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血行促進! ロンドン封鎖日記 #11

ベーシックインカムがあればヒトラーだって画家のままでいられたのに。


5月の連休、夏空の下、イギリスの南海岸が大混雑中です。地中海バケーションも娯楽施設も封じられたイギリス人が国内ビーチに押し寄せている模様。未だ全土ロックダウン下で店だって開いてないにも関わらず、ビーチは芋洗い状態、地元民大困惑。確か日本でも似たような事になってましたよね。まあ気持ちはわかるけど、イギリスまだ毎日数百人死んでるんですけどね…。

僕はといえば、相変わらずロンドンで町内だけでのんびり生きています。リモートワークにももうすっかり慣れました。2ヶ月以上何も問題なくやれてるあたり、もうほんとにオフィス行く必要性って無いんですねえ。まあ僕が最近あんまりアクティブにに仕事受けてないってのもありますが。

ゲーム業界はどちらかというとコロナ特需の恩恵を受けてる側で、開発もパブリッシングもリモートでやれるので、業界としてはロックダウン中も比較的落ち着いています。しかしやっぱり市場の動きは鈍化していて、全体的にスローな感じは否めず。また、今は自粛生活の暇潰し需要があっても、経済が冷え込めば真っ先に切られるのがエンタメ業の宿命なので、全然安心って訳でもありません。6月からはいよいよ企業資金も尽きてあちこちで経済的ダメージが可視化し始める頃合いだという話もありますよ。

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そんな折、ふと見かけた「ベーシックインカムを求めるドイツのアーティスト達」というWIREDの記事がなかなか興味深かったです。

「アートは生活必需である」と政府が言い切る程にドイツはアーティストに寛容な国だと言われていて、特にベルリンはそのヴァイヴを強く感じられる都市です。貧乏な変態アーティスト達が色々好き放題やってる、自由でクリエイティブな楽しいベルリン。しかしロックダウンは貧乏人に容赦ありません。ギリで生きてたアーティスト達は、たとえ政府の一時的支援があってもやっていけず、そこでこのベーシックインカム運動になったわけです。既に60万だかの署名が集まってるみたいで、スイスやスペインなどの周辺国でも似たような動きがある模様。

ベーシックインカムって最近よく聞くようになりましたが、どうなんですかね。「なんか社会主義っぽくて胡散臭〜い」て感じでしょうか。僕的には「面白い考えだし、シンギュラリティ後の未来世界ではあり得そうだけど、今は現実的に無理そう」て印象でした。でもこのコロナパニックの3ヶ月、世界各国で事実上のベーシックインカムが施行されています

先行したフィンランドでの社会実験最終報告によると「雇用増加は確認できず。但しボランティアや無償奉仕活動は増加、個々の幸福度もアップした」との事でした。この結果を「失敗」と報道したメディアもあるようですが、僕は個人的には「あれ?意外とアリなんじゃね?」という感じを受けました。

懸念問題としてよく言われるのが「財源をどうするか」とか「無条件所得があると労働放棄が起きる」とかですが、少なくとも「労働意欲がなくなる」説は否定された訳です。まあ何もせずにずっと家にいる事がどれ程しんどいかは、僕ら自身が現在身をもって体験中です。財源も「現行システムに上乗せ」だと無理がありますが、相応のシステムに組み替えた上での税収のコントロールで十分実現可能だと言われています。まあ現状既に生活保護で生きてる人は沢山いますし、ギャンブル酒ドラッグさえ回避できれば、思ってたよりも全然可能性はあるのかもせれません。

ベーシックインカムといっても別に「優雅に遊んで暮らせる夢の制度」ではありません。基本的には「生活困窮しない最低限の額」を支給して低所得者をサポートするもので、元々リッチな人には割と無関係です。優雅に暮らす為には働いて稼がなければならないのは変わりません。そういう人はガンガン働いて稼げばいいのです。

とはいえ最低限の生活が保証されれば、今まで「食ってくため」にやむなく全労力を持ってかれてた人達に、幾分の余裕が生まれます。例えば単純に「毎月家賃分が浮く」と想像するだけでもなんか色々夢が広がります。分散型低コスト社会と組み合わせれば、「ただ生きるためにしょうがなくやりたくない仕事をしている」という人達はその呪縛から解放されます。その余裕は自身を見直す機会を与えて、各々が本当にやりたかった事、生きたい人生に近づく助けにもなります。そしてそれは国民幸福度にも繋がっていきます。

セコい人はすぐ「俺の税金ガ〜」とか近視眼的ヒステリーに落ち入りがちですが、低所得者層に余裕が生まれれば、消費が起きて経済への還元が起きるので、リッチな人は更に儲かる可能性は高いです。創作や起業などのチャンスが生まれて生産性が高まれば新たな市場の開拓も起き、税収も上がって回収率も上がります。(逆に例えば天下のアマゾンがいかに他社をブッちぎろうが、消費が死ねば生き残れません。故に彼らは自身のためにちゃんと納税すべきです。養分を生かすための養分とも言える…。)

フィンランドは次の実験として「負の所得税」の施行を予定してるとか。コレ初めて知ったんですが、要は所得の低い人に逆所得税としてインカムが入る仕組みっぽい。富めるところから徴収して足りないところに注入する、まさに富の再分配そのものです。令和ネズミ小僧かよ

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お金は社会の血液だと言われます。社会が健康体でいるためには良好な血液循環が必要で、血流が滞ったり溜まったりすると、末端細胞から壊死していき健康は損なわれます。日本の一律10万円が緊急時の栄養注射だとすればベーシックインカムは定期点滴みたいな感じでしょうか。

僕自身も一応アーティスト職の端くれとして、「生活維持vs個人創作」の対立は永遠のテーマなので、今後の動向に興味津々です。


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