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〜 その手をとって 〜







物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには1つずつ物語があります
手に取って下さった方が、楽しく笑顔で続きの物語を作っていけるよう心を込めて作っています
ストーリーは、一つではなくどんどん増えていくもの、これからのストーリーを作るのは、あなた
あなただけのストーリーを楽しんで行って下さい♡
こちらでは、リボンの物語を紹介しています楽しんでもらえたら嬉しいです♪


〜 その手をとって 〜


白く透き通るようなその白い腕は細く、少しでも強く握れば壊れてしまいそう
くるっとした二重の潤んだ瞳は、ビー玉のように、キラキラと丸くとてもキレイで吸い込まれそうだ
手の届かない君は、今日も薄いピンクに頬を染めて嬉しそうに庭へ出る
『あ!いたいた!こんにちは。今日もお庭の手入れをありがとう』
『お嬢様こんにちは!いい天気ですね、草花も喜んでますよ』
『それは良かったわ。最近、あなたと会う日がなかなかないから気になってたのよ?今日は、お出かけ楽しみね!』
『そんな嬉しいこと言ってもらえて、俺は幸せ者です』
『ふふ。ねぇ?今日は、森へ行ってみない?』
『森ですか?怒られませんかね?』
『大丈夫よ!お父様に昨日お願いしておいたから』
『そうですか。では一度旦那様のところへ行ってから向かいましょう』
庭師である俺が、こうしてお嬢様と仲良く出来るのは、幼い時からずっと一緒だからだ
幼い頃から、いつも泥だらけになって遊んでいた
普通なら怒られるような事なのかもしれないが、俺の慕う旦那様と奥様は階級に囚われない方で使用人を家族と同じように想ってくれている
だから、こうして今も仲良くさせてもらっているのだが、俺は庭師だ
·
『料理長さんがね、木苺のジャムを作ってくれるって言うの。だから、今日は木苺を摘みに行きましょう』
『それなら、この間たくさんなっている所を見つけたので行きましょうか』
目的地が決まったところで、木のかごを持ち、ゆっくり歩く
しばらく歩いていくと、赤く可愛らしい実が遠くからも見え始めた
『あそこね?』
そう言って走り出す君は、嬉しそうに木苺を摘みに行く
『気を付けて下さいよ?また転んでしまいますよ。ふふ』
『もう、いつの話してるのよ。もう15よ?転んだりしないわよ』
俺より4つ下の君は、可愛く舌を出しながら走っていく
一粒一粒丁寧に摘み取っては、かごの中へ
だんだん重くなるかごを、持ちにくそうにしている姿を見て、俺が代わりに持つ
『大丈夫よ?』
『いえ、持ちますよ』
ピンクに染めた頬から溢れる笑顔は、太陽のせいで余計に眩しく見える
このまま時間が止まればいいのに。そう少しでも思う俺は、いけないだろうか
ずっしりと、かごいっぱいになった木苺を見て、俺はそろそろ帰ろうと提案する
『もう帰るの?』
『木苺もたくさん摘みましたし、お茶の時間に間に合わなくなりますよ?』
『さっきサンドイッチ食べたから、まだ大丈夫よ』
『あまり遅くなると心配されます』
『・・・このまま時間が止まればいいのに』
ハッとした顔をして、赤くなる君を俺は見逃さなかったが、気のせいかと思い直す
『お嬢様?ゆっくりでいいので歩き始めましょう』
少し拗ねてしまった君は、俺の後をゆっくりと歩く
·
さっきの顔がどうしても頭から離れない
言ってしまった事に恥ずかしくなったのか?それとも、俺と同じ・・・いや考えるのはよそう
悶々として歩く俺は、少し速度が速かったようだ
『きゃっ』
後ろを振り返れば地面に座り込む君の姿が目に入る
『大丈夫ですか?!すみません!』
『ごめんなさい。大丈夫、躓いてしまっただけ』
サッと抱き起こし、服に付いた土を払う
身なりを整え、無事を確認したところで俺はまた歩きだそうとした
『待って』
その声に俺は黙って従う
そして、声を詰まらせながら話す君を、抱き締めそうになるのを必死に堪える
『えっと?』
『だから・・・また転んでしまうかもしれないから、手をとってもらえないかしら?』
少しそっぽを向いて俯く君はりんごのように頬を染めている
『はい』
そっと手をとる俺は、少し震える君をもっと捕まえたいと心で思う
『ゆっくり歩いてね?ゆっくり』
『はい』
『もっと、ゆっくり』
『はい』
ゆっくりゆっくりと、黙って歩き出す
仲が良くてもどうにもならない事くらい二人共知っている
だけど、今だけはゆっくり歩く、そうゆっくりと
かごいっぱいの木苺だけが、今だけ二人を見守るのだった
·

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