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isao (エッセイ・小説)
2019年12月17日 15:51
「いえいえ、あなたはただ働いているフリをすれば良いんです」 そう説明する女は実に愛想が良い。小さなカウンターを挟んだ向かいには、一人の男がそれを熱心に聞いている。どうやら男はあまり話が掴めないらしい。さっきから何度も同じような質問を繰り返し、女は冒頭のようなことを何度も繰り返し説明している。女はそれでも表情ひとつ崩さない。テキパキと、正確な動作で書類を扱い、話をする時には男の目をきちんと見て話す