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物語論(1) 物語の展開方法による分析

 小説、マンガ、ドラマ、アニメ、映画、ゲームなどは物語を必要とする。エンタメが成功するためには良い物語があることが欠かせない。人間は物語が大好きである。生物進化の観点から考えると、恐らく、物語(言葉)を通じて他人の経験を共有できるこの能力が、地球上で人間が最も繁栄している一因であろう。

物語は、時間的な展開のある出来事を言葉、文字、絵、映像で語ったものと定義できる。そして、物語は一定の構造を持っている。この物語構造を分析する主な視点としては、①物語の展開方法(幕)による分析 ②登場人物の行動による分析 ③語り手による分析 ④物語時間の構成方法による分析 などがある。

 本投稿では、①の物語の展開方法(幕)による分析を説明したい。ここでいう「幕」とは、物語を展開に応じてまとめたブロックと考えてもらってよい。この分析方法でよく出てくるのは、3幕構成・4幕構成・5幕構成である。

 3幕構成は、既に紀元前にアリストテレスによって指摘されている。アリストテレスは、物語が (1)始まり(Beginning) (2)中盤(Middle)  (3)結末(End) の3つのブロックで構成されていると指摘した[アリストテレース(1997)]。また、この3幕構成は、歌舞伎・能・文楽などの日本の伝統芸能において (1)序(Introduction) (2)破(Change) (3)急(Rapid Ending) として存在している。

 4幕構成で最も良く知られたものは、(1)起(Introduction) (2)承(Development) (3) 転(Twist) (4)結(Conclusion) であろう。この起承転結は、中国・韓国・日本の古典によく見られる。

 続く5幕構成で代表的なものは、フライタークのピラミッド(Freytag's Pyramid)である。フライタークは、物語を(1)提示部(Exposition) (2)上昇展開(Rising Action) (3)クライマックス(Climax) (4)下降展開(Falling Action) (5)大団円(Denouement) の5幕構成を指摘した[Freytag(2021)]。

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図1 フライタークのピラミッド

 我々が日頃接している物語は、大抵この3〜5のブロック(幕)で構成されていることが多い。次回以降は、幕以外の分析方法について論じていく。

参考文献

アリストレース [1997]『アリストレース詩学/ホラーティウス詩論』岩波文庫

Freytag, G. [2021] "Debit and Credit Translated from the German of Gustav Freytag," Alpha Edition.

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