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鬼のパンツは良いパンツ

節分と言えば鬼、鬼と言えば節分。

節分(せつぶん、せちぶん)は、雑節の一つで、各季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日のこと。節分とは「季節を分ける」ことも意味している。江戸時代以降は特に立春(毎年2月4日ごろ)の前日を指す場合が多い。
一般的には「鬼は外、福は内」と声を出しながら福豆(煎り大豆)を撒いて、年齢の数だけ(もしくは1つ多く)豆を食べる厄除けを行う。また、玄関などに邪気除けの柊鰯などを飾る。これらは、地方や神社などによって異なってくる。

Wikipediaより

毎年この日は日本中でいったい何体の鬼が豆をぶつけられているのでしょうか。
日ごろの鬱憤が凝縮された豆という名の投擲兵器に撤退を余儀なくされる鬼の皆さま、お疲れ様です。あざだらけになった体をどうかご自愛くださいませ。

中には気合を入れてビシッとフォーマルな鬼のコスプレをきめる礼儀正しく完璧主義な猛者も少なからずいらっしゃると思います。
この日の為に体を鍛え上げ、髪の毛をチリチリにし、ボディペイントを吟味する。最も重要な「ツノ」と「パンツ」は妥協することなく追い求め、理想の「鬼」となるべく邁進する……
泣ける話じゃないですか。実際にいるかわかりませんが。

さておき、『鬼』のイメージは「ツノが頭に生えていて虎柄のパンツを履いている」が一般的です。

もしかしたら『鬼』という生物が存在し実際の姿なのかもしれませんが、今回は想像上の生物として話を進めます。

『鬼』の姿かたちの由来、それは風水など知られる「鬼門(きもん)」にあるとされています。

鬼門(きもん)とは、北東の方位・方角のこと。日本では古来より鬼の出入り方角であるとして忌むべき方角とされる。

Wikipediaより

北東の方角は八卦でいうと「艮(ごん)」。

Wikipediaより

そして、全方位(東西南北)を十二支で12等分した場合、丑(うし)と寅(とら)の間であることから「艮」は「うしとら」とも読まれます。

https://www.furacoco.co.jp/culture/eto/

「鬼門」=「艮」=「丑寅」

つまり「牛」と「虎」です。
そこから、頭には「牛」のツノ、腰には「虎」の布(現代ではパンツ)という定番の『鬼』の姿が形作られていったと言われています。

多分に説得力のある説ですが、「でもツノが一本の『鬼』もいるよね?」という疑問には答えられないので由来の一つとするのがよさそうです。


『鬼』といえば節分の他に有名な作品があります。

「鬼滅の刃」? いえいえそれよりももっと多くの人が知っている日本一のおとぎ話、

『桃太郎』です。

桃太郎がお供に「猿」「雉」「犬」を連れて鬼ヶ島へ鬼退治に行く物語。

幼い頃は何の疑問も持たず桃太郎の活躍に胸を躍らせていましたが、冷静に考えると鬼の住処である鬼ヶ島に動物を三匹だけ連れて乗り込むのはいくらなんでも無謀すぎます。
おとぎ話といえど設定に無理がある! と作者にツッコミを入れたくなること請け合いです。もしも桃太郎が人知を超えたスーパーパワーを持っていたからという理由だとしたら余計にお供の必要性がなくなります。

「猿」「雉」「犬」である理由……

「猿」「雉」「犬」…… どこかで見たような……

もうお気づきでしょう。

そうです、十二支の「申(さる)」「酉(とり)」「戌(いぬ)」です。

「寅(とら)」の反対にある「申(さる)」、そこから「酉(とり)」「戌(いぬ)」と続きます。

鬼門の反対である「裏鬼門」、『鬼』に対抗しうる「申」「酉」「戌」。
桃太郎のお供は人間の兵隊ではなく「猿」「雉」「犬」でなければならかったのです。
凄い、凄いよ桃太郎の作者さん、あんた天才だよ! なんという神設定!

……と深く納得していた時期が私にもありました。

間違っているとも言い難く説得力のある面白い説だと思いますが、二点ツッコミどころがあります。

まず一つ目は、「酉」です。「酉」とは「鶏(にわとり)」の事であり「雉」の事ではありません。

そして二つ目は、方位を表した十二支を見ると一目瞭然で、鬼門の反対である「裏鬼門」は「未(ひつじ)」と「申(さる)」であり「申」「酉」「戌」ではありません。鬼に対抗する獣であれば「羊」と「猿」の二匹でないと辻褄が合いません。

もちろんすべて知っている上でのアレンジ、あくまで十二支や八卦の概念を参考にしただけという可能性もあります。完全否定するのはもったいない非常に興味深い説だと思っています。


最後に、『おにのパンツ』という歌についてです。
原曲は『フニクリフニクラ』というイタリアの楽曲で1975年に替え歌『おにのパンツ』として発表されました。

以降、鬼の定番曲として今日まで歌い続けられていますが、作詞者不明かつ原曲とまったく歌詞が関係ないというなんとも不思議な曲です。

今も昔も『鬼』は摩訶不思議な存在なのかもしれません。


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