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それぞれの合理性

お城の石垣の技術力は高く、農地の技術力は低い、という言い方があるがそのような言い方には違和感がある。農地の石積みは、農の営みの一部として行われてきたものであり、省力化することが最も大事なことだった。できるだけたくさんの農作物をつくる必要があり、生活に必要な道具や衣服、草鞋、食事を作らないといけないという状況で、直接的に今の生活に影響しない石積みの新設や修復にかけられる手間暇はかなり少なかったと思われる。その中で最も重視されたのは、いかに時間と人手をかけずに石積みを築くかということであり、場合によっては崩れる可能性が高いと分かっていても石積みを築いたり、緻密な石積みを築く技術力があったとしてもそこに労力を投入せず、ラフに早く築くことを優先していたと考えられる。整形しない石を使った石積みは見かけは荒々しくラフだが、労力が少なく合理的である。一方でお城の石垣や家の下の石垣はそれなりにお金と時間をかけてつくられているので、緻密に、それなりに良い石を使い、グリ石も豊富に使われている。どちらが上という話ではなく、単にそれぞれの状況に合わせた合理性が表れているという話だと思う。

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