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TikTokに「おっさん」が流入しても、若者が逃げない理由

若者にとっての隠れ家のような場所におっさんが大量に押し寄せてくると、若い人は逃げてしまうというのはよく聞く話だ。渋谷ハロウィンは若者発のムーブメントであるが、商機を狙った大人がそこに入り込もうとした瞬間、若者が冷めてしまうなどなど。

この現象はリアルのみならず、インターネットの世界でも同じだ。そして、TikTok界隈においても似たようなことが囁かれている。

ここで、TikTok JapanのLINEアカウントが打ち出している広告を一つ紹介しよう。

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「今おっさんたちがどハマりするアプリ!」

こんな広告を打ってしまっては、おっさんがさらに流入してきてしまう。なぜ、自ら自分の首を締めるようなことをするのか?

おっさん視聴者の流入は決して悪いことではない

TikTokは友達と繋がるために使っている人よりも、面白いおすすめコンテンツを見るために使っている人が多く、YouTubeと同じ路線だ。これについては前回記事で詳述したとおりだ。ここでいったん、YouTuberの目線に立ってみよう。YouTuberは「中高生以外のファンはお断り!」とは思わないはずだ。お年寄りだろうが、小学生だろうが、社会人だろうが、チャンネル登録者数の足しになり、自分の知名度拡大に寄与するのであれば、ファンの属性には固執しないはずだ。もちろん、おっさんのファンしかいないよりは、若い女性ファンが多い方が嬉しいというような感情はあるかもしれないが、だからといって、上の層を拒否するわけではない。インスタグラマーだってそうだろう。女性アイドルやモデルの卵、インフルエンサーなどのフォロワー欄を見ても、おっさんばかりだったりすることはよくある。でも彼女たちがそんなおっさん達をブロックするかというと逆で、別に悪く思わないだろう。「いいね」が増えて注目される分にはOKのはずだ。リアルのアイドル現場なんかも、おっさんがいてはじめて成り立っている。

TikTokのおすすめ欄でバズっている中高生だってYouTuberと同じ心理のはずだ。少しでも多くの人に見て欲しいし、もっとバズってほしい。あわよくばTikTokerになれるかもしれない。明日学校で「お前バズりすぎなw 有名人かよw」とチヤホヤされるかもしれない。

積極的に投稿もするおっさんTikTokersが増えたら

ここまでの話は、あくまで見る側の人口におっさんが増えた場合のケースだ。では、投稿するおっさんも増えてしまった場合はどうなるのか?そもそもおっさんが熱心にTikTok動画を撮ることは想像し難いが、以下のようなおもしろい猛者もいるw

我々のような、日々熱心にTikTok動画をアップするわけではない、見るだけ専門の一般ユーザーが、TikTokを開いた瞬間におっさんしか出てこなくなったら、興ざめするだろう。AKBの握手会におっさんがいっぱいいる分には別に構わないが、いきなりステージ上におっさんが乱入してきたり、こじはるのインスタにおっさんとのツーショットがたくさん出てくるようなもんだ。暴挙に等しい。

だがTikTokを開いて一番最初に表示される「おすすめ欄」には、基本的にはバズっている動画しか出てこないので、おっさんが目に入ることはまずない。個人的にも、2017年の夏頃から呼吸をするようにずっとTikTokを見てきたが、「最近おっさん増えたな...」とか「昔は良かったのに...」とか「このおっさんかわいげあるな...」とか思ったことは一度もない。もちろん、人気TikTokerレベルになると、おっさんから直接DMなどがきて、「最近おっさんに見られはじめたな...」と実感することもあるのかもしれないが。

仮におっさんが前面に出てきたとしたら、それは、バズるほどの「めちゃくちゃ面白いおっさん」ということだ。希少価値の高いおっさんだ。進撃のおっさんだ。年末にみんながこぞって見るガキ使。そこに出てくるのなんて、皆おっさんだろう。嵐のリーダーだって38歳だ。立派なおっさんと言えるかもしれない。当たり前だが、面白かったり、価値のあるおっさんなら需要はあるのだ。

「いくら面白くても、おっさんという時点でもう生理的に無理!目障り!」と言うませてる中高生がいたとしても、そうゆうおっさんの動画はすぐに飛ばすようにすれば、バイトダンス社のレコメンドAIによって、おっさんは出てこないようになる。(実際バイトダンスのAIが動画内の人間の年齢までを推定して、「おっさん」認定しているかは分からないが笑)

TikTokの仕組みを実質的に発明した、musical.ly創業者のAlex Zhu に対して、2016年にTechCrunchの記者が「親や先生をはじめとする上の世代の流入は、これまで数々の若者SNSを死へと追い込んできたが、musical.lyはそれについて危惧しているか?」という質問を投げかけた。この時アレックスは次のように答えている。

musical.lyがそのようなソーシャルメディアの普遍的な課題を解決し、前進するためには、トラフィックモデルがよりパーソナライズされる必要がある。年齢・趣向に応じて、異なるコンテンツを体験することになる。アプリ上での親の体験と、子供の体験は、全く別物になる。これはスナップチャットでも同じ課題である。

言わずもがな、この発言から1年以内に、AIレコメンド型のニュースアプリを運営していたByteDance社に買収される。このようにTikTokは、若者とおっさんが共存しうるプラットフォームなのだ。

若者のFacebook離れはなぜ起きたか

ここまでTikTokにおっさんが流入しても若者が逃げる理由にはならないことを書いてきた。それでは、よく言われている、Facebookにおっさんが流入したことで若者が逃げたというのはどうしてか?

アメリカではFacebookに学校の先生や親などが入ってきたことで、若者は本音の投稿がしづらくなっていった。昨夜のパーティーで酔って羽目を外している写真など、言語道断だ。Facebookは、恋人、家族、親友、友人、知り合い、学校の先生、大人など、様々な人間関係の相手全員を、一つのSNSにぶち込んだ、非常に強引なプロダクトになっていった。そうすると、誰に見られても良いようなクリーンなことを発信するか、何も発信しないかの2択を迫られる。これは日本でも同じだろう。

【近況報告】私事で恐縮ではありますが、この度入籍することになりました。【近況報告】私事で恐縮ですが、このたび3年間お世話になった会社を退職し、次のチャレンジを。【近況報告】私事で恐縮ですが、このたび留学することが決定し。

【近況報告】私事で恐縮ではありますが、昨日表参道でパンケーキを食して参りました。画像も載せておきます。と投稿する人は皆無だろう。

こうしてアメリカの若者はSnapchatやHousepartyなどの、誰の目も気にせずに、思いっきり羽を伸ばせる次のプラットフォームに逃げていった。そしてFacebookはいつの間にか、「おっさん」しかいないSNSになってしまった。さて、ここで注意しないといけないのは「おっさん」がFacebookに流入したことにより若者が逃げたのではなく、親や先生など、自分の投稿を見られては気まずい人たちがまず流入したことにより若者が逃げたということだ。その結果、「おっさん」をはじめとする上の世代しか残っていないプラットフォームになってしまったということだ。そもそもFacebookでは友達リクエストを許可しない限り、見知らぬおっさんと繋がることは少ない。そのため、おっさんに見られることも、おっさんの投稿が目に入ることもそんなに多くない。なので、メディア寄りでオープンなTikTokとは、根本的に構造が異なる。

Instagramの生存戦略

Facebookが買収したInstagramも、近年同じような道のりを辿りつつあった。ここ6年くらいのインスタの普及により、インスタは誰とでも繋がれるツールになった。今では僕も初めて会った人とは「LINE交換しようよ」ではなく「Instagram教えてよ」となる。その結果、Instagram上のソーシャルグラフがどんどん拡大していった。インスタは今の大学生なんかにとっては、僕よりもさらにごちゃ混ぜSNSになっているように思う。高校の時の友達。大学の友達や先輩。バイト先の人。就活を通して繋がった社会人。合コンで出会った人。みんなInstagramで繋がっていく。そうゆう場で本音の投稿というのはしづらい。誰が見ていて、どう思われるかわからない。SNSというのは、利用ユーザーの裾野が広がり、繋がりが増えれば増えるほど窮屈な場所になってしまい、発信しづらくなっていく。

このパラドックスに対して、InstagramはFacebookの二の舞を踏まないように、「親しい人」リスト機能を追加した。ご存知の通りインスタには、24時間以内に動画が消えるStoriesという機能があるが、ここに投稿する動画の公開範囲を絞れるようにしたのだ。これは一見ありきたりな機能に見えるが、Instagramの寿命を延長させる重要な一手になったように思う。ちょうど、インスタがすでに窮屈に感じ始めた一部の若者は、インスタの仲良い人専用の裏アカウントを作るか、Snapchatなどに逃げるなどの回避策を取っていたからだ。(そのSnapchatも実は去年、35歳以上もターゲットにしていくと公言しているが、話が長くなるので別記事で書く。) 

TikTokには「おっさん」が必要である。

TikTokは今のところメディア寄りであるとさんざん言ってきた。では、メディアの領域で勝ち続けた先には何が待っているのか?今のメディアの王者が誰かを考えれば良い。言わずもがな「テレビ」だろう。テレビのような老若男女問わず大多数の人が見る媒体をなんと呼ぶか。「マスメディア」と呼ぶ。企業が制作した同一のコンテンツをあまたの老若男女に届けるテレビと違って、TikTokはユーザーが制作したコンテンツを、パーソナライズにより最適な個々に届ける。そうゆう意味ではTikTokはテレビとは完全に異質であるものの、数多くの老若男女が日常的に接する媒体という意味で、TikTokはスマホ時代の「マスメディア」になろうとしている。

そのためには、日本の、いや、世界中のおっさんの力が必要なのだ。

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こ、このナメックス星と近くにいるたくさんのおっさんよ!! ほんの少しずつでいい 元気を分けてくれ...!!

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ちなみに悟空も魔人ブウ編の時には35歳のおっさんらしい。髪がM字後退しているベジータに至っては42歳。ドランゴボールっておっさん達がおっさんの元気を集めて地球を守る話だったのか!あ、noteにいるような若者はドラゴンボール知らないか、おっさんは黙って引きこもることにします。

(終わり)

⬇️⬇️⬇️ツイッターでもSNSやインターネット全般について発信しています。


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