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SS【囚われの守り人】


男は長い間小学校の用務員をしてきた。

住み慣れた町から旅立つ直前というタイミングで、男にとって残念なニュースが飛びこんできた。

最後に務めた学校が廃校になったという。

男はとても寂しそうな顔を見せた。


それから数ヶ月が過ぎ夏を迎えた。

近頃はたまに廃校となった学校に、若者たちがやって来ては肝試しをしている。

それはいい。問題なのは近所に響くような大声で騒ぎ立てたり、平気でゴミを捨てていく輩がいることだ。


男はそれが我慢できず、廃校の主となった。

注意するのではなく、二度と来ようと思わないように驚かすのだ。まるで本物の幽霊が居るかのように。

男は動くはずのないものを動かして音を立てたり、時には鏡に映る自分の姿を見せることもあった。

しかしその噂が広がり、ちょっとした心霊スポットとなってしまったことで、足を踏み入れる若者は増えてしまった。


ある星の綺麗な夜、困り果てた男のもとへ芸能人らしき者たちとカメラマンを含む数人のスタッフ。それと男に近い雰囲気のある一人の女がやってきた。テレビ番組のようだ。

いつものように侵入者たちを驚かすと、やらせのない本物の心霊現象に、みな悲鳴を上げ、あまりの恐怖に逃げ出す者もいた。

だが男と近い雰囲気のある女だけは違った。

男にゆっくり近づくと、「失礼します」と言ってポラロイドカメラを自分と男の方に向けて写真を撮った。

男が不思議そうな顔をしていると、女は男に写真を見せてこう言った。


「これが私です。あなたはどこにいるか分かりますか?」


写真に男は映っていなかった。

女が続ける。


「私のすぐ後ろに映っているこの白いモヤみたいなものがあなたです」


男はようやく自分がすでに亡くなっていることに気づいた。

学校への未練から、魂が廃校の中に囚われてしまっていたのだ。


女は言った。


「学校を守りたい気持ちが未練となって囚われの身になっていたのですね。でも思い出はあなたの中にありますし、子どもたちは新しい学校で新しい経験を積むでしょう。なのであなたも新しい場所へ旅立ってください。私が手助けします」


その夜、男は美しい夜空に吸い込まれるように上昇を続け、ようやく仕事を引退することができた。


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