「凸凹」と「組み合わせ」と、人材育成とチームづくり

昨日近所を散歩していたら、気持ち良さそうに風にそよぐ鯉のぼりを見かけました。
鯉のぼりを見ると、小さい頃におじいちゃん(&おばあちゃん)と一緒に暮らした日々の断片を思い出します。
僕は、子供ながらに、おじいちゃんのなかに自由な気風とユーモアを感じていたと思いますし、おじいちゃんとの生活のなかで見聞きしたことのいくつかが、今の僕にも影響を与えていると感じます。
そのことについては、いつか書いてみたいと思います。

さて、前回の記事で、愛すべき凸凹の人たちの思い出を紹介しました。
凸凹な人たちに心惹かれるのは、まず、僕自身を含む、この世のみんなが凸凹な存在であるからという理由に他なりません。
もう一つの理由は、僕の感覚では、この「凸凹」と「組み合わせ」について考えること(僕にとってはパズルのイメージ)が、人材育成とチームづくり・組織開発の接点であり、現場でのマネジメントの実務で大切にしたいことだから、ということだと思います。

あらためて、「凸凹」について考えてみる

ある人の凸凹を考えるということは、その人を観察して、何が強みで持ち味で、何が苦手で、全体としてどんな形になっているのだろうということを把握することだと理解しています。

パズルのピースに(たぶん)同じ形がないように、僕たちの凸凹にも全く同じ形はありません。
一方で、強弱はありますが、組織のなかでピースの形を揃えようとする力が働くのも、また事実です。

以前人事として勤めていた会社で、強みに基づく人材育成の考え方(strength-based approach)を導入しようとしていた時に、一部の管理職や人事のメンバーから「社員の短所や能力の不足を無視して良いということですか?」という反論が出ました。
「あの人には、もっとやる気を出して、給料に見合った働きをしてもらわないと困る」、「あの人は、私より経理の経験と知識が少ないのに、多くの給料をもらっている」などなど、組織で働いていると、こういう会話をよく耳にします。
もしかしたら、「やる気」や「能力」といったことを考える時に、それらが「個人の内面から湧いてくる」とか「個人の内面に存在している」という考え方を前提とすることに、どうやら僕らは慣れてしまっているのかもしれません。

そして、「組み合わせ」について考えてみる

組み合わせについて考えるにあたっては、二つのことが頭に浮かびます。

一つは、手持ちのピースでどんな全体像を描くことができるのだろうか、という視点です。
組織で働いている多くの人にとって、仮に管理職であったとしても、短期間で自分の思い通りに所属しているメンバーの入れ替えをするようなことは現実的ではありませんし、少なくとも僕はおすすめしません。
ですので、目の前のメンバーとともに、どんな未来を描けるか?、何をどれだけできるか?、ということを考えることが、まずは自然のことだと思います。
それは、チームで何かをする、チームをマネジメントすることの面白さの一つだとも言えると思います。

もう一つは、そうは言っても、顧客や上司から期待されていることもあれこれあるし、長い目でチーム全体の力を伸ばしていくためには、なんだかんだで個人個人のスキルアップも必要だ、という視点です。
僕たちがパズルのピースとは異なるところは、チームとして大きなパズルを完成させるために、みんなが苦手としていることを伸ばそうとしたり、仲間と協力するために手を差し伸べたりと、周囲の状況に応じて自らの形を変えようとする、変えることができるところだと思っています。
つまり、“個人”の「やる気」も「能力」も、単に世界から完全に独立した個人の内面から湧いてきたり、そのような個人の内面に存在しているわけではなく、他の人たちとの相互作用によって「現れ方が変わる」のだという見方があってもいい、ということなのだと思います。

僕にとっては「凸凹」とともに「組み合わせ」を考えることで、一つひとつのピースを単体で検品するようなアプローチとは異なる、ダイナミックさと可能性が生まれてくるように思われます。

最後に、ドラッカーの言葉について

Appreciative Inquiry(略してAI)の提唱者であるケース・ウェスタン・リザーブ大学のデビッド・クーパーライダー教授は、自身のウェブサイトに「AI Philosophy」(AIの哲学)という文書を掲載しています。
その文書の冒頭で、経営思想の巨人であるピーター・ドラッカーの言葉が紹介されています。

The essential task of leadership is to create an alignment of strengths in ways that make a systems’ weaknesses irrelevant.
リーダーシップの本質的な役割は、システムの弱点を無意味にするやり方で、(みんなの)強みの連携を図ることである。(筆者訳)

このことは、僕が「凸凹」と「組み合わせ」のことを考える時、勇気を与えてくれます。

ちなみに、AIって何?と思われた方には、日本体験学習研究所の所長(南山大学名誉教授の津村先生)のブログの「Tグループとは No.067」からの6回分をおすすめします。

今日も最後までお読みいただき、どうもありがとうございます。

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