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〜 涼 Vol.2 〜




物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには1つずつ物語があります
手に取って下さった方が、楽しく笑顔で続きの物語を作っていけるよう心を込めて作っています
ストーリーは、一つではなくどんどん増えていくもの、これからのストーリーを作るのは、あなた
あなただけのストーリーを楽しんで行って下さい♡
こちらでは、リボンの物語を紹介しています楽しんでもらえたら嬉しいです♪


〜 涼 〜

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どこからともなく鐘の音が聞こえてくる
近くに教会があったんだと私は辺りを見渡す
立ち並ぶビルの森は、仰々しく立ち並び私を傍観する
ビルの間から見える青空だけがキラリと爽やかに微笑んでくれている
付き合って2年の私達は、そろそろ結婚という言葉に反応するようになっていた
別に一緒にいるだけでも構わない、と思うのだが、やはり知らず識らずのうちに世間の目を気にしてしまう
隣で歩く彼も同じ気持なのではないか、と思うこともあるが、そこはあえて聞かない
一度動き出した歯車は、思うように止まらないこともあるからだ
『どこかに教会あるのかな?』
『私も初めて鐘の音聴いたよ。どこだろうね?』
キョロキョロと見渡すが、それらしき建物は見えない
『ちょっと探してみよっか』
『そうね。お昼ごはんも食べたし、お散歩しよう』
にっこり微笑む彼が、私に手を差し伸べる
私は、素直に彼の手を取りゆっくり歩き出す
·
ぐるりと一周するように、ビルとビルの間の道を隈なく歩く
音がしたであろう方向へと足を進めるが、一向に見えてこない
『本当にあれは鐘の音だったのかな?』
私は、自分の耳を疑わしく思う
『いや、俺も聴いたよ。はは。』
くすくすと笑い合いながら、ふと目の前にある建物の前で、彼は立ち止まった
『ここだ』
『ここ?』
確かにステンドグラスのような窓が見えるし、四角いビルとは違う造りをしている
ゆっくり上へと目線を移していくと、ここが教会だと言う事がすぐに分かった
『入ってみようか?』
『え?勝手に入っていいの?』
『教会って誰でも入っていいんじゃないの?』
重そうな扉を開けながら彼が言う
『そうなの?あ!あそこに誰かいるから聞いてみよう』
そう言って私は、チラリと見えた人影を追ってそのまま中へと入っていった
·
コツコツと音を立て、私は彼の元へ戻っていく
『大丈夫だって』
『ほらぁ』
『だって、勝手に入ったらダメじゃん?』
厳かな雰囲気の教会で、聞こえるか聞こえないかの声で話す
『普通に話しても大丈夫ですよ。ふふ』
私達は一緒に声のする方を向く
『ゆっくりしていって下さいね』
そう言って、ここの関係者の方であろう男性は奥へと入っていった
『なんだ、普通でいいんだ』
『かしこまっちゃうよね』
ちょうど正面の窓には、ステンドグラスがはめ込まれている
キラキラ光る夏の陽射しを、その美しく優美なガラスから通す
重みのある茶色の室内は、その光をより引き立て、幻想的な雰囲気を醸し出している
壁の両側には、格子状の窓もいくつかあり、決して暗いわけではない
それでも、厳かに神秘的なのは、ここが神事をする場所だからだろう
·
ゆっくりと私は、前へと歩いていく
後から彼も付いてくる
ちょうど、新郎新婦がいればここに立つであろう場所に、足を落ち着けた
すると、タイミングよく後から声が聞こえた
『ねぇ?こっち向いて?』
彼に呼ばれた私は、くるりと振り返り目を丸くする
『俺は、君の事が大好きだ。これからもずっと一緒にいたい。俺と結婚してくれないか?』
何が起こったのか分からず、私は周りを見渡しあたふたする
目の前には、ドラマのワンシーンのように、指輪の箱を開けた彼の姿
『まって?え?』
『ふふ。サプライズ!教会の鐘も、ここも知ってた。神父様にも協力してもらってね』
『ええ?!』
突然の事で、しっかりと頭が回らない私は言葉に詰まる
『このままでもいいかなって思ってたけど。でも・・・俺と結婚してくれる?』
思っていた未来と同じようで違うようで、それでも彼とずっといたい私の返事は決まっている
『はい。よろしくお願いします』
全力で喜ぶ彼の姿に私も大きく喜ぶ
しっかりと、そしてもう離さないと言わんばかりにギュッと抱きしめられる
『好きだよ』
『私も好き』
『ずっと一緒にいよう』
『うん』
そう言って、私達は神様の前で誓うように、軽くお互いの体温を口元から感じた
思ってもみなかった出来事に、ふわふわとした感覚で実感していく
恥ずかしそうに俯き、そして再び彼を見る
優しい表情の彼とお日様に私も、思わずにっこり
『今度の花火大会、夫婦気分で行こうね?』
『はは。なんだそれ。これからよろしくね。奥さん』
『ふふ』
『涼』を付けて行く今年の花火大会は、夫婦で行く事になるとは思っても見なかったので、今から楽しみになりそうだ
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