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SS【キャリーバッグ】


娘は学校をさぼって友達と旅行に行くらしい。

昔から人気のテーマパークだ。

週末は混むからと平日に決めたおかげで、ぼくは学校に提出する嘘の旅行届けを書かされている。

先生からも確認の電話がかかってきて、仕方なく嘘の家族旅行プランを先生に説明した。


娘はキャリーバッグを買うと言ったので、意外に入らないからワンサイズ大きいものを買った方がいいかもねとアドバイスした。

しかし娘は注文したものが届くと、大きすぎて嫌だと言い、ワンサイズ小さなものを購入し直していた。

サイズは中間くらいで見た目も大きすぎるということはない。

二、三泊くらいにちょうどいいサイズだ。

案の定荷物がパンパンだったとぼやいていた。


最初に購入したキャリーバッグはぼくがもらうことにした。

ぼくは中を確認しようとキャリーバッグを開けて目を疑った。

開けるとコンクリートのスロープが下に向かって伸びている。

その先から人型ロボットが走ってきて笑顔でこう言った。

「お荷物お預かりしましょうか?」

ぼくは想定外の出来事に思わず硬直したが、気を取り直して奥の方まで覗いてみた。

先の見えない広大な倉庫がどこまでも続いていて、無数のロボットが忙しそうに行き来している。


夢だった。

ぼくはお酒を飲んでいつの間にか眠っていた。

立ててあったはずのキャリーバッグは倒れて、それを枕がわりに眠っていた。

いつの間にか机の上には、娘からのお土産らしいお菓子がたくさん並べてある。


ぼくがそのお菓子を食べていると、突如電話が鳴った。

担任の先生からで、娘が旅行先で友達と撮った写真をSNSにアップしているとのこと。

アップされていたのは旅行届けに書いた目的地からは遠く離れたテーマパークの写真だ。

家族ぐるみの嘘が先生にバレてしまった。

娘には何らかの処分が下されるようだ。

そしてぼくも気まずい。


ぼくはもう一度キャリーバッグを開けてみた。

しかし、そこにはもう、ぼくが身を隠せるような広大な倉庫は無かった。





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