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SS【最後のチャイム】


郊外にあるゴーストタウン。

そこはもう誰も住んでいない。

しかし夜になると学校のチャイムが鳴り響き、隣町まで聞こえてくることがある。



誰も居なくなった今は、人の侵入を防ぐために柵が設けられ、警察の巡回ルートにもなっている。

毎年、チャイムの噂を聞きつけ肝試しに訪れる若者が後を絶たないのも理由の一つだ。



今まさに柵をすり抜けた男も侵入者には違いなかったが、他の者たちとは少し違うようだ。

青年は一人だった。

暗闇の中、ライトを消して草むらに隠れる覆面パトカーや、自転車で巡回する警察官に気づかれることもなくゴーストタウンに侵入した。




青年は高校生まで、この町で暮らしていた。

ゴーストタウンの中でもひときわ大きな建物へと近づく青年。

荒れ果てた当時の学び舎に吸い込まれるように入っていった。


青年は屋上に出ると、柵を乗り越えた。

星空も、遠くに見える街の明かりも見ることはなく、周囲を気にすることもなかった。

ただゆっくりと下を向き、うつろな瞳で飛び降りた。

それと同時くらいにチャイムが鳴り響く。




青年はしばらくすると起き上がり何事もなかったように、ひと昔前までは自分の自宅だった廃屋へと帰っていった。


翌日も翌々日も同じルートで同じ行動を繰り返した。

チャイムは毎日一回聞こえるらしい。

なぜかその音が聞こえるのは死期の迫った人だけのようだ。


多くの生徒にとっては、いつもと変わらぬ終業のチャイム。

しかし、青年にとっては、この世で最後に聞いた音だった。


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