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「人権外交」のために

他国で起きている人権問題。
 特に、国連安保理常任理事国の利害で、「安保理が機能不全に陥っている人権問題」に対して、「一国」として行動を起こす。人権という概念に「普遍的な管轄権」を持たせて、各々の国がお互いに行動を”起こし合う”。
 殆どの先進国で…一部のアフリカ諸国でも…これを可能にする”国内法”の整備が進んでいる現在、これがが議論もされることなく全く遅れているのが日本! 。
 これに僕が気がついたのは、2019年11月の香港の選挙監視のために民主派グループから招待され、現地で香港政府・中国政府による人権侵害の実態を認識し帰国してからだ。当時は、既に「マグニツキー法」が浸透していたアメリカをはじめ、カナダ、英国、オーストラリアなどが、人権侵害をはたらく政権に対して、それぞれが一国としてできる制裁包囲網を築き始めていた。
 この日本の「法の空白」をなんとかしたい。真っ先に相談したのは「山尾志桜里」衆院議員だった。早速「衆議院法制局」に連絡をとってチームをつくってもらった。現状の法制の限界を洗い出し、日本が、日本の意思で、看過できない国外の人権侵害を取り上げ、調査するために、国会が内閣に要請し、報告を義務付け、それを受けて、「外為法」や「入管法」、そして日本の「ODA」の見直しを通じて、人権問題の当該政権とその要人に対してピンポイントで制裁措置を講じる。「日本版マグニツキー法(人権侵害制裁法)」の案が、半年をかけて完成した。
 「どの人権問題をターゲットにするか」は、常に政治的な恣意に委ねられる。それは「人権外交」の現実だ。しかし、その恣意性を問う前に、日本には「基本法」そのものが無いのだ。
 現在、ミャンマー軍事政権に対して制裁措置を訴える運動が高まっていて、それはそれで歓迎したいが、日本には人権という概念に基づいて国家として意思決定する「土台」が無いことを、ぜひ頭の片隅に置いて行動されたい。
 その後、「山尾志桜里」議員の奔走で、この「中谷元」元防衛相のリンク記事にあるように自民党、公明党、共産党、立憲民主、維新を含む超党派の「人権外交を超党派で考える議員連盟」が設立された。
 一方で、「人権外交」を旗頭にするのはいいが、中谷元・元防衛相の言うように、日本は「ジェノサイド(大量虐殺)」を禁止する「ジェノサイド条約」に加入さえしていない。1世紀前の関東大震災時に、今ではジェノサイドと翻訳される行為を犯した日本が…。そして、なにより「九条の国」日本が…。なぜか?
 戦時におきる「戦争犯罪」を含め、平時におきるジェノサイドのような「人道に対する罪」を、より厳密に規定するのが国際人権法(国際刑事裁判所ローマ規程)である。同規定は、加入・批准した国家に、それらの犯罪が「国内」で、そして「同国人」によっておかされた時を想定し、そして立法化することを、”当然のこととして”、求める。しかし、ここにおいても日本は「法の空白」状態なのだ。
 そこで、同じ衆議院法制局のチームと協働し、「国際人権法への対応は既存の法体系で足りる」としてきた従来の見解をつぶさに精査し、「まったく根本的に足りてない」と証明し、新しい「国際刑事法典」の基本法案を完成させた。この時の衆議院法制局との作業を主導し、超党派のフォーラムを実現したのも「山尾志桜里」議員である。同氏は、日本の戦後史上、「世界の人権スタンダード」に向けて、日本の法制度を根本的に改革するきっかけをつくった初の政治家である。
 既に述べたように、「どの人権問題をターゲットにするか」の「恣意性」は、人権外交の現実である。しかし、極度のそれは、「普遍性」という人権の根本概念そのものを崩壊させる。だから、「人権外交を超党派で考える議員連盟」におかれては、以下の2つのことに留意してほしい。
 1つ目は、「マグニツキー法」というニックネームを口にしないこと。ロシア人法律家セルゲイ・マグニツキー氏の殺害を契機に、当時のオバマ政権がプーチン政権をターゲットにした制裁措置が由縁である「マグニツキー法」は、アメリカを中心とする自由主義陣営が、ロシア・中国、および関連政権を一方的に制裁するニュアンスを含有する。ぜひ、やめてもらいたい。
 2つ目は、現在、中国のウイグル問題、香港問題が、日本の「人権外交」のターゲットであるが、並行して、ぜひ、イスラエルによる「パレスチナ問題」を、一言でいいから、言及してほしい。
 人権の「普遍性」のために。

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