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3【ミモザ】

2月の中ごろ、まだ肌寒い日。
自分のためにミモザを買った。

「今シーズン初めてのミモザです」と店の人が教えてくれた。
お花に詳しくないので、花屋ではいつも買うのをためらってしまうけれど思いきって
「このひと枝を短くできますか?」
と聞いたら、長い枝をパチンパチンと切って小さく束ねてくれた。

もっと花がたくさんついている枝もあったのだけれど、
私にとってはミモザの葉のグリーンがあまりにも美しく
花は少しだけついているものを選んでもらった。

ミモザの、たわわに咲く花の黄色は本当に美しいけれど、
自分が選んで手元に置くものは、このくらいがいい。

電車に乗って帰る道すがら、
まだ分厚いコートを着ている人に紛れて、
ミモザの小さな花束を持っていることがとても嬉しかった。
誰に見せるわけでもない。
けれど今は自分のために咲いてくれている、可憐で強かなミモザがとても愛おしかった。

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この花屋の雰囲気が好きだ。
お世話になった人への手土産に椿を一枝買ったとき、
「大げさに包まなくていいので、小さく・・・」
という私の無茶な要望をさっと汲み取り
「あまりたいそれた贈り物という感じにしたくないんですね」
と、普通はお花のラッピングには使わないような白い硬い質感の紙をクシャリとにぎり、
蕾のついた一枝をさっとまとめてくれた。

近くに行くと必ず立ち寄りたくなる花屋。

2019.2.12@徂徠

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