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SS【報復する女】


人が多く集まれば変わり者の一人や二人はいるものだ。

ぼくの通っていた中学はマンモス校で、その中にもとんでもない女がいた。

彼女はK子。ぼくとK子は幼稚園からの幼なじみでよくしゃべった。

K子の何がとんでもないかって、K子は嫌なことをされると必ず報復する。それも何倍、何十倍にして返すのだ。

小学生の時、一度、休み時間にふざけてK子の消しゴムを二つに折ったことがあった。

もちろんぼくが悪い。

ただそのあとが怖かった。

K子は教室にぼくと二人だけの時に、不意をついてぼくの鼻を重たくて丈夫な筆箱で殴りつけて折った。

鼻血が止まらないぼくにK子は笑顔で言った。

「仲良しだからこれで許してあげるね」と。

その後も色々と事件があった。

何人かは事故か殺人か分からない死に方をした。

しかし犯人は証拠を残さなかったため、事件は迷宮入りしてしまう。

ぼくだけはK子が犯人だと何となく気づいていた。


月日は流れ、高校生活を送っていたある日、別の高校へ通う友達と話す機会があった。

友達の通う高校は、先輩の後輩に対するいびりが酷いらしい。

その友達が言うには、同じクラスの大人しそうな女の子もターゲットになっているらしい。

たちの悪い数人の先輩からいびられているようだ。

ぼくはその女の子の名前を聞いて青ざめた。

K子だった。


ぼくはその友達に訴えた。

先生に言って一刻も早くやめさせた方がいいと。

友達はぼくがK子のことを好きなのかと言ってからかった。

ぼくが心配しているのは先輩たちの方なのに。


それからたまに近況を聞いたが、ぼくが心配していたようなことは起こらなかった。

K子は変わったのかもしれない。

ぼくは内心ホッとした。


数年後、ぐうぜん街でばったりK子と再会した。

なんだかんだK子とは仲が良かったので、ぼくはうれしかった。

せっかくなので二人で飲みに行こうということになり、昔話に花が咲いた。

ぼくはふと、友達からK子が先輩たちにいびられている話を聞いて心配していたことを話した。

するとK子は飲んでいたウイスキーの入ったグラスを置いて言った。

「ああ、いつも一緒に行動してた仲良し三人組のことね。卒業後も仲良くマンションの部屋シェアしてたみたいよ」

「今も?」

「なんかね、深夜に部屋が火事になって三人とも亡くなったって」


ほとんど表情を変えずにそう言ったK子だったが、かすかに口元がゆるんだのをぼくは見逃さなかった。

ぼくの知る昔のままのK子がそこに居た。





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