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「わり算ラリー」で「手」を使って理解を確実に!<3年生の「わり算」>

前回の「ヒント帳103」では、子供たちの「わる」ことについての意味理解を援助するために、呼び名を与える指導方法を紹介した。

等分除は「にこにこわり算」、包含除は「がっかりわり算」、あまりのあるわり算であまりの処理をするパターンは「もったいないわり算」と呼ぶことを説明した。

こうした方法は、恐らくほとんどの先生方がやってらっしゃるだろう。

だが、これだけでは子供たちの<わり算理解>は不十分である。

そこで、私は、「わり算ラリー」と呼ぶ方法で、「手」を使った具体的な操作活動をさせた。

今回はそれを紹介する。


1 教室の配置

児童用机を二台横に並べて一問の文章題を出す。

四つ切画用紙に、「(問題番号) あめが12個あります。3人で同じ数ずつ分けると、1人分はいくつになりますか。」などと文章問題を書き、左側の机の上に置く。

右の机には、この文章問題だとしたら、飴の絵、または、おはじきなど、具体物や半具体物を12個と人を表す顔の切り抜きを三つ並べておく。

ちなみに、包含除の問題ならば、商の数よりも多くの数の「人の顔」などを置いておき、「がっかりする人など」が存在するようにしておく。

こうした「問題セット」を10から15個、教室内に造る。

また、問題の内容も多様な「わり算」が経験できように異なるパターンの場面にし、様々な「物」を扱うようにした。
さらに、分離量だけでなく、子供にとって難易度の高い外延量の問題も用意した。短冊を指定した長さに切り分けさせたり、リットルますの水をデシリットルますに配ったりする問題を用意したのである。

2 取り組ませ方

45分間のうち、初めの15分間は、前時の復習をする。
全体学習の形態で、一つから二つの問題を、黒板上の「物」を使って解く。

残った30分間をフルに使って、「わり算ラリー」を行う。
下のようなワークシートを持たせ、合図とともに自由に問題を解いて回らせる。

子供は問題を読み、その問題場面に合わせて「手」、つまり「物」を動かして、答えを出し、ワークシートに記録する。
そして教師を呼び、その操作をやってみせ、その結果を記したワークシートを見せる。

教師は呼ばれたら、その子供の所に移動し、次々と素早くチェックしていく。
誤っていた場合は、助言をする。

なお、私は、個別に問題解決に取り組むことを原則としていたが、子供の実態やねらいに合わせて子供が協力して考える方法でもいいと思う。

3 「わり算ラリー」の構成

この「わり算ラリー」を三種類実施した。

にこにこわり算ラリー」、「がっかりわり算ラリー」、そして、「あまりのあるわり算ラリー」の三種類である。「もったいないわり算」の操作活動は、「あまりのあるわり算ラリー」の中に組み入れた。

そして、子供の学びの様子によって回数の違いはあるが、三種類のそれぞれの「ラリー」は、さらに細かく3回ずつ、3ステップで行っている。

次のような内容構成である。

◯ にこにこわり算ラリー
①文章問題に対して「物」の操作によって答えを出す。式はまだ立てない。
②文章問題を読んで立式し、「物」の操作によって答えを出す。
③文章問題を読んで立式し、「物」を使わず、かけ算を用いて念頭操作で商を出す。

◯ がっかりわり算ラリー
①文章問題に対して「物」の操作によって答えを出す。式はまだ立てない。
②文章問題を読んで立式し、「物」の操作によって答えを出す。
③文章問題を読んで立式し、「物」を使わず、かけ算を用いて念頭操作で商を出す。

◯ あまりのあるわり算ラリー
①文章問題を読んで立式し、「物」の操作によって商と余りを出す。
②「もったいないわり算」の文章問題を読んで立式し、「物」の操作によって商を出し、余りの処理をして答えを出す。
③文章問題を読んで立式し、「物」を使わず、かけ算を用いて念頭操作で商を出したり、余りの処理をしたりする。

お読みいただいて分かるように、それぞれのラリーの3ステップ目は、「手」を使わずに商(と余り)を求めさせている。

なお、これは、「ラリー」の授業構成の説明であり、単元構成ではない。
単元の中で等分除と包含除の違いを考える時間を取ったり、「あまりの出ないわり算」と「あまりのあるわり算」を別単元で実施したりしている。


以上が、「手」を使うことで、「わる」意味を子供が身体化して理解することを目指した指導の工夫である。


なお、私がその必要性を主張している「手を使った具体的な操作活動」は、「数学的活動」とは、発想の原点が異なる。結果として類似した<活動>になる場合もあるだろうが、ねらいも方法論も全く違うことを最後に確認しておきたい。

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