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専門家に踊ってもらう、プロジェクトマネージャーという仕事

プロジェクトマネージャーとして、大・中・小規模のプロジェクトに関わっているのですが、どんな仕事なの?と聞かれることは多いです。
「プロジェクトX」の影響からか、すごいじゃん国家プロジェクトの仕事!など大誤解を生む場合もあり(いへいへ、大きい仕事に関わらず小さい仕事もプロジェクトです)、会話の目線があわないことも多いので、一度「プロジェクトマネージャーという仕事」について、整理するところからはじめることにしました。
プロジェクトマネージメントには資格もありますし、書籍も多数出ていて、ツールや方法論・フレームワークなども揃っています。プロジェクトの目的・規模感によって求められることも全く変わりますが、基本的には人と人の間に入る仕事なので、理屈でねじ伏せていくというよりも、泥臭いことの方が求められます。中でも特に求められるのは「現場力(目の前で起こったことから瞬時に判断して行動を起こす力)」ですかね。
多くの人が動くプロジェクトでは、ちょっとしたことで状況が一変することも多々ありますので、ここでは自分のためというのが一番ですが、その辺り含めて(聞かれた時に話す向けとして)言語化することを目的に、整理していきたいと思います。


プロジェクトの定義

まず、「事業会社(製品・サービスの事業提供側)」「受託会社(受託企業側)」ではプロジェクトの目的・ゴールは違うことが多いため、プロジェクトマネージャーに求められることも大きく変わります。
私の場合、双方の経験がある(現在も双方のプロジェクトに参加している)ので、それぞれの立場での違いにおける「プロジェクト」の捉え方と、そこで求められるプロジェクトマネジャーの仕事についても理解しやすいように、まずここでは「プロジェクトの定義」について書くところからはじめることにしました。

ちなみに、どういった立場であっても変わらないことがあります。
それは、以下の図でも示した通り「プロジェクトには、必ずキックオフ(はじまり)がありゴールがある」ということです。この、キックオフからゴールまでの間を参加するメンバー(場合によって追加アサインなどをしながら)が、有意義に過ごすことが出来るように(できる限りコスト・時間をかけず)環境を作ることで、よりよいゴールへと導くのが「プロジェクトマネージャーの仕事」だと考えています。

ざっくりとした「プロジェクト」の流れの図

そして、事業会社でいう「プロジェクト」は下の図の通り、事業目標を達成するために一つ一つ細分化されたピースです。
部門ごとに設定されることもあれば、部門を横断して行われることもあります。
全てのプロジェクトを達成することで、事業目標が、達成されるという仕組みになるので、プロジェクトマネージャーのキャリアパスの先には、全社の事業責任者・執行役員などに進む方が多いです。そこでは、プロジェクトの目的を決める役目を担うようになります。

プロジェクトは1つだけとは限りません

以下では、上でも触れましたが「事業会社(製品・サービスの事業提供側)」「受託会社(受託企業側)」では、プロジェクトの目的・ゴールは違うことが多いため、その例として簡単に分けています。

→ 事業会社(製品・サービスの事業提供側)のプロジェクト

年間目標・販売戦略や、企画会議などから上がってきた事業成長に対して影響の強い項目からプロジェクト化され、数字達成がゴールであることが多いです。他にも、既存サービスへの機能追加などもプロジェクトの一つになりますが、これらの活動は事業の中でも目的ではなく、手段となるため、プロジェクトのゴールになることは多くありません。製品メーカーの場合は、新規製品開発が主要プロジェクトとなることが多いです。

→ 受託会社(受託企業側)のプロジェクト

発注先の要求に沿って仕様を決め、希望納期までに終わらせることがゴールであることが多いです。そのため、受託企業側では機能追加がプロジェクトのゴールになることもあります。この場合、プロジェクトの目的・ゴールは明確にはっきりしており、人選さえ間違わなければ、管理しやすいプロジェクトになります。

プロジェクトの目的とゴールへの理解

上でも触れた通りで、プロジェクトの「目的」と「ゴール」によって、プロジェクトマネージャーに求められることは変わります。「プロジェクト」というと、ものづくりの現場で使われることが多いため、何かを作るという目的があり、ゴールは製品のリリースや納期などの日時・期限で示されることも多いですが、プロジェクトは事業目標達成の一つ一つのピースである場合も多いため、他の例でいうと、LTVの向上や会員獲得数、エンゲージメント率向上や、採用獲得人数などもプロジェクトのゴールとして設定されます。
この場合、研究・制作・開発部門に限らず、営業・マーケティング・広報・カスタマー・人事などの部門もプロジェクトに関わってきます。こういった各部門と連携をとるのも、プロジェクトマネージャーの仕事です。

プロジェクトが横断する際の参考

そのため「プロジェクトの目的とゴールへの理解力」はとても大切になります。プロジェクトマネージャー自身が、プロジェクトの目的や、達成する必要のあるゴールに対する理解解像度が低いと、プロジェクトに必要な人選や、ゴールへの道筋作りを失敗することにつながるからです。
そういったところから、プロジェクトマネージャーは、目的とゴールの設定をするところから参加します。ちなみに「目的やゴールの意思決定」はプロジェクトマネージャーの仕事ではありません。
基本的に、意思決定しやすいように準備をすることがプロジェクトマネージャーの仕事であり、意思決定は企業の代表もしくは、執行役員など別にいる場合がほとんどです。あくまでもその意思決定に沿って、(品質を担保しつつ、できる限り早く・安く)進めていくのがプロジェクトマネージャーの仕事になります。

そして、ゴールは夢や目標など、ぼんやりとしたものでは無く、具体的な数字や形としてハッキリさせる必要もあります。この、ゴールを明確にするプロセスや方法論は、戦略コンサルなどコンサルタントの仕事になることが多く、別でまとめる予定ですので、詳しくはその時に書いていきたいと思います。

プロジェクトマネージャーの役目と求められること

プロジェクトマネージャーが管理する項目は、以下へ簡単に並べますが、どこにでも書かれている通りのことです。そこは「人の動き」が中心になります。

  • プロジェクトスコープの管理

  • ステークホルダーの管理

  • コストの管理

  • スケジュールの管理

  • ミーティングの管理

  • タスク(タスク化)の管理

  • 緊急・優先度の管理

  • リスク・品質の管理

プロジェクトマネージャーは、優れた専門家やメンバーに気持ちよく仕事をしてもらうことで、プロジェクトを達成することができます。自身に専門的な知識がなくても、専門家の力を借りながら達成することが可能ですので、プロフェッショナル人材がプロジェクトマネージャーへと進むケースは多いですが、ゼネラリストの方が比較的向いている仕事だと感じています。もちろん、ゼネラリストでかつ特定の専門分野に精通しているに越したことはありません
例えば開発の場面で言うと、設計をする人間がプロジェクトマネージャーを兼任するケースは多いですが、進捗管理などの仕事をしている時間よりも、複数のプロジェクトの設計へ専念してもらった方が、より多くのプロジェクトで専門性を発揮することができ、並行してプロジェクトが進められます。こういったケースでは、全体としての仕事の品質は向上します。
このように、各専門家が専門分野で100%力を発揮できる環境を作るのが、プロジェクトマネージャーの仕事の80%以上となります。
これを私の中では「専門家に気持ちよく踊ってもらう」と話しているのですが、人に助けてもらい、人に動いていることで自身が輝く。そんな仕事ですね。
プロジェクトに参加しているメンバーが少しでもストレスなく、自身の力を発揮できていれば、プロジェクトマネージャーの仕事としてよく出来ている!と言って良いと思います。

そして、小さなプロジェクトでも、大きなプロジェクトでも、必ず毎日何かしらの課題やトラブルが発生します。小さいプロジェクトの場合は参加(アサイン)している人間の数も最小で構成される場合が多いので、メンバーの体調不良や離脱は影響が大きいですし、大きなプロジェクトであれば、スタート計画時と比較して円高・円安の影響などもあるため、自分ではどうすることも出来ない影響を多々受けます。
これらに臨機応変に対応し、その都度解決方法を考え行動し、解決する力が求められます。これが、冒頭で書いた「現場力」ですね。
ということで、思い出したら追加していこうと思いますが、今感じているもので言うと、以下のような点が求められると感じています。

  • ゼネラリスト的思考

  • 多様な人とのコミュニケーション力、人選力

  • 物事の言語化

  • ゴールまでの道筋構築(自分なりのフレームワーク構築)

  • ミーティングのファシリテーション・効率化・日程の調整力(アジェンダ力)

  • タスク化する力

  • 優先・緊急度を決める力

  • 計画と実行とリスクを肌感で感じる力

  • 課題解決力と決断力

  • プロジェクトの推進力(突破力)

  • 資料づくりの力(ステークホルダーへの情報共有力)

  • メンバーからすぐに連絡が繋がるためにも体力

  • あらゆる反応に対してのスピード

またプロジェクトが大きくなると、内部・外部共に定例会議(ミーティング)が増えていきます。チャットなどのコミュニケーションツールはたくさんあり、便利ではありますが、それらの影響で手が止まるということも多々ありますので、会議時間を有意義に活用することでも、進捗は大幅に変わるのも事実です。
そのため、プロジェクトマネージャーには会議を上手に進めるスキルも求められます。
以上が、「専門的な知識以上にプロジェクトマネージャーに求められる力」だと感じています。他にも、多分野の実践経験がある方が、リスク回避や課題発見が早い場合が多いため、社内から採用される以外にも、私のように社外から抜擢され、社内メンバーからは見えない別な視点で、プロジェクトマネージャーをアサインするケースもとても増えています。
パート・アルバイト含めて、さまざまな業種・業界を経験した人にとっては思ってもみない形で、その時に経験したことが役に立つケースもありますので、「苦労は買ってでもしろ」という言葉もありますが、さまざまな現場へ参加し、さまざまな規模のプロジェクトを経験する中で、少しずつこれらの力は磨かれていく。そんな、味のある仕事だと感じてもいます。

まとめ

以上から、「プロジェクトマネージャーの仕事」は、簡単にいうと人の助けを借りて、プロジェクトをスタートからゴールまで導く人となりますが、プロジェクトがいずれにしても主語になるので、関わったプロジェクトによって仕事内容は全く変わります。
そういったところから、他の人に聞かれた時は、必ずどのようなプロジェクトのプロジェクトマネージャーなのかを話した方が伝わりやすいですね。
そしてプロジェクトマネージャーは、プロジェクトを立ち上げる側の人間ではなく、立ち上げるための足掛かり作り(材料集めなど)はしますが、立ち上がったプロジェクトを終わらせる方に責任を持つ人間になります。私の場合、プロジェクトを立ち上げるところにも関わりますが、この部分についてはプロジェクトマネージャーではなく、(0→1を生み出すような)戦略コンサルタントなど、コンサルタントが担う仕事になっていきますので、それについてはまた別の機会に書きたいと思います。プロジェクトを立ち上げ、終わらせるところまで伴走するというのが私個人としては好きな仕事なので、0→1の生み出しから、立ち上げのフェイズは面白いですし、やりがいも大きいですが、その時々で求められることも変わりますので、ここではあくまでも「プロジェクトマネージャーの仕事」という点で書いています。他にも、ここで取り上げた一つ一つの方法論については、また改めて、今後ゆっくり掘り下げて書いていきますので、有料のコンテンツも出てくると思うのですが、その点はご理解くださいませ。🙇‍♂️

ということで、私自身にとっても整理になりました。
何かご質問・聞きたいことなどあれば、それに答えていこうとも思っていますので、お気軽にお待ちしています。

さて次はまた、別のことを書こうかな。

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