ムシハカセ

生物を研究している研究者です。 専門は昆虫学で野外や研究室で実験などを行っています。 …

ムシハカセ

生物を研究している研究者です。 専門は昆虫学で野外や研究室で実験などを行っています。 面白い研究を紹介したり、そこで研究している変わった人の生態を伝えます。 20代後半です。トリハカセhttps://torizukan.com/

最近の記事

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心臓がなくても再生する生き物

    • 捕食されても脱出する虫と魚

      捕食される動物は命を守るために、さまざまな対策を進化させてきました。 たとえば、目立たない色であったり、走って逃げるための脚などです。しかし、最新の研究により、一度捕食されても様々な方法で、捕食者から脱出する生物がいることがわかってきました。 ■ウナギの脱出 一つ目の例は、ウナギです。ウナギは日本の食文化と密接な関係があり、その名前を身近でよく耳にする魚ですが、実はその生態は多くが謎に包まれています。 しかし、長崎大学の長谷川さんらの研究チームが2021年にbioRx

      • 旅する生き物

        生物が生き残り、子孫を残すためには様々な手段があります。 その1つは、生息範囲を広げ、新しい環境を進出することです。例えば、鳥などの翼を持つ動物は、ライバルのいない環境に飛んでいくことで自由に繁殖することができます。 噴火してできた島などに飛んでいけば、天敵もいなく周りに競争相手もいないので、資源をすべて使うことができるでしょう。 鳥よりも移動能力は低く、植物よりも移動能力が高い昆虫やカタツムリなどの小さな動物は基本的に歩いて移動し、魚は泳いで生息範囲を広げています。そ

        • アリに擬態するクモの悩み事

          動物がほかのモノや生き物に姿を似せることを擬態と言います。 その中でも非常に精巧な擬態の例の一つが、アリに擬態したクモ、『アリグモ』です。アリグモはハエトリグモ科のアリに擬態する徘徊性のクモ類で、日本には6種、世界中で200種以上のアリグモが知られています。 アリはギ酸という毒を持ち、大あごを駆使し、集団で行動するので多くの生物から危険な生物と認識されています。そのためアリに姿を似せることで、アリグモはカマキリなどの捕食者から逃れていると考えられています。 このアリグモ

        心臓がなくても再生する生き物

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          シマシマの意味

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          心臓を失っても再生するウミウシ

          実は、日常生活で自ら体を切断する生き物は数多く知られています。 自分で体の一部を切断する行動は「自切」と呼ばれており、尾や足を犠牲にすることで、利益を得ます。例えば、トカゲはしっぽを自切し、捕食者から逃げきることがよく知られています。他にも自切をおこなう生き物は、イカやタコ、カエルなどが知られています。 近年、驚くべきことに、体の一部ではなく、胴体すべてを自切し、再生させる生物が発見されたというのです。 この発見は2021年、奈良女子大学の博士課程に在籍している三藤さん

          心臓を失っても再生するウミウシ

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          マスカレード

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          シマウマの縞々とパンダの白黒は何のため?

          シマウマはなぜあれほどまでに派手な縞模様をしているのでしょうか。 この疑問が自然科学の分野で議論されるようになってから約150年が経ちましたが、まだ完全な答えは得られていません。 これまでにいくつかの仮説が検証されてきました。それは、捕食者を避けるための隠ぺい色であること、サバンナでの体温調節に役立っていること、シマウマ間のコミュニケーションに使われていることなどです。 そんな中、新たに吸血性の昆虫を避けるためではないのかという説が2019年に米国の科学雑誌「PLOS

          シマウマの縞々とパンダの白黒は何のため?

          哺乳類の色が地味な理由

          多くの鳥や魚、爬虫類、両生類、昆虫は鮮やかな体色をもち、赤や緑、青色などカラフルな種がいます。 しかし、哺乳類は、茶色、赤、黒、黄色などの地味な色しかおらず、限られた色合ばかりに感じます。 これは、哺乳類がフェオメラニン(黄色っぽい)とユーメラニン(黒っぽい)の2種類の色素しか生成できないからです。では、なぜ哺乳類は二種類の色素しか作ることが出来ないのでしょうか? 今回は哺乳類に地味な色が多い進化的理由を2つ紹介します。 ①構造色を獲得していないから 地味な理由の一つ

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          都会のカエルはモテるらしい

          異性の好みは、ヒトによってそれぞれです。 身長の高い人が好きな人もいるし、性格やお金を重視している人もいるでしょう。しかし、カエルは都会で生活するシティボーイがモテるということが、2019年に科学雑誌Nature ecology & evolutionに発表された論文から明らかになりました。 Halfwerk(ハーフワーク)たちの研究グループは、都会と森林の両方に生息するトゥンガラガエルというカエルの1種を対象として、都会のオスと森林のオスのどちらがモテるのかという疑問を

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          イモムシは体を曲げるてうんちに似せる?

          チョウやガの幼虫はイモムシと呼ばれ、生き物好きや小さい子どもたちに人気です。 そして近年、イモムシにフォーカスした企画展やハンドブック図鑑などが出版されており、多様な体色や形のイモムシは一般の人に興味を持たれてきました。そして生き物の研究者もおなじように、赤や黄色などの奇抜な体色や木の葉に非常によく似た体色に魅了され、その模様や色彩の持つ意味を調べてきました。 ◆イモムシの隠蔽色 今回は多様なイモムシの色のなかでも、木の幹や地面などによく似た体色をすることで、捕食者から見

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          青いバラ問題

          自然界になぜ青いバラが存在しないか? 青いバラと聞くと、多くの人がその美しい姿を想像すると思います。しかし、花屋を訪れて実際に青いバラを見たことのある人は少ないはずです。バラを掛け合わせて様々な色を作り出すブリーダーは、青いバラは作成することのできないものだと考えていました。現在知られている青いバラのほとんどは、白い花に青い染料を吸わせることで作られています。つまり市販されている青いバラのほぼ全ては、白いバラなのです。ここで疑問が浮かんできます。 なぜ、青いバラは自然界

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