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必殺仕置人 ロンドン封鎖日記⑩

月の裁き。

ユーロビジョン歌謡祭の中止特番を眺めつつ、改めて2020年の異常っぷりをしみじみ噛み締めています。ほんと欧州全土コテンパンのボロボロですね。

イギリスの封鎖緩和は今のところ順調に推移しています。多少の感染増減はあれ、死者数は減少、一般患者まで自粛してるせいで一部病院はかなりスカスカだとか。目下の課題は、来月に予定している小学校再開に伴う安全性とレギュレーション設定です。さてどうなりますやら。

あとコロナのせいでみんなすっかり忘れてるけど、ブレグジット移行期間の交渉も戻ってきます。お互いクタクタでそれどころじゃない感じもありますし、やっぱりこれもオリンピック式に期間延長になるような気がしますねー。つか延長何度目だ…。

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日本のメディアを見てると頻繁に「検査反対派」というのに出くわします。これがいまいちピンとこない。検査の是非とか日本以外ではまず聞かない議論なので、現場の空気感がどうなってるのか興味湧きます。

検査によって、どこのどんな人がどれだけ感染しているか、その経緯経過はどうか、データが集まるほどに実態把握が進み具体的対策が進む、基本的にはそれが感染症対策の全てで、普通そこに是非はありません。検査は検査でしかなく、単なるひとつの(有効な)手段に過ぎません。「できる範囲」で検査を進めて、同時にその「できる範囲」も段々広げていく訳です。

検査反対派の根拠は、検査キットが足りない、技術者が足りない、コストがかかる、医療現場の業務圧迫になる、安全確保が未熟な検査は逆にクラスター源になりえる、再感染するので無駄、とかその辺りのように見えます。そこまではまあ理解できるんですが、そこから何故「検査すべきじゃない」に繋がるのかそのロジックがよくわからない。それらは全て二次三次的問題であって、検査の是非とは別次元の議論です。つまり「なんか色々大変だから検査諦めろ」って主張?

「安価で安全で簡単な検査キット」は各国が開発中ですし、「感染者は容態に関わらず強制入院」という日本独自の謎ルールを変えれば現場圧迫は解決です。じゃあこの反対派の人達は何を守ろうとしてるんでしょうか

これ以外にも「半自粛派vs自粛警察」みたいな対立もよく見かけます。それはまあ日本に限ったものではないですし、両サイドの過激なノイジーマイノリティをメディアが煽ってるんだと思いますが、なんでもキャラクタライズする感じが日本ぽい。ステレオタイプ化は「食べ易くするけど栄養素を失う」プロセスフードみたいなもんなので、程々にしないと具合悪くなりますよ。

緊急事態でみんな自分の事で精一杯になって、それぞれの正義をふりかざす。そしてその正義の名の下に相手を捌こうとするジャスティス戦士です。自分以外は認めない、多様性とは対局の悲しいモノクロ世界でマウント合戦とか不毛過ぎて疲れます。一体ナニに代わってお仕置きなの。もうちょっと落ち着いてクールに折り合いつけなきゃお互い滅亡まっしぐらですよ。まあトランプやブレグジットの時もそんな感じだったので、それも時代の潮流ってやつなんですかねえ。

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日本の対コロナの奇跡の正体は、単純に「肥満率の低さ」であるという説があります。内臓脂肪が多いと免疫暴走が起きやすいとか。まあ確かに欧米中年デブ多いしな。そんな時に登場する新たなジャスティス戦士が「自己責任派」です。

日本では補助金給付対象の選別が一時話題になってましたが、一方は助けて一方は助けないみたいな選民思想が加速すると、「喫煙者も糖尿病も自業自得。そういうハイリスクグループが復職できないのを税金で補償するなんておかしい」みたいな事態にもなりかねません(というか既に実際そう言ってる人を見かけた)。

日本はかつて禅とか生み出した思慮深い国だった筈ですが、それがこんなにも即物的で刹那的なコスパ重視に偏ったのはやっぱアメリカの影響ですかね。自己責任の行き着いた極致「銃で自己防衛しろ、医療費払えないヤツはそのまま死ね」っていう、そんな自由の国に憧れてここまで走って来ました。見てるとアメリカも今日日だいぶ大変そうですけど。歴史環境的に、天災の多い土地で集団主義にならざるを得なかった日本人が見る淡い夢なのかも。

技術が発達して便利な世の中になってるはずなのに、どうしてみんなこんなに余裕が無いんでしょうね。むしろ技術は人々に中途半端な全能感を与えてしまっただけなのか。社会がギスギスしていくと、長期的には自分の首が締まっていくだけです。炎上に火をくべる快感をひたすら追い求めちゃうような人は、前頭前野が機能低下しててメタ認知が足りてないらしいですよ。自粛で時間もできたことだし、無知の知とか、我思う故に我あり的な事を頭の中でこねくりまわしてみるのも良いエクササイズになりそうです。

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自分のマンガでも描いていますが、僕はジャスティス戦士達が苦手です。個人的にはこの宇宙に「正しい事」など無いと思っているし、「絶対」なんてものはたぶん数学くらいしかないんじゃないでしょうか。正義はイデオロギーの数だけあって、そのせいで壮絶な数の悲劇を生んできた人類ですが、未だにちっとも学習できないのは理性的本能制御というか脳というハードの限界なんですかね。

結局いつの世も、中庸とか中道、メソテースってやつは「民に少なくなって久しい」ものなんでしょう。


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いつの世も、アーティストという職業はファンやパトロンのサポートがなければ食っていけない茨道〜✨