痛み止め~サタデー・ナイト・サタナイトショー
テレビを見ながらレイは指で脇腹をなぞった。爪に引っ掛かる凹凸は切り立った崖のように感じられる。腹腔鏡手術によって切除された虫垂は最早ないにも関わらず、臓腑の中で領有権を主張している。しばらくすると、虫垂の主張は痛みという声に変わり、死骸を分解するために地中から派遣された地虫のように這い回りはじめた。泣き喚きながら床に転がり、ありとあらゆる呪詛を吐くことをしないのは一四歳のレイが強靭な精神を備えているからではなく、両親が留守をしている家でさらに惨めな気持ちになりたくないから。