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個人図書館

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連載小説「個人図書館」です。
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個人図書館 5

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「美奈子さんのアパートにはどんな本があるの?」
 橋本弥生さんの家で珈琲を飲みながら、私はそんな質問をしました。

 中川美奈子さんは「柄澤さんや弥生の所ほどたくさんの本は無いし、私の持っている本は偏ってるから」と、小さな声で答えました。
 自信家の美奈子さんらしくない答えだったのです。

 「偏ってるって、どんなに?」
 私は興味があったので、さらなる質問を浴びせました。
 美奈子さんは困

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個人図書館 4

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 私の友達の木原康男は、とても迷惑そうでした。
 そりゃあそうです。
 彼とはまったく人種の違う文学少女(?)が、彼のアパートに押し寄せたのですから。

 私と橋本弥生さんと中川美奈子さんは、いつものようにドーナッツとシュークリームを手土産に、康男のアパートを訪れたのです。これが個人図書館読書倶楽部の作法なのです。
 私たちは康男の部屋にずらりと並んだ漫画の量に騒然となりました。

 「す、すごい

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個人図書館

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 それが迷惑だということは判っているんです。
 だけど私にはそれがとても楽しくて、すっかりやめられなくなってしまったのです。

 きっかけは、友達に頼まれて橋本弥生さんの家を訪ねたことでした。
 私は頼まれたものを弥生さんに渡したら直ぐに帰るつもりでした。
 だけど弥生さんが「よかったらあがって珈琲でも飲んで行きませんか?」と言ってくれたことと、部屋の中からおいしそうな珈琲の香りが漂ってきたことで

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個人図書館 2

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 私はいつものように橋本弥生さんの家を訪問しました。
 弥生さんはとても良い人です。私みたいなずうずうしい人をいつでも笑顔で向かいいれてくれるのですから。
 私は弥生さんにドーナッツを手渡しました。そしていつものようにダイニング・キッチンに行くと、そこには見知らぬ女性が座っていました。その女性は読んでいた本から頭を上げて私を見ると、軽く会釈をしました。

「私の友達で、中川美奈子さん。あなたの話を

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個人図書館 3

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 私のアパートの部屋に、弥生さんと美奈子さんが来ました。
 私の部屋を誰かが訪れることなんて滅多に無いことですし、それが一度にニ人もの人が訪れるだなんて、なんだかおかしなことになってしまったものだと思うのです。

 私の部屋にある本棚を眺めて、二人はとても満足した様子でした。私の本棚に並ぶ本は、文学と音楽とアートです。
 文学に関しては、ここ十年くらいの芥川賞受賞作、候補作などがそろっています。

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