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足底腱膜炎に対する治療戦略


☆この記事の前半部分(解剖、病態、エコー評価、鑑別etc)は無料で読めます。後半部分にどういった施術をしているのか、どうやって物療をしているのか、効果的な運動療法は何かなど現場で明日から使える情報を載せていますので、ぜひ最後までお読みください。


足底腱膜炎は私が足専門外来を開設してから最も苦戦した症状のひとつです。


いやいや簡単に治せますよ!という先生もいらっしゃるようですが、私にとっては難しい症例が多かったのかもしれません。

Twitterでアンケートを取った結果です。自信ありと答えた先生が約半数いたことが意外でした。私は自信あるとはまだ言えません。もっと精進します。

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それでは足底腱膜炎について掘り下げていきましょう。


1.足底の解剖

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『足底腱膜』
起始:踵骨隆起(内側突起)
停止:第1~5趾基節骨、底側靭帯
作用:足部アーチの保持、足底の血管や神経の保護、ウィンドラス機構

一昨年のハワイ大学解剖実習で足底部もジロジロ解剖してましたが、足底腱膜はものすごく硬いです。

足底腱膜炎で足底をごりごりマッサージする先生がいらっしゃいますが、到底徒手だけでは柔らかくなるとは思えません。

徒手のアプローチ+運動療法や物理療法を駆使できるといいですね。

足底の筋肉ですが、4層構造していると言われています。

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足底腱膜のすぐ裏にある短趾屈筋は足底腱膜の痛みと関係しますので、過緊張な状態なら緩めたいですね。


足底腱膜炎と鑑別しなければならない症状のひとつに踵部脂肪体の痛みもあげられます。

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『踵部脂肪体』
・踵骨を包み込むように位置する
・2層構造を呈し、室隔壁(大きいチャンバー)と蜂巣組織(小さいチャンバー)により衝撃吸収能を高めている
・室隔壁(踵骨側)の間ごとに血管が走行している


踵部脂肪体の評価法については後ほど記載します。


2.足底腱膜炎の病態


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画像引用:https://www.dk-sc.com/service1/plantar.html

繰り返すストレスを受け、足底腱膜に微細損傷を起こし、慢性化すれば線維化や骨棘形成も引き起こすといわれています。

発症のリスクファクター↓

・BMI:30以上→高度肥満状態
・足関節背屈制限(Riddle 2003)
・踵骨傾斜角低下(踵骨底屈)(Prichasuk 1994)
・歩行時母趾MP関節伸展可動域低下(Wearing 2004)

これらから受傷するストレスは大きく分けて2つに絞られます。

圧迫ストレスと牽引ストレス

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肥満がリスクファクターにあるように、歩行や立位により踵部は常に体重がかかり圧迫ストレスにさらされています。

→つまり、体重管理シューズやインソールのクッション性歩行時のヒールコンタクト動作の改善が非常に重要な要素になります。


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そしてウィンドラス機構に代表されるように、足底腱膜には引っ張り(牽引ストレス)が常に作用します。

各リスクファクターごとに解説していきましょう。


◇足関節背屈制限

歩行動作立脚期Mid Stance~Toe Offにかけて下腿は前傾します。その為に足関節背屈可動域が必要になりますが、可動域制限があると下腿前傾が出来ません。

そこで代償的に足部アーチを低下させ、偏平足の状態となることで足底腱膜に牽引ストレスが生じます。


◇踵骨傾斜角低下(踵骨底屈)

足底腱膜の張力低下、下腿三頭筋のタイトネスにより踵骨のみの動きとして底屈方向に偏位します。

それにより足底腱膜に牽引ストレスが生じます。


◇歩行時母趾MP関節伸展可動域低下

歩行Toe Off時、母趾は背屈して地面を蹴り前方への推進力を発生しますが、母趾及び足趾の背屈制限があると地面を上手く蹴れません。

その為推進力を作ろうと足底の筋肉の過緊張を誘発し、下腿三頭筋の底屈力増大し、結果的に踵骨底屈時のような牽引ストレスが発生する原因になります。


3.エコーを用いた病態評価


当院で用いているのは以下の2つです。

◇足底腱膜の肥厚
◇Probe Compression Test


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足底腱膜炎による腱の肥厚具合を評価しますが、症状の改善具合とは比例しているようには感じませんでした。

しかし定期的に評価するのは患者さん目線においても良いと思います。


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かかとの衝撃吸収能を評価します。上記したように踵部脂肪体は2層構造ですが、持続的な圧迫ストレスやランニング等によりつぶされると「せんべい布団」のようにペッちゃんこになります。

「せんべい布団」を新品のふっくらした布団のように戻すことがかかとの痛みにおいて非常に重要な要素となります。


4.鑑別すべき疾患


足の外科学会の足底腱膜炎診断基準の条件にもありますが、鑑別しなければいけない疾患があります。

・踵骨骨棘障害
・踵部脂肪褥炎
・Heel Fat Pad Syndrome
・足底線維腫症(レダーホース病)
・足根管症候群

各疾患においては深堀すると長くなるので今回は割愛しますが、特にはっきりとしていない足根管症候群の合併には非常に頭を悩ませました。


5.難治性症例からみた経過を良くする要素は?


当院にて足底腱膜炎と思われる6症例(難治4症例/急性2症例)から経過を良くする要素を考察してみました。


1.単純な足底腱膜炎かどうか

鑑別すべき疾患として上記しましたが、6症例のうち経過緩慢で思うように改善しなかったのは3症例でいずれも足根管症候群やアキレス腱炎、踵部脂肪褥炎などを合併していました。

経過が良かった3症例は単純に足底腱膜炎の症状のみの患者さんでした。


2.急性期かどうか

これは発症してから間もない内に施術ができたという意味ですが、1~2週間以内+初発であれば腱組織の変性や線維化が起こる前に施術できますので、治癒サイクルが正常に働き経過が良かったと考えられます。

急性期で来院してもらうには院のブログやSNS、外部啓蒙活動にて「放っておかずに早めに治療しましょう」と啓蒙していく事が重要だと思います。

→早期改善を目標とした啓蒙活動に発展できますね。


3.外的要因の対策ができたか

発症のリスクファクター、その中でも圧迫ストレスに関しては外的要因の影響を受けます。

「負担になっていることをやめたらいいじゃん」と単純ではありません。

足底腱膜炎が難治性になりやすいのはこの外的要因をなかなか変えられない環境にあると思っています。例えば、

・体重を減らす
・工場勤務で硬い安全靴を履かないといけない
・仕事で1日何万歩も歩く

簡単に変えれませんよね?でも変えないと改善しにくいですよね。つまり、

→しっかりと患者さん目線になって外的要因の対策を一緒に考えられるかがポイントです。


4.リスクファクターをいくつ減らせたか

主に牽引ストレスに関係するリスクファクターの対策は、先生の治療技術に関係します。

→足関節や足趾の背屈制限を改善させられるか?
→偏平足のようなアライメントを改善させられるか?
→踵骨をどうやって背屈させられるか?
→牽引ストレスに負けない耐久力や負担の少ない動作を指導できるか?


ここは先生の「腕」次第ですね。


いかがでしたでしょうか。

ここまではネットや参考書レベルの知識ですので、無料で公開しています。

ここからは実践し効果のあった物療の使い方、各種手技、運動療法をご紹介していきます。



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