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物語論(3) 物語の消費要素


 物語は、基本的には、消費活動とは独立して存在し得る。親が子どもを寝かし付けるために語る昔話には、何ら消費の要素は含まれていない。しかし、現代の消費社会に住む我々が日常的に見聞きする物語のほとんどは、消費の対象としての物語である。 

 消費の視点からいえば、物語には少なくとも4つの消費要素が含まれている。1つめは、物語そのものの消費である。チケットを買って映画館で映画を見たり、Netflixなどの動画サービスにサブスクリプションしてドラマを楽しんだりすることがこれに当たる。

 2つめは、物語に出てくるキャラクターの消費である。鬼滅の刃に出ている特定のキャラクターのグッズを集めてみたり、コスプレ衣装を購入したりするのがこれに当たる。

 3つめは、物語に出てくるモノの消費である。このパターンの消費は、仮面ライダーに出てくる変身ベルトのおもちゃを考えると分かりやすい。また、映画やドラマなどで、特定のブランドの商品を露出させることは、プロダクト・プレイスメント(Product Placement) と呼ばれ、商品マーケティング、ブランディングの重要なツールとなっている。007 ジェームズ・ボンドが、映画の中で、オメガの腕時計を身につけ、アストンマーティンの車を運転するのがこれに当たる。

 4つめは、物語に出てくる場所の消費(コンテンツツーリズム)である。アニメでは、物語中に出ている場所への聖地巡礼が行われることが多々あるが、これに伴う旅行、現地での飲食やお土産購入などの消費活動がこれに当たる。

 これら4つの消費要素は相互に関係しているが、ある程度独立もしている。消費者は、物語中の様々な記号を、物語そのものから引き離して、消費、コミュニケーションしており、ジャン・ボードリヤールの記号消費社会の特性を表しているものと考えられる[ジャン・ボードリヤール(2015)]。

 エンタメビジネスの視点からいえば、物語を中心にこれらの消費要素をどのように展開し、読者/視聴者の消費行動拡大に結びつけるかが重要になる。物語エンタメ提供者側の企画力、知的財産展開能力が問われている。

参考文献

ジャン・ボードリヤール [2015]『消費社会の神話と構造 (新装版)』紀伊國屋書店

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