韓国文学読書記録【7】20240129-0204
今週は『優しい暴力の時代』の続きから。
1月30日
✅13pages
📖 The Age of Gentle Violence by Jeong Yi hyun
『優しい暴力の時代』チョン・イヒョン/著、斎藤真理子/訳(河出書房新社)
📄P70-96
「私たちの中の天使」は、貧しいカップルがある不穏な〈プロジェクト〉に挑む話。
ミジは恋人のナムウと狭いワンルームで同棲中だ。しかし、部屋の契約満了日を間近に控えて別れることを考えている。日曜日、ナムウがでかけたあと押し入れを開けたミジは、大金の入ったスーツケース発見する。
ナムウの愛犬に対する冷たさなど、ミジはあまり好感の持てる人物ではない。ただ、彼女をそうさせているのは、ナムウの優しい暴力とも言える。
ミジとナムウの関係は、「何でもないこと」の母親たちと男たちの関係に似ていると思った。ミジはなぜ共同名義のカードにまつわる不満をナムウに伝えられないのか。心配と怒りで不安定になる女たちに比べて男たちが楽観的でいられるのは、無意識に女たちに重荷を押し付けているからなのではないか。
優しい暴力とは、じわじわと逃げられないようにすることかもしれない。
D-499(ジミンさんが帰ってくるまで。500日きった)
https://x.com/ishiichiko/status/1751983816137408595?s=20
1月30日
✅13pages
📖 The Age of Gentle Violence by Jeong Yi hyun
『優しい暴力の時代』チョン・イヒョン/著、斎藤真理子/訳(河出書房新社)
📄P98-129
「ずうっと、夏」を読む。13歳の孤独な女の子に初めて友達ができる話。
主人公のリエは父が日本人で母が韓国人。父の仕事の関係でいろんな国で暮らしたが、どこの学校でもニックネームは〈ブタ〉だった。〈生まれたときから、体格によって他の子を圧倒していた〉からだ。
母はリエを痩せさせようと極端に食事を制限していて、いつもお腹を空かせている。新天地のK国の学校ではブタと呼ばれない代わりに、誰にも話しかけられなかったが……。
普遍的な青春を描いているけど、韓国文学ならではの要素もある。ラストシーンは痛切で美しい。
D-498
https://x.com/ishiichiko/status/1752326536177598787?s=20
1月31日
✅13pages
📖 The Age of Gentle Violence by Jeong Yi hyun
『優しい暴力の時代』チョン・イヒョン/著、斎藤真理子/訳(河出書房新社)
📄P132-157
「夜の大観覧車」は、〈決定を下すべきときに、何も決断しないという決定をしたために、全生涯にわたってその決定通りに生きている〉50代の女性教師が横浜に行く話。
主人公の過去の記憶を呼び起こすのが昭和の名曲「ブルーライト・ヨコハマ」。韓国でも流行った時代があったとは知らなかった。
惰性で送っていた日々がもしかしたら変わるかもという淡い期待を抱かせる旅の顛末。なんともいえない寂寥感が漂う。
D-497
https://x.com/ishiichiko/status/1752703084961358118?s=20
2月1日
✅13pages
📖 The Age of Gentle Violence by Jeong Yi hyun
『優しい暴力の時代』チョン・イヒョン/著、斎藤真理子/訳(河出書房新社)
📄P160-189
「引き出しの中の家」は、保証金の引き上げを宣告されて転居先を探す夫婦の話。
韓国文学と過酷な住宅事情は切っても切れない。おなじみの題材だけど、それぞれ異なる地獄がある。
最近、東京23区の新築マンションの平均価格が1億円超えたという恐ろしいニュースを見て、日本でも他人事ではなくなっていくのではないかと思った。
D-496
https://x.com/ishiichiko/status/1753031791877960053?s=20
2月2日
✅13pages
📖 The Age of Gentle Violence by Jeong Yi hyun
『優しい暴力の時代』チョン・イヒョン/著、斎藤真理子/訳(河出書房新社)
📄P192-230
「アンナ」は格差社会に押しつぶされた女性の話。
主人公のキョンは子供を通わせることになった英語幼稚園で、ラテンダンス同好会の仲間だったアンナに8年ぶりに再会する。アンナは同期のなかでも最年少で、ダンスの才能があり、すがすがしい微笑みが印象的だった。
裕福な医師と結婚したけれど、コンプレックスから逃れられないキョン。最低の待遇の補助教師として黙々と働くアンナ。キョンはアンナに助けられるが……。結末はやりきれない。
D-495
https://x.com/ishiichiko/status/1753431666134282465?s=20
2月3日
✅13pages
📖 I Put The Evening In The Drawer by Han Kang
『引き出しに夕方をしまっておいた』ハン・ガン/著、きむふな、斎藤真理子/訳(クオン)
📄P13-189
ハン・ガンの詩集。必要があって再読。
→こちらの朗読会で読みました。楽しかった!
D-494
https://x.com/ishiichiko/status/1753795588179796244?s=20
2月4日
✅13pages
📖 The Age of Gentle Violence by Jeong Yi hyun
『優しい暴力の時代』チョン・イヒョン/著、斎藤真理子/訳(河出書房新社)
📄P232-278
日本版ボーナストラックの「三豊百貨店」を読了。1995年6月29日に起こった大事故をもとにした自伝的短編。
1995年2月。大学の卒業をひかえ就職の決まっていなかった「私」は、三豊百貨店でZ女子高校の同級生だったRと再会する。高校時代には顔見知り程度だったのに、ふたりは親しくなる。
たった一日、「私」が三豊百貨店でアルバイトをした日のRのセリフの背景に〈販売員などサービス労働従事者をうっすら軽視する社会の目〉があるということを解説で読んで驚いた。驚いたけど、著者と一歳違いで日本の書店の販売員として就職したわたしも、そういう目を感じたことはあったなと思い出す。
営業中のデパートが崩れ落ちるというのは、かなり衝撃的な出来事だっただろう。事故についての記事も読んだ。セウォル号との共通点が指摘されている。
チョン・イヒョンの小説は、話の持っていきかたが曲がりくねっていて面白いと思った。「三豊百貨店」なら、Rと再会する前の時計を読めなかった子供時代や、〈餅映画〉の翻訳台本を監修させられそうになった就職活動の話。
特に好きだったのは「ミス・チョと亀と僕」「ずうっと、夏」「三豊百貨店」。
D-493
https://x.com/ishiichiko/status/1754141493428883825?s=20
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