝えてくれることで、私たちが得られる発見や学びは多いのです。お金を稼ぐアルバイトという選択肢もある中で、あくまでインターンという形で会社にフルコミットしたいと考えてくれている彼らに対し、私たちはできる限り主体性をもって意見を言える場を提供したいと考えています。

フルコミットするインターン生に全力のフィードバックを

今回の合宿の主な目的は、中長期的な視点で見たビジョンの共有です。足元の事業ではなく、将来的なビジョンについての話は、日ごろの業務内での共有だとメンバーによって情報差が生じてしまいがちです。向こう5~10年でヤモリが見たい景色についてのディスカッションを行うことが、今回の合宿のメインテーマでした。それに加え、合宿内ではインターン生が30分間ずつプレゼンする時間も設けました。これは、実際にインターン生の藤澤美波さんが準備したスライドの一部です。物件配信という新規機能の過去のデータ解析から始まり、それを踏まえたディスカッションポイントまで事前に整理された発表でした。

今回参加したインターン生の上林さんは、すでにヤモリの事業に深く関わっています。上林さんは、「特にスキルがあるわけではいけれど、藤澤さんと働いてみたい」と手を挙げてインターンを始めた経緯があります。

自身がやりたいことを聞いてみると「動画編集に興味がある」とのことだったので、ヤモリのメディア周りについて託すことに。彼はYouTubeに公開する動画の企画や編集を一手に担い、今ではメディア戦略の振り返りや施策効果の分析、他動画チャンネルのリサーチなどに携わっています。

ヤモリでは労働時間にかぎらず成果や自主性を評価することを重んじており、それはポジションや社歴に左右されない基準です。インターン生は時間に換算して週2日程度コミットしてくれていましたが、その主体性に私たちが甘えず、しっかり彼らの出す成果に対して報酬を整えるようにしています。

また、彼らとの関わり方やコミュニケーションで意識していることは、全力のフィードバックを返すことです。インターン生が何かしらアウトプットすると、多くの場合つい褒めてしまうものだと思います。やってくれてありがとう、と。でも本来のインターンの目的を考えれば、議論の落としどころや説明が冗長になっている部分の指摘など、彼らのアウトプットをより良くするためのフィードバックを全力で返すほうが良いと考えています。

一方で、インターン生が頑張ろうとするその姿勢自体は徹底して賞賛します。ここは、全力でフィードバックすることとは切り分けている点ですね。業務上で発生する“雑なボール”を渡して打ち返せる人は、そう多くありません。ですから成果物のクオリティは関係なく、とにかく打ち返すことそのものが重要であるということを伝えられるよう意識しています。

インターン生による合宿での発表は、私たちにとっても学びのあるものです。発表の一例を挙げると、YouTubeを通じた配信によって得られたデータの分析結果の発表がありました。一年間を振り返っての増減の分析は、手間や時間がかかるので、なかなか社内では取り組みません。それを通じた20代の視点から見た改善点や、SNSによるユーザーコミュニティ強化のポイントなどの意見は、私たちではなかなか気付けない部分がたくさんありました。やはり現メンバー同士で議論をしていると、どうしても難しい専門用語や共通意識のようなものを前提にしてしまうことが多く、インターン生が純粋な意見を出してくれることがとてもありがたいと感じています。

じつは今回の合宿についても、インターン生が主体的に動画を編集し、Instagramに投稿してくれました。当日の雰囲気が伝わる動画になっていますので、ぜひ見てみてください。

メンバーの力を引き出す秘訣は「緩急」

合宿全体でディスカッションを成功させるために意識していたのは、集中する時間とそれ以外の時間の緩急をつけることです。

真面目に議論する時間とメンバーで楽しむ時間、両方とも合宿には大切な要素だと考えています。集中力を高めて議論するためには、「ここでしか体験できない」というような特別な感動がそこにあることも重要です。今回の合宿においては、それはIsland and officeの施設そのものだったと思います。すばらしい環境の中で宿泊し、豪華な設備と食材の整ったBBQをする。これらの体験がすべて議論の集中力を高める緩急を演出していました。

私のこうした考え方は、アメリカで体験したオフサイトミーティングの影響を受けています。全員でバスに乗って移動するんですが、その時からすでにお酒を飲んでいる人たちもいて(笑)。現地に到着してからの議論は本当に激しいもので、ネイティブの英語で殴り合いをしているような状況で……正直それについていくだけで必死でしたね。

そんな議論を終えてパーティーの時間になると、さっきまで激しく言い合っていた人同士が、今度はとても楽しそうにお酒を交わしていました。この体験は私にとって衝撃的なものでした。

意見をぶつけあうからこそチームは強くなれる

そのアメリカのオフサイトで、目指していたゴールが達成できていたかと言えば、全くそうではありません。しかし、真剣かつフリースタイルで意見をぶつけ合う場というものがそこにありました。こうした文化が日本の企業に薄いことは、海外のそういった場を体験したからこそ改めて感じるところです。

サッカーを例に挙げると、試合で負けそうなときの日本のチームは、ハーフタイムなどのシーンでつい静まり返ってしまう印象があります。一方、海外の強豪チームはなんとかして勝つために怒鳴り合っている姿も見ますし、監督や選手といった立場を越えて結果を変えようとしていることが多いです。

日本もこういった文化を作らないと、やはりチームは強くなれないのではないかという話を、先日ある著名なサッカー関係者の方と話す機会がありました。私もヤモリを強いチームにしたいからこそ、合宿なり全体ミーティングなり、自主性を発揮できる場を作れるよう意識しています。

ヤモリはまだまだ海外の意見を言い合う文化には程遠いですが、今回の合宿では、BBQ中などの場で本音ベースの語り合いが繰り広げられていたと思います。昨年は私を含め経営陣が一方的にキャリアを活かした仕事のノウハウを語るような時間を長く取ってしまっていたので、そこから比較するととても良い時間を作れたかな、と感じました。

次回に活かせる学びは、経営陣はあまり話しすぎないほうが良いということですね。とはいえ伝えるべきことがある以上、私たちの話す場面は多くなってくるのですが、メンバーが発表する時間や本音で語り合えることに重きを置いたことが良い変化につながりました。

メンバー側が経営陣を突き上げるというか、「そんなこと言ってできてないじゃん」と言いあえるような文化を育てていきたいです。そのためにも、私たちが一方的に話さないことが大切だと感じました。



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