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オオカミ少年のもう一つの教訓

先日、「日本列島上空をミサイルが通過」とJアラートが発令された。
一回だけでなく二度も。
日本列島に届かないものに至ってはもう数えたくもありません。
もはやミサイル発射のニュースは珍しくないのが現状です。

ふとイソップ寓話の『嘘をつく子供』を思い出しました。
日本では『オオカミ少年』の方が浸透している物語。

 ある村に、ヒツジ飼いの男の子がいました。
 来る日も来る日も、仕事はヒツジの番ばかり。
 男の子はあきあきしてしまい、ちょっといたずらをしたくなりました。
 そこで男の子は、とつぜん大声をあげました。
「たいへんだ! オオカミだ。オオカミだ」
 村人がおどろいて、かけつけてきました。
 それを見て、男の子は大笑い。
 何日かして、男の子はまた大声をあげました。
「たいへんだ! オオカミだ。オオカミだ」
 村人は、こんども飛び出してきました。
 男の子はそれを見て、またもや大笑い。
 ところがある日、本当にオオカミがやってきて、ヒツジの群をおそいました。
 男の子はあわてて、叫び声をあげました。
「オオカミが来た! オオカミが来た! 本当にオオカミが来たんだよ!」
 けれども村人は、知らんぷりです。
 なんどもうそをいう男の子を、だれも信じようとはしなかったのです。
 かわいそうに、男の子のヒツジは、オオカミにみんな食べられてしまいました。

http://hukumusume.com/douwa/betu/aesop/06/19.htm

この話から、「誤報を繰り返すことによって信頼度の低下を引き起こし人に信じてもらえなくなること」を「オオカミ少年効果」と言うそうです。

日本列島上空を通過したミサイル、日本海に着弾するミサイル、両方とも今のところ被害は出ていません。
実害がないのに大げさなと思う人もいるでしょう。
本当に必要な時にだけしてくれと思う人もいるでしょう。
ならばJアラートやニュースは『オオカミ少年』?

もちろんそんなことはありません。
ミサイルが発射されたのは誤報ではないですし、結果的に何事もなかっただけで不測の事態が起こる確率もゼロではなかった。

『オオカミ少年』の教訓は「嘘をつき続けると肝心な時に誰からも信じてもらえなくなる」ということが一般的ですが、もう一つメッセージが隠されていると思います。

それは「何度も肩透かしをくらう事で危機感が薄れてしまう」ということです。
『オオカミ少年』の話で言うと、たとえヒツジ飼いの少年が何度嘘をつこうとも村人たちはオオカミに対する警戒を解いてはいけなかった。
結果的に被害は少年のヒツジと少年自身だけで済みましたが、もしかしたら他のヒツジ、さらには村人たちにも被害が及んでいた可能性も十分にあったからです。

ミサイルも同様です。
日本海に頻繁に打ち込まれるミサイル。
たまに日本列島上空を通過するミサイル。
最初は身構え警戒しますが、何度も繰り返されれば日常となってしまい危機感は薄れていく……。

この状況が続けば市民は「またか」と聞き流し、警戒監視を行ってる人たちも「またか」と油断してしまうかもしれません。
そんな瞬間を虎視眈々と狙っている者がいるとしたら?
ミサイル作成の援助をしている者がいるとしたら?
「オオカミ少年効果」を利用して隙を作ろうとしている者がいるとしたら?

「ミサイルがきたぞ!」
どうか『オオカミ少年』の結末にはなりませんようにと切に願います。


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