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つくる考2 FLOAT LEMON TEA

大阪・西九条のThe Blend Inn。

空間
建築

コンセプト

etc
いろんなものが三位一体となって素敵な宿だなと思う。

ここが素敵ですよ、という話はまたの機会に譲るとして先日インスタグラムで見かけたブレンドインの投稿

レモンティーと恋のお話
/
光浦醸造のレモンティーを飲むと
さわやかな気持ちになる。
と同時に
そのまっすぐな酸味や苦味が
自分の正直な気持ちに行き当たる
きっかけになったりする。
明日
5/20の21:00より
World Tea Festivalの出店を終えた
光浦健太郎さんを
The Blend Innにお招きして
レモンティーと恋をお題に
1時間ほどトークしていただくことと
なりました。
私もレモンと恋のイメージを持って
トークに参加します。
まっすぐなレモンの風味に触れながら
The Blend Innのロビーにて
レモンティーと恋のお話を聞く夜。

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行ってきました。

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光浦醸造さんのレモンティーといえばこちら

私も3、4年前に、中川政七商店で初めて認識した。
中には小分けのパックが7ピース入っており、それぞれに紅茶のパックと、ドライレモンが入っている。
そこにお湯を注いでレモンティーを楽しむというアイテム。

中のレモンがハート形になっているものも販売されている。
昨今のSNSブームの波に乗り、入手困難との情報も。

※レモンハート画像は光浦醸造さんのオンラインショップより。
リンクをご参照ください。

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このお茶会の内容をつぶさにレポートするつもりではないので、ダイジェスト。

・光浦醸造は山口県の老舗醸造会社。ものを作る「メーカー」である。長年の主力は味噌と醤油。それも、一升瓶や何キロ単位で売るような卸の仕事。味噌や醤油は、文化として円熟しているので革新や発展が難しい。

・レモンティーを作るようになったは偶然。
大規模乾燥機を知人の紹介で見たこと。

・物が生まれた時に、新しい作法が生まれる。
乾燥レモンのレモンティーから、新しい文化を作っていけたら面白いんじゃないか?
食品を作ることの面白さは、文化を作ることでもある。

・デザインは、レモンティーを生み出した光浦健太郎さん自ら行っているけれど、
奥さんの鶴の一言&審美眼によるアドバイスが随所にある。

・恋の話など

驚いたのは、パッケージデザインを光浦さん自身でされているということ。
唐草の枠線は、光浦醸造さんで大正時代からストックしているパッケージの図案集から引用しているのだそう。
テクニック的にひどく複雑なことをしているわけではないのだろうけれど、そこが逆に、虚栄のない親しみやすさ・初々しさを感じさせる。
その控えめな佇まいはお店に並んでいて、手に取りやすい。
ボコボコとした箱の手触り、紙の質感にまでこだわっているのがわかる。

愛情込めて作った商品のパッケージを、第三者であるデザイナーに任せて納得いかないものになるのであれば、
自分の手で、商品に込めた思いを汲みながらパッケージまで作りたいのだそう。
(そこにはこのレモンティーの商品化に向け、デザイナーと折り合いがつかない状況になんども直面しているからだとか。「受ける側・頼む側のデザインリテラシー」という言葉はなんだか耳が痛かった)

言葉の端々から感じるのは、当代の光浦さんが生粋の「ものを作る人」であるということ。
それはつまり、光浦さんの言葉を借りるのであれば、小売業や代理店ではなく自分たちはあくまで「メーカー」であるということ。
「作ること」「作ることによって生まれるもの」に、真摯に向き合っている。

メーカーから消費者まで、打算なくまっすぐに向いた矢印を感じる。
このひたむきな矢印は、恋にも似ていると思う。

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私は以前、お世話になった人への贈り物にこのレモンティーを選んだことがある。
お世話になった人、と言っても仕事の関係で付き合いは数ヶ月。
好みを熟知しているわけではない。

「プレゼントというほど大げさなものでなく、
差し入れというほど雑ではない。」
そんなものを探していた折に、このレモンティーと出会った。

前述していた親しみやすいパッケージはさることながら、
「瀬戸内のレモン」
「本物のドライレモンが入っている」
「宮崎県五ヶ瀬町の『宮崎茶房』の紅茶」
こんなところもポイントになった。

つまるところ、私の感謝の気持ちをモノに託そうと思った時、
これらのポイントはちょうどよく私の気持ちを代弁してくれたのだ。
ささやかで、ささいな相手を思う気持ちだ。
何も相手を唸らせるような派手なことが必要なわけではない。

受け取る相手からすれば、私が良いと思ったポイントはなんて全く気にかけないかもしれない。
でも、それでいい。
小さな感謝や秘めた祝福の祈りはそのくらいがいい。

長い人生だ。
そのうちお互いに忘れてしまうような出会い、けれど今は、それそのものに感謝してモノを贈る、、、
そういう『贈り物』だって、
生きていくうちにはたくさん、数えきれぬほど存在するのだ。

この紅茶だったからこそ、贈り物に選べた。
選んだ時にしっくりきたことが嬉しかったから、
あれから数年経ってもいまだに印象深く覚えている。

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こんなような体験談を会が終わった後に光浦さん本人に打ち明けた。
「わたしはお世話になった人に、ハート形のレモンティーをプレゼントしました。
ハートの形というのも良かった」云々。
珍しくいい感想を述べられたのではないか、わたし。

でも後々考えたら、普通の丸いレモンの紅茶だった気がしてならない。
ああ、わたしが贈ったのは絶対に丸いレモンの紅茶だ。
ピュアなハートのレモンティーは、その時製品化されていなかったはずだ。
思いがけず話を感動方面に盛ってしまったようだ。
恥ずかしい、心の中で赤面する。

数日経った今でも、
レモンの皮をかじったように、ちょっぴり口の中がほろ苦い。

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覚書。
単純に「話題メーカーの戦略」「あのレモンティーが生まれた秘訣」みたいなタイトルのセミナーのような集まりじゃなくて良かったなと思う。
こういう含みのあるやわらかさの中からでしか感じ得ないことや、
生まれない場の空気があると思う。
そもそも「レモンティーと恋」の話をしているのだ、ということは、気持ちの面でもいいクッションになっていたと思う。
さまざまな角度からみて、発見することが多かった。

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