石積み学校

農地の石積み技術を学びながら修復する学校です。https://sites.google…

石積み学校

農地の石積み技術を学びながら修復する学校です。https://sites.google.com/view/ishizumischool/

マガジン

  • 石積み雑記

    石積みの技術や取り巻く環境について考えたことです。

  • イタリアの石積みと農

    イタリアの石積みと農業についての雑記です。

  • Canova field school 2019

    イタリア北部のアルプスのふもとで開催したフィールドスクールの日記です。石を積んだり、過疎地の取り組みを見たりしました。

  • 石積み修復の記憶

    今まで石積み学校で積み直した石積みを振り返ります。

  • 生業・食べもの

    石積みを修復したときに見聞きした過去・現在の生業や食べものの話です。

最近の記事

韓国 チェジュ島の石積み

韓国のチェジュ島で、石積み文化の普及と継承活動をしているチョウさん(@dolbitna_art_school_jeju)にお誘いいただいて石積みのワークショップに参加しました。 済州島は家の敷地の境界や防風のための畑の境界など至るところに石積みが積まれていてまさに石積みの島。上空から見ると丸い敷地の畑とその境界に積まれた石積みが広がっています。地元の石工さんによると済州島の大切なものは3つ。風と石積みと女性(亡くなる海女さんが多かったため)。綺麗な空気や豊かな自然環境、美味

    • それぞれの合理性

      お城の石垣の技術力は高く、農地の技術力は低い、という言い方があるがそのような言い方には違和感がある。農地の石積みは、農の営みの一部として行われてきたものであり、省力化することが最も大事なことだった。できるだけたくさんの農作物をつくる必要があり、生活に必要な道具や衣服、草鞋、食事を作らないといけないという状況で、直接的に今の生活に影響しない石積みの新設や修復にかけられる手間暇はかなり少なかったと思われる。その中で最も重視されたのは、いかに時間と人手をかけずに石積みを築くかという

      • 石垣は雨で崩壊するか、地震で崩壊するか

        いろいろなところで、農地の石垣が崩れた原因を聞くと、大雨が降った後に崩れたという人がほとんどだが、地震で崩れたという話は聞いたことがない。一方でお城や石橋の石垣が地震で崩れたという話は話題性が高いこともあり、よく聞く。そのせいか石積み学校のワークショップに行くと、参加者の方に「やはり石積みは地震で崩れるのですか。」と聞かれることが多いので「雨で崩れることが多いので石積みを直すことも大切ですが、雨水がよく流れるように排水路をしっかりつくることも同じくらい大切です。」と答えている

        • 韓国 青山島(チョンサンド)の石積み

          石積みを学びにチョンサンドに来ました。 釜山に到着し、バスに5時間乗りワンドに到着。 翌日の朝のフェリーでチョンサンドへ向かった。 島内は風が強いため石積みは家の防風垣や段畑の擁壁として積まれている。 島内はなだらかな山が連なっていて水が少ないため湧き水が得られやすい中腹部から下にかけて農地が広がっている。 島の石積み仕事を担っている石積みの師匠の仕事について行った。師匠達は連日仕事がつまっていて、毎日違う場所で石を積んでいる。なのでとにかく早く積むことが大切なのだとか

        韓国 チェジュ島の石積み

        マガジン

        • 石積み雑記
          8本
        • イタリアの石積みと農
          2本
        • Canova field school 2019
          4本
        • 石積み修復の記憶
          1本
        • 生業・食べもの
          4本
        • 石積みと道具
          2本

        記事

          ヴェルナッツァの農業や石積みなど

          ヴェルナッツァというイタリア北部沿岸の小さな町で石積みを習った。ヴェルナッツァは人口約900人で(地元の人によると実際には200人くらいだそうだが)海に面した岩盤の上に立っている要塞都市だ。 千年以上前から北アフリカなどからくるサラセンの海賊の襲来に備えるための防衛拠点であり、その後はジェノバ共和国がリグーリアを征服する際の重要な拠点となっていた。海賊の襲来はかなり脅威であったようで、この近辺では各町から一月に30人を供出し、見張りの塔で24時間監視していたらしい。恐ろしい

          ヴェルナッツァの農業や石積みなど

          農業の大切さ。実践の大切さ。

          フィールドスクール4日目。今日は朝から晩まで歩き回り、いろいろな方から話を聞いた。熱のこもったわくわくするような話をたくさん聞き、エネルギーをたくさんもらった。頭がはち切れるほどの話を聞いたけど、共通する言葉がたくさんあった。特に地域の環境や文化を守るために農業が大切だということ。そして、工業化が進んだという社会的な背景があって山村が過疎化していったということ。そういう大きな時代の流れで失われていったという認識があるからこそ、自分たちの大切な環境や文化を守ろうという意識と確信

          農業の大切さ。実践の大切さ。

          石を積み始め、パーティに行く。

          今日はマウリツィオが住んでいるGhescという村で石を積み始めた。この集落にはマウリツィオの家族しか住んでいない。近くの集落も4人しか住んでおらず、associazione canovaとマウリツィオが廃屋を何軒か購入し、修復を進めている。ほとんど一人で作業しているそうだ。 Ghescに行くには車を300mほど離れた駐車場に停めて歩いて向かう。 今回積むところは元々石積みがなかったところだが、農業をするための平地をつくるために石を積んでいく。いわば生業をつくるための作

          石を積み始め、パーティに行く。

          石造りの建物と伝統の再評価。

          今日はassocionaize canovaが修復に携わった集落を案内していただいた後、石積みを積む準備をした。そのときに聞いた話のメモ。 ・製粉機 昔は村に一つ、共用の製粉機があった。この水車小屋は地元の職人や大学生と一緒にcanovaが修復したそう。村には他に共用のオーブンやチーズをつくる部屋もある。 ・サリーチェ 柳の一種でぶどうを棚に縛るために使っている。今も使われている。 ・石造りの建物の歴史と技術 石積みに使われている技術や時代は資料が残っていればある

          石造りの建物と伝統の再評価。

          Canova field school 2019について

          今年もイタリアのドモドッソラで石積みのフィールドスクールを開催することができました。安くない参加費を払い、貴重な時間を割いて参加してくれた学生の皆、ありがとうございます。 この取り組みは一昨年から始まりました。2016年にterraced landscapeという棚田・段畑の国際学会に参加したときのセッションの一つに「空石積み」があり、エクスカーションで空石積みの技術継承や活用をしている地域を案内していただきました。そのときにassociazione canovaのグループ

          Canova field school 2019について

          わさびと石積み 其の一

          2017年から、東京の檜原村にあるわさび田を修復している。元々地元の方がお小遣い稼ぎのために育てていたわさび田を地域おこし協力隊の細貝さんが借り受けてわさびを育てようとしているところだ。 車を停めて45分ほど山を登った川の上流部にわさび田の跡が残っていた。しばらく放置されていたために杉の丸太が流れ、土と石が転がっている。 わさびは根から成長を抑える成分を出すため、常に水が流れる小石の畑でなければツーンと辛くて美味しくならない。十分な大きさに育つのに2年ほどかかるし、鹿に若い芽

          わさびと石積み 其の一

          伝統的な生活は幻想

          昔からある集落の姿は昔からそのままあるわけではなく、時代の変化とともに耕作物が変わっていった。耕作物は食料を得るための穀物から桑やタバコなどの換金作物になり、すだちやミカン、梅などの果樹になり、最終的には自分達で食べるための畑になった。 石積みを修復しているところは過疎化している地域が多い。近くの家は空き家になっていたり集落に一世帯しかいないというところもある。徳島県は山奥の斜面にある集落が多い。大きなスーパーマーケットに行くのに遠ければ1時間くらいかかる。勤め先の会社も遠

          伝統的な生活は幻想

          農地の石積み修復に求められること

          農地の石積みを直すときに、「空石積みで直したい」と伝えると、大体85歳以上の方は快諾してくださる方が多い。修復を手伝ったことがある人が多いからだ。ところがそれ以下の年代の方は石積みは難しいのでコンクリートの裏ゴメを入れるか専門の業者に頼んだほうがよいという方が多い。その年齢の境目は約60年前に公共工事で空石積みの工法が採用されなくなった時期と一致する。石積みは集落の中で名人と呼ばれる人とそのテゴ(手伝い)数人で作業することが多かったらしい。田舎では職をつくるための公共工事が多

          農地の石積み修復に求められること

          石積みに対する心構え

          石積みは筋トレに似ている。重いものを上げ下げし、場合によってはベンチプレスのように力を入れて石を転がす。 身体を上手に使えるようになると太ももの裏と背筋が鍛えられる。肘や腰を痛めないようにするにはできるだけ前かがみにならないように身体に石をくっつけて作業するのがコツだ。 身体を動かし、頭も使う作業はスポーツと同じようにとても気持ちがよい。可能な限り早く、疲れないように、効率的に身体を動かす。何人かで作業するときは声を掛け合い、自分が知っている知識も伝えチームとしての効率もあげ

          石積みに対する心構え

          石積み修復を通じた社員研修について

          石積みの修復をしごととするために、社員研修をもっと開催していきたいと考えています。興味のある企業の方がいらっしゃいましたらぜひご連絡ください! 石積みの修復を通じた社員研修ねらいと効果最近の若者には下のような傾向が見られます。 ・言われたことしかやらない ・簡単なことでも人にお願いすることができない ・すぐにあきらめる ・自分は何でもできるという自信がありすぎる そこで下の4つをテーマにして研修を進めていきます。 ・チームワークの体感  →チームで協力し合い、

          石積み修復を通じた社員研修について

          農具と野鍛冶 其の一

          農具は種類が豊富だ。土をほぐし、堀りおこし、畝をつくり、下に流れた土を上にあげる作業それぞれに道具がある。土質、傾斜、使い手の身体によっても微妙に形や材料が異なる。このように用途や使う人によってカスタマイズされる道具は野鍛冶屋さんにつくってもらっていた。使いやすさによって農家の生活が左右されると言われるほど道具は大切だったので、野鍛冶の役割はとても大きかったという。それだけ重宝されていたものだから、野鍛冶は儲かる仕事だった。農家の1日仕事が大工の朝飯前。大工の1日仕事が桶屋の

          農具と野鍛冶 其の一

          石積みがなぜ崩れるか 石の積み方

          擁壁の空石積みが崩れる原因の多くは背後の土砂が押し出すことだと考えられるが、それを引き起こすのは積み方の悪さだ。石工さんの間では「一ぐり、二石、三に積み」という言い回しが伝わっていた。つまり石積みで一番大切なことは、とにかくぐり石をしっかり詰めること。その次に石の形や性質。積み方の技術は最後に求められるということだ。 ぐり石 ぐり石は栗石と書くこともある。ぐり石は石積みの背後の土の中の水を流れやすくし、積み石を動かないように固定する。ぐり石を入れる幅が広ければ広いほど土圧

          石積みがなぜ崩れるか 石の積み方