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進む二極化。725万レコードのデータを解析して分かったこと。|あなたの地域の介護サービス利用者数を予測しよう(応用編)

はじめに

「病院・介護施設のはじめての外部環境分析」と題して、病院・介護施設の外部環境分析の方法について解説しています。(毎週火曜日に更新)

これから医療介護経営に関わる方、はじめての外部環境分析に挑戦したい方に向けて、出来るだけ分かりやすく解説していきます。

今回は、「あなたの地域の介護サービス利用者数を予測しよう(応用編)」と題して、各介護サービスの利用者を予測する方法について解説していきます。前回の記事では、基本編として、簡易的に介護サービス利用者数を予測する方法をご紹介しました。

今回は、もう一歩詳しく将来推計を行いたい人のために、オープンデータから介護サービス利用者数を予測する方法をご紹介するとともに、最新の予測データから分かることを解説していきます。


今回の記事は以下のような方をイメージして書いています。

・介護施設の経営戦略に関わる方

・建て替え等の中長期的な大規模投資を検討する方

・介護施設を譲渡する、又は譲受する方

・介護施設の資金調達、又は介護施設への資金融資をする方

他にもこんな目的で見てるよーという方がいましたら、ぜひコメント欄で教えてください。教えていただいた情報をもとに、次回から少し工夫して書きます。


オープンデータを活用して、介護サービス利用者数を推計する方法

介護サービス利用者数(以下、利用者数)は、以下の流れで推計します。

介護サービス利用者数の推計

基本的な流れは市町村が介護保険事業計画を策定するときに行う流れと同じです。異なる部分は、「介護施設の定員数」による制限を掛けないことです。

例えば、とある市において、介護老人保健施設の利用者数が800人であると推計されたとします。しかし、実際には介護老人保健施設の定員は全施設合計して600人でした。その場合、200人は介護老人保健施設に入ることができません。このような状況の場合、介護保険事業計画上の利用者数の推計は600人と記載されます。

市町村では介護保険費用の算出の為に、利用者数を推計するため、実際に利用する人の分だけ、推計します。そのため、介護施設の定員数以上の推計利用者数が推計されることはありません。

しかし、介護施設経営においては、実際に使われる分よりも、「潜在的な介護サービスの利用者ニーズがどれだけあるか」の方が、意味のあるデータになります。利用定員数を上回る推計が出るということは、それだけ介護サービスが不足していることを表しますので、ビジネス上はチャンスという見方ができます。

その他、要支援・要介護認定率の微調整を行っていないなど、若干の違いがありますが、変数が増えるぎると、計算が複雑になりすぎてしまう為、今回の推計上は割愛しています。それでも、725万レコードのデータ解析を行っています。

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利用者数はいつまで増えるのか|実際の推計結果を見てみよう

さて、それでは具体的なデータを見ていきましょう。実際にオープンデータをもとに推計した結果が以下の通りです。

介護サービス利用者数の推計

利用者数の推移は、2030年までは右肩上がりに上昇し、その後横ばいになっていくことが分かります。

利用者の大多数は75歳以上です(上図の赤色の年齢層)。ベビーブームに生まれた団塊の世代(1947~1949年生まれ)が全員75歳以上になるのが、2025年であるため、合わせて利用者数も増えていきます。しかし、2030年以降は75歳以上人口が横ばいとなる為、利用者数も横ばいになります。

本当の勝負は2030年以降から。進む二極化。|都道府県別の傾向比較

都道府県別に推計結果を見てみるとどうでしょうか。

調べてみると、2030年以降も利用者が増加し続ける都道府県と、2030年以降は利用者が減少してしまう都道府県の2つに分かれることが分かりました。それぞれ代表的な5つの都道府県をピックアップしましたので、順番に見てみましょう。(都道府県ごとに利用者数の規模に差がある為、分かりやすくするために2020年の利用者数を100%として、変化指数で表現しました。)

まずは、2030年以降も増加し続ける都道府県です。代表的な都道府県は、埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県、沖縄県です。

5都道府県UP

上図を見ると、ピックアップした5つの都道府県においては、2030年以降も利用者数が増加していくことが分かります。特に、沖縄県は2045年には2020年の150%まで増加する推計となっており、大きな成長が期待できることが分かります。

続いて、2030年以降は利用者数が減少してしまう都道府県を見てみましょう。代表的な都道府県は、山口県、高知県、秋田県、島根県、徳島県です。

5都道府県DOWN

上図を見ると、ピックアップした5つの都道府県においては、2030年以降、急激に利用者数が減少していくことが分かります。徳島県を除く、4つの都道府県では、2045年の変化指数が100%を下回っており、2020年の水準以下になってしまうことが分かります。

なぜ、このように2030年以降も利用者が増加し続ける都道府県と、2030年以降は利用者が減少してしまう都道府県の2つに分かれるのでしょうか。

その理由は、団塊の世代ジュニアにありました。

分かりやすい例として、東京都と秋田県の人口動態を比較して見てみましょう。

まずは東京都から。

東京人口動態

東京都の人口動態を年齢層別に見ていくと、2030年以降で65~74歳が増加していることが分かります。そして、2040年以降は、もう一度、75歳以上の年齢層が増加しています。

団塊の世代ジュニアとは、団塊の世代の子供たち(1971~1974年生まれ)で、団塊の世代の次に人口が多い世代です。2035年には、団塊の世代ジュニアが65歳になる為、65歳~74歳が増加しています。そして、2045年には、団塊の世代ジュニアが75歳を迎える為、再度、75歳以上人口が増加していきます。

続いて、秋田県の人口動態を見てみましょう。

秋田県の人口動態

秋田県の人口動態を年齢層別に見ていくと、2030年以降で65~74歳が増加しないことが分かります。秋田県では、団塊の世代ジュニアの人口が少ないため、2030年以降でも65~74歳が増加しないのです。当然、2040年以降に75歳以降が増加することもありません。そのため、利用者数は2030年以降減少していきます。

長期的な視点で介護事業を展開する場合、団塊の世代ジュニアの人口動態に注目していくことが大切です。

今回は、例として都道府県を取り上げていますが、本来は市区町村レベルで人口動態を確認していくことが必要です。東京都でも、利用者数が減少していく市区町村がありますし、秋田県でも、利用者数が増加していく市区町村もあります。

市区町村レベルで変化指数を確認できるtableauを無料公開しています。ぜひ、あなたの市区町村の利用者数の推計を確認してみてください。

▼tableauはこちら

▼使い方

説明1

説明2

説明3

説明4

終わりに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

今回は、「あなたの地域の介護サービス利用者数を予測しよう(応用編)」として、介護サービス利用者数を予測する方法について解説しました。

こちらの記事を含めて、「病院・介護施設のはじめての外部環境分析」シリーズでは、病院・介護施設の外部環境分析方法をご紹介しています。興味を持ってくださった方はフォローいただけると嬉しいです。

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以上です。

次回は、医療計画と介護保険事業計画について解説します。

またぜひ見てください。どうぞ宜しくお願いします!


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