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10【レインシューズ】

基本的にどこに行くにでも、革靴を愛用している。
定期的に汚れを落として、磨いて、メンテナンスして・・・という工程も含め、革靴が好きだ。

ハタチそこそこの頃、何も考えずに革靴を履いて出かけ、大雨で水没させた。
今の自分なら、思い出して青くなるような事案だけれど、その時はレザークラフトを生業とする知人にひどく呆れられた。
当時住んでいたのが 雨の街・金沢 ということもあり、私は真剣にレインシューズを探す必要があった。

最初に買ったのは、”ロングレインブーツ”。
黒のゴム製で、ゆったりとしたサイズ感。
ふくらはぎの上、膝の下までしっかり覆ってくれる。
どこに行くにも安心なタイプだ。
しかし、今思うとふくらはぎや足首に誰にでも合うようなゆったりとしたボリュームのある長靴。
完全に靴に履かれていた。
脱ぎ履きも大変だった。
座敷での食事会の時には、レインブーツを脱ぐ私の後ろがつっかえた。

そもそも、ロングブーツタイプの長靴はちょっとした雨を防ぐには過剰だ。
ましてや、「午後から雨が降る、かもしれません」なんて日の朝に履いて出かけるには暑苦しい。
結局あまり良い思い出もないまま、ゴムの劣化でお別れしてしまった。

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次に出会ったのはフランスのレインシューズ、プラスチカナ。
リサイクル可能な素材で作られており、中にはヘンプの繊維が混ぜ込まれている。
見た目もコンセプトもとびっきりだった。
大のお気に入りのレインシューズとして、数年間履き込んだ。
(当時、理想の形を探し求めてかなりコアなルートから入手したため、愛用していた形はもう画像では見つけられない、、、)

一つ難点があるとすれば、色味だ。
独特のベージュというか、土色は、洋服のコーディネートとは合わせにくいところもある。
けれど、雨の日にしか使わないものだ。
そういうものと思えば、些細な色味の違いも「そんなもんだ」と愛おしく思えてくる。
しかし、形あるもの。
別れはいつかやってくる。

靴の一番最後方。
履くときに一番負担のかかるアキレス腱からかかとの部分が破れてきてしまった。
とはいえ数年履き込んでいるのだ。
これはモノとしての天寿を全うしているとも言える。

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そうして、次のレインシューズを探し始めたわけだけれども、
出会いは突然だった。
本を探しに入った書店の片隅、雑貨コーナー。

画像1

イタリア製、HENRY&HENRYのレインシューズ。

一目見た瞬間、これだと思った。
今の私が探していたのはこのレインシューズだ。
クラシカルな雰囲気にメダリオン(パンチング)の装飾が美しい。
黒色のラバー製レインシューズ。

画像2


よく見ると、側面にもパンチングがある。
つまり、通気性が意識されている。
正直、この穴がどこまで機能的に有用なのかはわからない。
しかし、「降るのか、降らないのか」そんな局面で家を出るしかないときには、
心理的には大違いだ。

”雨の日だから、雨靴を装備しているのだ”
そういう楽しみ方もあるだろう。
それこそ小学生の頃なんか、赤や黄色のこれぞ長靴という雨靴を履いて喜んで水たまりに飛び込んで行ったのだ。
でも、私だって大人になった。
極力、普段と同じテイストで、顔色を変えずさらりと雨をかわしたいのだ。
守るべき部分を守って、なるべく不快な思いもせずに。

画像3


そんなわけで、HENRY&HENRYのレインシューズは私の元へとやってきた。
難点があるとすれば、底の硬さかもしれない。
一日中歩いていると、少し足の裏が疲れてくる。
でもそれも過剰な要求だろうと思う。

秋の長雨の季節も、これがあれば怖くない。
いわし雲とともに訪れる風のにおい。
次の季節を心待ちにしながら、私は今日も過ごしている。


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