ATON。というブランドとの出会い

今日は、MaG.合同展示会の3日目。緊急事態延長の影響で地方のバイヤーの来場はほぼないものの、関東のバイヤーを中心に思いのほか良い商談ができた。

NISHIGUCHI KUTSUSHITAはより、雑誌掲載されるし、hakneは素敵な個店さんに出会うことができた。

そんな中、仕事で関わることになったATONというブランドのブランドディレクターの久崎さんと取引先のテキスタイルメーカーが訪ねてくれた。

ATON https://aton-tokyo.com/

ATONは”あ”から”ん”まで、つまり原料の選定、紡績、染色方法、編み立て方法、パターン、縫製など製品に仕上がるまでのすべての工程を吟味した上質でミニマルなアパレルブランド。

お店が、青山にあり徒歩5分だから立ち寄ってと誘われるままに行ってみた。

ATON HEAD STORE https://aton-tokyo.com/pages/store

かっこよく広い店舗の中には、洋服がたった2列だけ掛かってた。そして代表品番の作りをディレクターに伺った。

そこには、インド綿のスヴィンゴールドの原綿を企画に合わせて、甘撚りにしたり、強撚にしてシャリ感を出したり、夏向けにはガスシルケットを2回かけてたり。染めに関しても天然由来のボタニカルダイの2度染めが現代の染より深みが出て美しくそれを採用しているとのこと。

ボタニカルダイに関しても江戸時代??かつての手法を現在の技術にアップデートした職人さんに染めてもらっているそう。

私も、普段生地を見て企画に合うまで調整したりして定番の靴下を作り上げるのでその感覚はとてもよくわかる。

そして、その余計な装飾を一切取り除いた美しいシルエット、そして生地から感じる面の良さ。

久崎ディレクターが言ってたことで自分も普段口によくする言葉。

”たたずまいのよさ”

そこにあるだけで時に武骨で、時に味があり、時に美しくしなやか。

色んな種類のたたずまいのよさがあるとは思うけど、ある一定の美しさを超えたときに感じる絶対領域のようなもの。

その感覚がハンガーにかかる一つ一つの洋服から痛いほどに感じた。そしてお言葉に甘えて5、6点商品を感じるために試着させていただいた。

すると、久崎ディレクターがおっしゃる通り、一つ一つの素材の選定や加工方法が着心地にダイレクトに反映されていて、普段仕事柄仲間内の良い服を見る機会が多い私ですら、思わず声が出るレベル。

まさにどのアイテムもたたずまいがよく、別格の風格を持っていた。

実際買ったアイテムを紹介。

こちらは、ユニセックスのオーバーサイズTシャツ。強燃のコットンをガス焼きし3本撚りにしたいとを少しオーバーゲージで編む。するとコットンなのにサラッとしたタッチになり、夏場でも肌離れが良い。着た瞬間の少し硬くシャリっとした風合い、そして見た目より遥かに軽い着心地が最高に心地よく唸ってしまいました。

https://aton-tokyo.com/collections/men/products/suvin-60-2-oversize-t-shirt

こちらはインド綿の最高峰スヴィンゴールドを甘撚りにしたとろっと柔らかな風合いのTシャツ。繊維が長く、強く撚りをかけることなく美しい光沢があり、肌に触れた瞬間とろけるような着心地です。スヴィンを甘撚りにしたらこうなるだろうなぁって感じる1枚。

これは次回買うことにきめているスウェット。手に持った感じより着た時の軽さ、そしてパイル地は恐らく無燃糸を使用しているのか肌に触れた瞬間の産毛に包まれたかのような柔らかさは格別です。ルーズなシルエットはどの年代にもいつの時代に着てもかっこいい。このネイビーは秋には買う。

3つの事例をあげましたが、どれも共通しているのはデザインはミニマル(シンプル)の極み。だからこそ、表現したいスタイルを実現するために素材選定、紡績方法、染め方、編み方、縫製と”あ”から”ん”までこだわりぬいた美しい製品に仕上がり、オーラを放つ独特なたたずまいになっていると思った。

ATONさんとの出会いは、2020年2月(※帰国した時、日本でもコロナが大変なことになっていることを知った)のNYの展示会でやたらとアメリカ人バイヤーに囲まれているストールのブースがあるなぁと立ち寄って知り合った日本のテキスタイルメーカーさんと知り合うことから始まりました。そのテキスタイルメーカーが独自の技術や糸の知識を持ち、付加価値の高いテキスタイルを提案しているそうな。

あの時、NYに視察に行ったことでNISHIGUCHI KUTSUSHITAは9月から爆発的にアメリカで取扱いが増えた。でもそれと同じくらい大きな成果は、日本製として心から誇りに思える、自分たちが描く理想を追求したテキスタイルメーカーや、アパレルブランドとともに仕事ができる機会を得たことだと思っている。

自分が見ているあるべき姿をこの2社はもっと高いレベルに引き上げてくれたし、もっと彼らが描く本質に触れたいと心から思った。

まだ描けているわけではないが、これがきっとターニングポイントになって3年後の自分はもっと違うものを見ていると思う。

機会があれば、ぜひ青山のお店に立ち寄ってみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?