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人事パーソンとしての自分を深く支えている3冊

今回は、人事に関わる自分を深く支えている3冊について書きたいと思います。

いずれも、企業人事として働いていた頃から独立して現在に至るまで、折に触れて手に取る本です。

『知識創造企業』 野中郁次郎/竹内弘高 (東洋経済新報社)

「人や組織の可能性を開く人事の仕事は、知識社会における企業活動の根幹を支えている」

この本のおかげで、人事領域に携わる自分の仕事の意義を、そのように考えられるようになりました。

著者たちは、日本企業の製品開発の事例研究から、企業がイノベーションなどの知識を創造するメカニズムを明らかにしました。
組織が新しいアイデアやイノベーションを生み出すためには、人と人とが関わりを通してともに経験し、知恵を出し合い、試行錯誤しなければならない、ということを示したのです。
また、ある講演で野中先生は、「良い場づくりには、信頼(trust)と愛(love)が必要だ」ともおっしゃっていました。

ビジネスの世界では一般的に、「人」を人的資源と呼びます。
しかし、物やお金やそのほかの経営資源とは異なり、「人」はそれぞれが人格と感情を備えた固有の存在です。

「私たちは、ビジネスの世界のロジックと、組織には生身の人間が関わっているのだという事実とを、どのように橋渡しすることができるのだろうか?」

この問いに向き合うとき、野中先生の本に手を伸ばしたくなります。

2020年に『知識創造企業』の新装版が出版されています。

『プロセス・コンサルテーション—援助関係を築くこと—』 エドガー・シャイン (白桃書房)

人事は、他の人から相談を受けることが多い職種のうちの一つでしょう。
相談を受ける際に肝に銘じておきたいことは、人事パーソンである私たちは、相談してきた人の人生に関わっているという点です。
そう考えると、一気に身の引き締まる思いがします。

「人事として、本当に人の助けになるためにはどうしたらよいのか?」

この問いの答えを求めて、やや難解なこの本を最初に手に取りました。
今ではこれに書かれていることが、人から相談を受け、人の助けになろうとするときの自分の指針になっています。

エッセンスは、副題にもなっている「援助関係を築く」というところにあります。
いかに援助をするか?ではなく、「いかに援助関係を築くか?」に主眼が置かれているところがポイントです。

興味を持たれた方は、この本か、シャインの別の著書である『人を助けるとはどういうことか—本当の「協力関係」をつくる7つの原則—』(英治出版)を読んでみることをお勧めします。

『ケアの本質—生きることの意味—』 ミルトン・メイヤロフ (ゆみる出版)

最後の1冊は、人と組織に関わる仕事をするにあたって、最も深いところで心に留めておきたい原理原則が書かれている本です。
著者のメイヤロフは、ケアするとはどういうことかを示し、ケアを通して人と関わることこそが生きることであると言います。

最初のnoteでも、この本の一節を紹介しました。
ふたたび、同じ箇所を引用しながら、著者がケアという言葉に込めた意味と、企業における人と組織の取り組みに与える示唆とを、味わってみたいと思います。

一人の人格をケアするとは、最も深い意味で、その人が成長すること、自己実現することをたすけることである。(中略)相手が成長し、自己実現することをたすけることとしてのケアは、ひとつの過程であり、展開を内にはらみつつ人に関与するあり方であり、それはちょうど、相互信頼と、深まり質的に変わっていく関係とをとおして、時とともに友情が成熟していくのと同様に成長するものなのである。

『ケアの本質—生きることの意味—』 ミルトン・メイヤロフ (ゆみる出版)

人が人として人に関わる以上、どのような場であっても、このことを忘れずにいたいと思います。

今日は、人事という領域に関わる自分の仕事の根っこを支えてくれている本たちを紹介しました。

最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。


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