見出し画像

花より団子な日本人

あるアダルトグッズを販売している会社がユニークな世界比較調査を行いました。

日本を含む世界9カ国と地域を対象の18~54歳までの男女に「もっとも快いと感じるのはどれか?(Please rank how pleasurable each of the following activities?)」と用意された14個の選択肢に対してランキングを付けてもらうというもの。

その結果が興味深い。

アメリカ・イギリス・フランスなど西洋文化圏だけではなく、アジア圏の中国・韓国も1位は「セックス」であるのに対して、日本だけが「美味しいものを食べる」が堂々の1位。

日本人にとっての快楽とは「セックス」よりも「食」、つまりセックスより団子食べ物ということらしい。

確かに、日本には美味しいものが本当にたくさんあります。海外に長く住んだことのある方なら共感してくれることだと思います。日本人の食へのこだわりは半端ではないと。

でも、なぜ日本だけが「食」からこんなにも幸福感を得られるようになったのか?

正解は分かりませんが、少なくとも日本には世界で最も「長い食の歴史」があるからだと私は考えています。

ずっと料理をしてきた歴史があるということです。

もっと言えば、そのように日本人の「脳が進化した」とも言っていいと思っています。

以前の記事で、日本が最初にワインを作ったという話を書きました。

どうしてそんなことが言えるのかというと、縄文土器の存在があるからです。

そもそも論として、土器がなければ、ワインは作れません。

そして、人間の脳は1万年~5000年ぐらい前に進化をほぼ終えました。

それ以降はほとんど変わっていないそうです。

なぜその頃に脳が進化を終えることができたかというと、約1万年前に農耕が始まったからです。

ちょうどその頃は氷河期が終わり、気候が温暖化、大量の氷がとけて海に流れ込み、海面が上昇します。

すると、それまで大陸と陸続きだった日本が海で分断され、日本列島が誕生します。そして、縄文文化が始まります。

従来の狩猟採集生活から農耕生活に移り変わりました。農耕に適した土地(主に水の確保が便利な川沿い)に定住するようになり、狩猟採集時代よりも大きなコミュニティを形成するようになっていきます。

コミュニティの形成は、外敵や周囲の自然環境から身を守ることを容易にしてくれました。

そして、この快適な環境で人類は「深い睡眠」ができるようになります。

この十分な睡眠が、脳の進化を劇的に加速させます。

脳の進化によって、より長期にわたった推論ができるようになり、気候や星などの動きを見ながら農耕が可能になっていきました。

そして、縄文時代は磨製石器といって、石を磨き上げて作る石器が使われ始めます。動物の皮をはぐ石匙せきひ、弓矢の先につける石鏃せきぞくや、鹿などの骨で作った釣り針や銛などの骨格器こっかくきも使われていました。道具に磨きをかけ、精度が上がっていきます。

縄文時代の石器のほとんどは、調理の目的で使われていたのではないか、と私は考えています。

なぜなら、発掘された縄文時代の遺跡に残された人骨からは、戦争による傷跡がほとんど確認されず、戦争がない状況だったと想像されるからです。

というのも、日本以外の地域での石器の進化は、もっぱら戦争のために作られていました。「人類の歴史は戦争の歴史」ともいわれているほどに、先史時代から現代に至るまで、世界各地で戦争が繰り返されていました。

世界では食料や資源の奪い合い、国家や政府に対する不満で起きる内乱やクーデター、異なる民族や宗教間での対立、国家間の侵略行為での殺し合いなど、かなり厳しい環境が繰り広げられていました。それに伴い、戦争のための武器の精度が上がっていきます。

しかし、縄文時代の遺跡から発掘された縄文人の遺骨に、戦争による傷跡がほとんど確認されていません。(弥生時代になると大量の武器が海外から運ばれます。この話は別の機会に。)

なので、武器として使用していた形跡がほとんどないのがこの時代の特徴だと思います。

簡単に言えば「戦争がない時代」がずっと続いていた時代でした。

どうして、争いがなかったのか。それはやはり食べるのに困らなかったからだと思われます。

日本は本当に幸運なことに食料に恵まれていた環境にいました。一年中自然の恵みによって食べ物に困ることはなかったのではないでしょうか。実は縄文人は農耕や牧畜などしなくとも、狩猟や採集だけで定住生活が可能だったようです。

縄文時代の貝塚からは、4月から6月にかけて、シジミやハマグリの貝を食べていたことがわかっています。春にはイワシ、ニシン、夏にはアジ、サバ、クロダイ、秋にはサケ、ブリなど季節によって取れる魚も豊富でした。さらに、秋にはクリ、クルミ、トチなどの木の実を集め、クッキーなどにして長期保存して食べていました。冬にはキジ、ヤマドリ、カモなどを狩ります。そして、イノシシやシカなどの大型動物は、絶滅しないよう幼獣にはあまり手をつけず、成獣だけを獲っていました。自然への配慮がうかがえます。

今も昔も日本人は食べ歩きをしていたようですね。

ちなみになのですが、縄文人はダントツに虫歯率が高いこともわかっています。

日本人がどれだけ食べ物に恵まれ、食にこだわれる環境で過ごしていたかが分かります。

日本以外の地域は戦争や侵略、飢餓など常に死と隣合わせな大変厳しい環境でした。そう考えると、必然的に種の保存のため、子孫を残すために性欲という本能が優先されるのは理解できることだと思います。

一方で日本人、特に縄文人たちは戦争もなく、餓死の恐怖もほとんどない環境が長く続いたため、食に幸福感を感じやすく進化したのではないだろうか、と私は考えます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?