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日本ドラマ「ヒヤマケンタロウの妊娠」

主演:斎藤工、上野樹里
2022年 全8話(1話約25分)
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★
(写真=Netflix公式サイトより)

元々予告編を見て楽しみにしていた作品。
こちら↓の監督のインタビューも先に読んでいたので、出てすぐ観たかったが、やっと昨日全話視聴終了した。

え、俺、妊娠??

斎藤工演じる桧山健太郎は、バリバリに働くエリート広告マン。次々に新しい企画を立て、社内でも期待されているが、ライバルたちもいる。かっこよくてモテモテなので、特定の彼女もいなくて、結構複数の女性と遊び放題。
そんなある日、体調が悪く、吐き気が続く。たまたまテレビで「男性妊娠」を取り上げていて、まさかと思うが、検査をしたら陽性!

遊び人の男はマメでもあるようで、一応誰と夜を過ごしたかなんかをきっちり手帳に記載。遡るとどうも子供の父、じゃなくて母は、時々関係を持つ上野樹里演じるフリーライターの瀬戸亜季っぽい。

子供を持つどころか、結婚することすら考えたことのなかった二人の物語が始まる。

ありえない設定で浮き彫りになる男女の意識の問題

本作も原作は坂井恵理氏による漫画。しかも10年近く前に出版されたそうで、当時も話題にはなったらしい。彼女の関連インタビューなど読ませていただいたが、そう、やっと原作から10年近く経って、世の中に受け入れられてきた感があるテーマかもしれない。それは働く女性の妊娠という問題。しかし、男性に妊娠させることにより、うまく色々な問題を炙り出すのに見事に成功していると言える。

久々にみる妊婦(夫)の問題

まず本作を視聴してある意味新鮮に感じたのは、妊婦の初期症状についてである。最近のドラマではつわりや母乳もれ、電車の中での妊婦への席譲りなど、そこにあまり焦点を当てている作品は少ないと感じる。妊娠はいつの時代でも大きなテーマだが、最近では「妊活」や「子供を産まない選択」などの方が多い印象である(もちろんこれも重要!)。
そんな中、妊婦の初期症状の描写はなかなかよかった。私も一応妊娠出産を経験しているとはいえ、つわりは全くなく、母乳もれは全くもって未経験。漏れるどころか、母乳なんてほとんど出なくて、完ミ育児であった。

これらの症状を男前の斎藤工が演じているところがまたいい。つわりだけではなく、情緒不安定になって泣き出したりなど、妊娠経験のない人にも、妊娠しても同じ症状が出なかった人にも、そして何よりも男性にわかってもらうにはいい方法であったんじゃないか。ヒゲもなかなかリアルであった。

男の言い分、女の言い分

現在上野樹里主演の『じぞ恋』も視聴中なので、ちょっと彼女の「結婚とかはしたくない」的な主張はある意味そちらと重なって見えてしまったが、メインキャストはこの二人でとても良かったと思う。

健太郎の妊娠が発覚してからの様々な考え方や状況への対処は、まさに多くの妊娠した女性が感じ、対面する問題であるが、それを健太郎はあたかも自分一人が直面している問題かのように、思いっきりドヤ顔でひけらかす。

亜季が何気に言い放つ仕事への対応や、妊娠出産、結婚に対する考え方も、実は多くの男性が付き合っている彼女の妊娠発覚時に、そのまま言い放つものであると言える。

このような男女それぞれの言い分を、逆転した立場の二人に語らせることによって、相手の立場がわかるようにするというのは、これはうまくできていると思った。あ、もちろん、この辺を汲み取れない人もいるとは思うが。。。
そういった演技にはまさに斎藤工と上野樹里は最高のキャスティングであったのではないだろうか。

世界でも評価は異なるだろう

本作はNetflixで全世界配信されている。必ずしも海外の各国でこのような問題に女性が直面しているわけではないので、国、文化、宗教によって受け取り方は違うだろう。アメリカのネトフリ登録者の間ではシュワルツェネッガー主演の『ジュニア』と同じでくだらない、あるいは「そもそも男性妊娠という設定があり得ない」というコメントがかなりあり、評価が低いようだが、本作は全く趣旨が違うものである。
しかし、MDLなどアジアドラマファンの間では評判は良く、アジア各国ドラマを観ている私からみても、本作は日本ならではの視点でもありつつ、世界で多くの人に共感される問題を取り上げた作品として高く評価したい。
原作では育児編もあるようなので、こちらもドラマ化されると面白いだろう。

こちらが予告編。


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