がん遺伝子パネル検査ってなに?
2019年にがん遺伝子パネル検査が保険収載され、3年が経ちました。しかし、多くの方にとっては、まだなじみの少ない検査ではないでしょうか。研修医Rと一緒にがん遺伝子パネル検査について学んでみましょう。
がん遺伝子パネル検査とは、複数のがん関連遺伝子を一度に調べる検査
研修医R(以下R):T先生、昨日入院した乳がん患者さんが、次の治療について心配していました。
指導医T(以下T):実は、あの方は標準治療を全部終えてしまったんだよ。だから、次におすすめできる治療がないんだ。
R:そんな。臓器機能も保たれていて、治療をまだおこなえる状態なのに……。
T:そうだね。だから、がん遺伝子パネル検査を提案しようと思っているんだ。
R:がん遺伝子パネル検査?
T:がん遺伝子パネル検査とは、がんに関わる遺伝子を、同時に複数個調べる検査のことだよ[1]。特有の遺伝子変異があれば、その遺伝子変異に対して効果のある治療がみつかるかもしれないんだ。
保険適応は標準治療後の固形がんと標準治療がない固形がん
R:がんの遺伝子を調べるということは、がんの組織を検査に出すんですか?
T:そうだよ。保険収載されているがん遺伝子パネル検査には「FoundationOne® CDxがんゲノムプロファイル」「OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム」があるんだ。生検や手術などで採取したがんの組織を提出するんだよ[1,2,3]。
R:検査に必要な組織がない方はどうするんですか?
T:最近、血液を用いて検査する「FoundationOne® Liquid CDxがんゲノムプロファイル」も保険適応になったんだよ。血液中に漏れ出ているがん由来のDNAを調べるんだ[4]。
R:なるほど。
T:各検査の大きな違いは、検査の対象となる遺伝子の種類や数だね。「OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム」は、がん細胞と正常細胞の遺伝子を比較するマッチドペアという検査法を使っていることも違う点だよ[2,3]。
R:がん遺伝子パネル検査は誰でも受けられるんですか?
T:保険適応は、局所進行または転移があり、標準治療を終えた固形がんの方と、標準治療がない固形がんの方だね。検査施行後に化学療法をおこなえる全身状態、臓器状態を保っていることも要件とされているよ[1]。
R:がんのことを知るために、もっと早く検査すればいい気もするんですが......。
T:がん遺伝子パネル検査をどのタイミングでおこなえば予後が改善するかはまだわかっていないんだ。適正な検査の時期は検討課題とされているよ[1]。
参考文献:[1-4]
エキスパートパネルでは結果がどのような意味を持つのか話し合う
R:遺伝子変異がわかっても、どの治療がいいのか自分では決められないかもしれません。
T:大丈夫。検査で得られた遺伝子変異の情報、その遺伝子変異に対する治療薬の候補、治験情報などがレポートになって返ってくるからね。さらに、エキスパートパネルで結果を相談するんだ。
R:エキスパートパネルですか?
T:エキスパートパネルは、遺伝子変異が患者さんにとってどのような臨床的意義を持つのか話し合う会議なんだ。がんや遺伝子検査の専門家で構成されているよ[1]。もちろん主治医もエキスパートパネルに参加して、患者さんの状況を説明しないとね。
検査が治療に結びつく可能性は約10%
R:なるほど。がん遺伝子パネル検査をおこなえば、きっと次の治療法が見つかりますね!
T:残念だけれど治療が必ずみつかるとは言えないんだ。がんに遺伝子変異がみつかる可能性は約30から50%。治療に結びつく可能性は約10%と報告されているんだ[1]。さらに、遺伝子変異に効果のある薬が、承認された治療薬ではなかった場合、患者申出療養や治験への参加などが必要になるんだ。
R:治験となると、遠方の病院へ通院する必要があったり、海外でしかおこなわれていなくて参加できなかったりということがありそうですね。
T:そうなんだ。だから、治療に結びつく可能性は、地域や国の状況にも左右されると言われているよ。
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