「院内勉強会」〜日本の認知症施策、振り返ってみましょう(介護ロボットパロちゃんも紹介)〜
みなさんお仕事お疲れ様です
(注:もの忘れ外来の看護師さん向け院内勉強会の文字おこしです)
私の学生時代、認知症は、医学書には「痴呆」と記載されていました
いつ、どのような理由で「認知症」に変わったのでしょう
これは、日本の認知症施策と関わりがあります
近年、世界で最も早いスピードで高齢者率が増加した日本で、どのように認知症対策が取られてきたのか、
今日は、一般病院である(精神科がない)当院が行っている認知症の取り組みを紹介しつつ(パロも登場してもらいます)
施策の現状の解説と、歴史を簡単にですが振り返ってみましょう
まずは、日本の認知症と、その施策の現状をスライドで示します
1)認知症施策の現状
現在の新オレンジプランと、令和元年に「予防」と「共生」が強調された、認知症施策推進大綱が示されています
2)新オレンジプランについて
2015年の新オレンジプランは、みなさん聞いたことがあるでしょう
認知症対策の根幹で、第103回保健師国家試験では、プランの特徴を問う問題が出題されたりしています
答えは、最後まで読んでいただければ解けます、文の最後に記載しますね
「認知症の人を単に支えられる側と考えるのではなく、認知症の人が認知症とともによりよく生きていくことができるよう、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現する」といった趣旨で施行され、「オレンジプラン(2012)」に比し、関係府省庁が共同で策定したというのが特筆すべき点です
もはや、認知症対策は、厚労省だけで行っていくものではないということですね、
認知症への理解を子供の時から深めるため、学校で授業に認知症を取り入れるとなれば、文科省が関与しますし、見守りネットワークや、詐欺被害対策には、警察や、消費者庁も関与するでしょう
その後、2019年にまとめられた「認知症施策推進大綱」は、「認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる「共生」を目指し、「認知症バリアフリー」の取組を進めていくとともに、「共生」の基盤の下、通いの場の拡大など「予防」の取組を政府一丸となって進める」としています
3)日本の認知症対策、振り返ってみた
さて、日本の高齢者人口は2000年代に入り急激に増加しますが、その前から厚労省では、来るべき未来を予測し、認知症に対して着々と準備をしてきました、新オレンジプランに至るまでを、かいつまんでスライドにまとめます
大きな変化は、2000年の介護保険制度の施行ですが、注目すべきは、ここでの調査で、日本の痴呆性高齢者の実態が初めて明らかになり、その数の多さに愕然としたことです
当初、介護保険は、脳卒中の片麻痺や、運動器疾患、がんなど、身体介護に軸足をおいた制度でしたが、この後、「痴呆」に対する介護政策を打ち出すことになるのです
この時、痴呆の進行を遅らせるためには、早期の介護、医療の介入が必要であることが明らかになっており、「痴呆」という言葉では、患者、家族が診断に抵抗感があり、対策が遅れてしまうといった議論があり、行政用語を「痴呆」から「認知症」に変更しました
その後も、厚労省内で認知症対策の議論が重ねられ、2012年にオレンジプラン、2015年には新オレンジプランが施行されました
4)新オレンジプランの中身を見てみましょう
7つの柱でなっています、(図は厚労省のパンフレットから)
今日、解説する項目の文字をオレンジ色にしています
認知症サポーター養成講座
認知症サポーター養成講座は、全国キャラバン・メイト連絡協議会が養成した、キャラバン・メイトが講師となって開かれます
共生のためには地域の理解が必要です、地域の人々に認知症の特性を理解してもらうのはとても重要なことです
もっと言えば、認知症はお互い様なのです、認知症であろが、なかろうが、お互い尊重しながら共生できる地域を目指します
当院でも、地域の方と、職員を対象に、認知症サポーター養成講座を過去2回行いました
横浜市の場合、横浜市認知症サポーターキャラバン事務局に、養成講座開催計画書をFAXして申し込みました(注:2016年当時の方法)
地域の支援体制
地域の支援体制として、厚労省の示すイメージは、次のようです
認知症の方と家族を中心に、地域の認知症サポーター、医療についてはかかりつけ医、介護については、地域包括支援センターを中心に支援します
そして、認知症疾患医療センターが、専門的な診断や、精神症状や身体合併症が悪化したときのバックアップをになっています
認知症サポート医は、患者さんや、疑いのある方が、早期から地域で必要な医療や介護に繋がることができるよう、パイプ役を担う医師です
また、かかりつけ医へのアドバイスや、関係機関や他職種との連携・協力体制の整備などを行う、地域の認知症医療の指導者でもあります
私も、2012年に認知症サポート医を取得しました、そして、その役割を全うするために、物忘れ外来と、認知症カフェを院内に設置しました
下のスライドの、青い囲みのように、かかりつけ医と、認知症疾患医療センターの両方の役割が出来たらいいなと思っています
認知症疾患医療センター
5)認知症カフェについて
当院の認知症カフェです
物忘れ外来の患者さんとご家族に、診察の待ち時間に利用していただくために、2015年からはじめました
6)介護ロボット
介護ロボットの例として、当カフェのマスコット、パロちゃんを紹介します
写真は、当院の認知症予防カフェの様子です
おもちゃではないんですよ、有名な医学雑誌に論文が載ったりしています
実際、当院の通所リハビリで、帰宅願望の強い認知症の女性の方が、パロがいることで、デイサービスで楽しく過ごせるようになったことがありました
認知症予防カフェでは、男性の利用者さんも、「パロや、パロや〜」と、満面の笑みで話しかけてくれます
パロは、言葉ではなく「キューキュー」と鳴くだけなのですが、マイクやカメラ、複数のタッチセンサー、水平センサーが内蔵されていて、外界からの刺激により、AIが判断して反応します
アニマルセラピーのロボット版ともいうべきでしょうか、病院内や、猫の毛アレルギーのある方も安心です
大和ハウス工業株式会社の、ホームページによると
https://www.daiwahouse.co.jp/robot/paro/products/about.html
「メンタルコミットロボット「パロ」はギネスブック(2002年)にも認定されている「世界でもっともセラピー効果があるロボット」です。姿はタテゴトアザラシの赤ちゃんで、多数のセンサーや人工知能の働きによって、人間の呼びかけに反応し、抱きかかえると喜んだりするほか、人間の五感を刺激する豊かな感情表現や動物らしい行動をし、人を和ませ、心を癒します。
アニマル・セラピーと同様のセラピー効果を備えるほかロボットだからこその多くの利点があり、アメリカではFDA(食品医薬品局)より医療機器として承認されており、多くの医療施設や介護福祉施設などに採用、自閉症の子どもたちや認知症の高齢者などのセラピーに効果を上げ、高い評価を得ています。日本でもパロのセラピー効果が注目され、現在、介護福祉分野での導入が進んでいます。」
現在、当院の認知症カフェは(令和2年8月)、コロナ禍で、休止していますが、再開したら、ぜひ会いにきて下さい
以上、認知症の現状と、施策の経緯から、オレンジプランで、当院が関わっている項目を中心に解説してみました
冒頭の保健師国家試験の答えは、3、5ですね
最後まで読んでいただきありがとうございました
次回は、当院の物忘れ外来と、認知症カフェの話をしたいと思います
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