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フーシ派大暴れの背景


フーシ派とは

テレビで時折イエメンのフーシ派のことが取り上げられどのメディアも彼らをテロリスト扱いしていますが、彼らは一体何者であり、何故紅海上などで貨物船などを攻撃しているかについてはほとんど説明されたことがないようです。

北イエメンではじまった宗教運動が発展し、イスラム宗教指導者フーシ師を軸とする運動・団体・組織が母体となってその教えを信じる人達のことをフーシ派と呼んでいます。

2000年初頭に内戦が勃発しサウジ支援のスンニ派とイランが支援するフーシ派に分かれ同時にAQAP(アラビア半島のアルカイダ)も加わって三つ巴の戦闘となり未だに完全終結には至っていません。

しかし、2023年3月中国仲介によるサウジ・イラン国交正常化合意で国内情勢は落ち着き首都サナアを擁し中南部を実効支配しているフーシ派がイエメンの政権であるかのように振舞っているのが実態ですが、残りの2派や国連などから正式に認められている訳ではありません。

フーシ派活動地域と攻撃対象

以下の地図でお分かりのようにこの地域一帯では船舶の航路にとっての隘路が2か所あり、一つはホルムズ海峡、もう一つはバブエルマンデブ(嘆きの門というアラビア語)で、後者は幅が30KMしかありません。

 
フーシ派は最初バブエルマンデブ海峡を通る貨物船や英米の軍艦などを攻撃
していたのですが、その後紅海での戦闘に止まらずつい最近ではスエズ運河経由で地中海に船で進出し、地中海でも貨物船やタンカーなどを攻撃しています。

何故フーシ派は攻撃を始めたのか

フーシ派がイスラエル行の貨物船などを攻撃しはじめたのは昨年10月6日の
イスラエルのガザ侵攻で民間人を無差別に殺害していることに対する抗議の
為でイスラエルはいうに及ばずその同盟国であるアメリカ、欧州や日本の船舶も攻撃対象となっています。
 
日本籍の船も被害にあっていますが、フーシ派は海峡を通行する船舶につき、どこへ向かうのか、どの国の船籍か、誰が運営しており、どこの国の資本の会社なのかを全てちゃんと調べ上げてから攻撃している模様です。
 
そしてイスラエルや米国に反対する中国、ロシアなどのBRICSの船舶はその
まま通行させ、英米などの軍艦や西側資本・船籍の貨物船やタンカーだけを
狙っています。
 
ロシアの船が間違ってフーシ派に攻撃され損傷を受けた、といったニュースもありましたが、船の会社のオーナーは西側の人間だったようです。フーシ派の攻撃回避の為船籍の変更手続きをそういうビジネスが盛んなシンガポールで行った海運会社もいたのですが、無駄な努力に終わっています。
 
フーシ派は民間の貨物船やタンカーを攻撃する場合はその船舶に接近し「攻撃を開始するから、今の内に船の外へ避難するように」と案内をしているそうです。もちろん軍艦への攻撃ではそんな事をする筈はありませんが。
 
フーシ派幹部はまた拿捕した船の乗組員に対し「あなた方はイエメンにおけるゲストなので丁重に扱われるでしょう」と述べています。意外と紳士的なのです。もちろんこれはヤラセだという人もいるでしょうが。

 
フーシ派戦闘員と一緒の拿捕線乗組員

https://x.com/i/status/1729561887086395877

 紅海上や地中海では毎日のように数隻の貨物船、タンカーや米軍の軍艦など
が攻撃され沈没や航行不能となっています。特に英米軍は体裁を気にしてか
自軍の駆逐艦がやられた、などとは一切言いませんが空母アイゼンハワーも
被弾して沈没はしませんが最寄りの港へ修理目的で停留しているようです。
アメリカの空母が被弾したなどというのは前代未聞の話です。
 
フーシ派は今年3月には紅海に面するイスラエルの港湾都市エイラートにも
ミサイル攻撃を行いエイラートの港湾機能がマヒ状態となっています。フーシ派は地中海に進出しているので「(地中海経由)喜望峰周りのイスラエル向け船舶も攻撃対象」と警告しています。
 
紅海は殆ど航行不能でスエズ運河も実質封鎖となりアジア―欧州間の船便は
地中海から南アの喜望峰経由を余儀なくされています。
 
そのため航行日数1.5倍、喜望峰周りルートは波が荒く、海賊出没などで船舶
保険が急騰、おまけにアフリカに一か所しかない南アの船舶用給油所では足元を見られ法外な燃料代を払わざるを得ないなど国際貿易に逆風がふいています。
 
日本でもオリーブオイルなどの価格が暴騰しているのもこういった影響が大きいのは明らかです。この間テレビでトマトラーメンを作るのにイタリアのトマトを輸入している店の話がありましたが、今後は商売が困難になるでしょうね。

どうしてもそのトマトじゃないと味が出ないそうです。

フーシ派の戦闘能力と戦略

ネット上などではアラブのベドウィン風の恰好をした戦闘員がAK-47ライフルを片手にした画像などが出回り野蛮で原始的な連中だと印象付けたいメディアが盛んに宣伝していますが、彼らの戦闘IQは結構高いと思わざるを得ません。
 
一機数十万円から数百万円の中国製爆弾搭載型ドローンをイランから大量に調達しており通常の空中ドローンに加え水上(ボート型)ドローンや水中(魚雷型)ドローンなども保有しており、組み合わせて攻撃しています。
 
それにバブエルマンデブ海峡ではイエメンの陸上から通行する軍艦などが目視出来るほどの距離なので移動式のロケットミサイルを使用し、発射と同時にその場を離れて反撃を逃れるなど、地の利を生かした戦い方となっています。
 
ドローンについては軍艦一隻に対し空中、水上、水中ドローンを一斉に20-30機ほど飛ばして攻撃しているのですが、そのほとんどのドローンが撃墜されたとしても損害額は大したことはないのに比べ英米の側は一発何億円、何十億円単位の迎撃ミサイルを使用することになるので、経済的負担が大きくなります。
 
これは最初からフーシ派側が考えに考えた挙句の戦略で相手側を経済的に疲弊させていくことを狙っています。その通りになりつつあるようですね。これに気付いた西側メディアがその点を指摘しています。
 
フーシとの闘い持続不能

フーシ派の戦術面でのIQも高そうで、相手側の動きをよく観察しては弱点
などを発見してはターゲットを破壊しているようで、これまで一機200億円趙の米軍の最新鋭ドローンMQ9リーパーを5機も撃墜しています。

 この残骸は機体に含まれる軍事機密事項分析用として欲しがっていたイランに引き渡されその代わりとして最新鋭の武器をイランからフーシ派が入手したという情報もあるのですが、真偽のほどは分かりません。
 
アメリカ製の武器と比べイラン製は原始的で話にならないだろうと思われる
かも知りませんが、最近のイランのテクノロジー兵器のレベルは相当なもの
らしく、この間のイスラエルに対するイランのミサイル攻撃でもそのことを
いかんなく発揮しています。
 
テレビではイスラエルが90%近く撃ち落としたことになっていますが、真っ赤な嘘。非常に洗練されたミサイル攻撃に著名な軍事アナリストのスコット・リッター氏は驚嘆しています。
 
イランはシリアでの大使館空爆に対する報復として警告の攻撃をおこなった為表むき被害は大きくないのですが、狙ったところに着実に着弾し、そのことを理解しているイスラエル側はパニックに陥っていたというのが実情です。
 
イスラエルが誇る鉄壁と言われた防御システムのアイアンドームは何の役
にも立たなかったことを思い知らされたのでしょう。
 
イランはロシアと同様アメリカやイスラエルからの挑発に対して平静さを
保ち驚くような大人の対応をしているのですが、今後イランがどう動くかは
注目すべきところです。

フーシ派は悪党のテロリスト?

フーシ派の現在の戦いのモチベーションとなっているのは純粋にガザ同胞
のジェノサイドを座視することは出来ない、という義憤であり、国民全員
(フーシ派住民だけかも知れませんが)がそれを共有して戦っているよう
にしか私には思えません。
 
民間の船舶を破壊したりすることが良いことだとは思いませんが、いまだに
パレスチナ人を大量虐殺しているイスラエルや口先だけ「それは良くない」
と言いながら武器を供与し続けるアメリカこそ非難されるべきでしょう。
 
欧州もしかり。口先だけのコメントだけで一切自分たちは動かない。日本
に至ってはわざわざ外相がイスラエルに赴き連帯感を表明するといった
バカげた行動をしています。
 
こういった世界の現実に対してフーシ派は怒りを爆発させているのでしょう。

今現在は紅海、地中海、アデン湾で戦闘が行われていますが、これが少し東側のホルムズ海峡まで広がると非常に危険なことになります。
 
同海峡が封鎖されると輸入大国の日本はエネルギー枯渇で電気、水、食料
その他全てのものが入手できなくなり大変な事態に陥るからです。そうなら
ないことを願うばかりです。


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