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哺乳類の色が地味な理由

多くの鳥や魚、爬虫類、両生類、昆虫は鮮やかな体色をもち、赤や緑、青色などカラフルな種がいます。

しかし、哺乳類は、茶色、赤、黒、黄色などの地味な色しかおらず、限られた色合ばかりに感じます。

これは、哺乳類がフェオメラニン(黄色っぽい)とユーメラニン(黒っぽい)の2種類の色素しか生成できないからです。では、なぜ哺乳類は二種類の色素しか作ることが出来ないのでしょうか?

今回は哺乳類に地味な色が多い進化的理由を2つ紹介します。

①構造色を獲得していないから
地味な理由の一つは、構造色で色を発色していないためです。

構造色とは自身に色があるわけではなく、光の干渉や回折という物理現象を駆使して、発色される色です。身近なところでは、シャボン玉やCDの裏側などの虹色光沢が構造色として知られています。動物が発色する構造色で有名な例は、モルフォチョウの羽やクジャクの羽、ネオンテトラの鱗などがあげられます。

2011年科学雑誌Behavioral Ecologyに掲載されたストッタードとプラムの研究では、111種の鳥類について羽の色を測定し体色の傾向を調べました。その結果、色素のみで発色している鳥類より、構造色をもっている鳥類の方が鮮やかな種が多いことを明らかにしました。

しかし、哺乳類で構造色を持っている種は驚くほど少ないです(例外はマンドリルやサバンナモンキーなどです)。哺乳類が構造色をもたない理由の一つとして、体が毛で覆われているためであるといわれています。毛は羽に比べて、その構造が単純で一本一本に構造色を発色するような複雑な構造を作ることが難しく、進化的に獲得しにくいと考えられています。


地味な色が進化した(適応的だった)
地味な理由の2つ目は、祖先が夜行性であったため地味な色でもよかった、というものです。

哺乳類の祖先は恐竜がいた時代、外敵から逃れるために夜行性であったと考えられています。そして、夜間に活動する場合、色よりも明るさの違いを認識するほうが餌を探したり外的から逃げる際に効率的と言われています。そのため、哺乳類は色の情報ではなく、明るさと匂い(フェロモン)の情報をもとにメスなどの同種とコミュニケーションを行っています。つまり、鳥のように体をカラフルにするのではなく、匂い(フェロモン)を複雑にしていったのです。

今回は哺乳類が地味な色をしている理由を2つ紹介しました。
おそらく、2つの理由はどちらも重要で、組み合わさって今の哺乳類の体色を決めています。ぜひ、動物園などに行く際は動物の色にも注目してみてください。

次回のnoteでは、シマウマとパンダの話を書こうと思います。

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以下、引用文献
Stoddard, M. C., & Prum, R. O. (2011). How colorful are birds? Evolution of the avian plumage color gamut. Behavioral Ecology, 22(5), 1042-1052.

『色が違う?』視覚以上の世界…どんなふうに見えているのか?


*マンドリルやサバンナモンキーの股間の青色はチンダル現象(レイリー散乱)という構造色で、空が青い理由と同じです。

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